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滝藤賢一:「半沢直樹」の近藤が「バイロケ」出演 「芝居で相手を怒らせたりするのが楽しい」

映画

 凶暴化した“もう一人の自分”が自分を殺しにやって来る! 日本ホラー小説大賞を受賞した法条遥さんの同名小説を、水川あさみさん主演で映画化した「バイロケーション」が18日から全国公開中だ。バイロケーション(通称バイロケ)とは「自分の近くに発生するもう一人の自分」のこと。そのバイロケに、水川さん同様、苦しめられる一人を演じているのが、昨年放送されたテレビドラマ「半沢直樹」に出演し話題を集めた滝藤賢一さんだ。ほかに、人気グループ「Kis−My−Ft2(キスマイフットツー)」の千賀健永さんやジャニーズJr.の高田翔さん、浅利陽介さん、酒井若菜さん、豊原功補さんが出演。バイロケとオジリナル(実物)が格闘する場面では、「吹き替えの人とこっちをやったりあっちをやったりしているうちに、どんどん分からなくなってきて、その度に周囲のスタッフに、『俺、今どっちだっけ』と聞いていました」と苦笑する滝藤さんに、撮影の裏話や役作りについて聞いた。

 滝藤さんはそれまでにも、映画「クライマーズ・ハイ」(2008年)での新聞記者役や、「踊る大捜査線」シリーズでの中国人刑事、連続テレビ小説「梅ちゃん先生」(12年)での頼りない定食屋のおやじ役などで注目されていたが、その存在感を強めたのは、昨年話題になったドラマ「半沢直樹」での、半沢と同期入行の銀行マン近藤直弼役だ。道を歩いていて、「気づいていただく率はすごく高くなった」そうだが、「そういうときに掛けられる声は、『あっ、半沢の……であって、あっ、滝藤だ』じゃないんです。そこがまだ一歩売れきれていないところ。一般の人に分かっていただくまでには、まだまだこれからですね」と、現状の人気に胡坐(あぐら)をかかない謙虚さを見せる。

 そんな滝藤さんが今作で演じているのは、水川さん演じるヒロイン忍に、バイロケの存在を最初に知らせる刑事の加納隆役。加納もまたバイロケ被害者の一人だ。加納のバイロケはほかのバイロケに比べ凶暴で、安里麻里監督からは「加納のバイロケで、バイロケというものがとても凶暴なものだと観客に伝わる」ような演技をオーダーされたという。その要求に応えるために、オリジナルの人格から外れない程度に、加納を「より凶暴に作る」ことを心掛けた。

 忍に襲い掛かるシーンでは、歯をむき出しにしてなぐりかかった。「鏡の前で練習したんですよ、どんな表情だと気持ち悪いか。特に相手が女性だったら、こういう人がいきなり襲い掛かってきたら怖いだろうなという顔を作る練習をしたんです」と実際に怖い顔をしてみせながら、練習の様子を再現してみせる。練習は自宅で“隠れて”したという。「子供がいるので」と笑うところに3児の父としての顔がのぞく。学校を占拠し暴れまくる場面では、安里監督から「窓のところで自由にやってください」との指示通り暴れまくった。ただし、その部分は「ほとんど使われていなかった(笑い)」そうだが……。「もっと変なことを、使えないだろうなと思いながらいっぱいやりました。演じながらどういう画がほしいんだろうと考えるんです。このシーンで、このカットで、どういうものがあれば次につながるんだろう、これがほしいのかな、でも真逆もやってみようかなとか、そういうのがどんどん頭の中に湧き上がってくるんです」。当時の様子を思い返しながら、演技中の冷静さを説明する滝藤さん。

 その一方で、今作に限らず、映像の中の自分の芝居は冷静に見られないそうだ。そもそも「シーンを撮り終わった時点でこうすればよかった、ああすればよかったと反省するタイプ」。だから反省しなくても済むように、撮影前にはイメージトレーニングを「ガチガチにしていく」という。滝藤さんは、仲代達矢さんが主宰する「無名塾」の出身だ。本番前に何度もリハーサルを重ねる演劇に対し、映像はせりふを覚え、初対面同然の人と段取りをし、数度のテストをやり、すぐに本番となる。それだけにイメージトレーニングをすることで、「何か(自身が)頼れるものを作る」。それが滝藤さんの役作りの方法だという。

 そのイメージトレーニングの助けとなっているのが海外の映画だ。のちに映画化されたドラマ「外事警察」(09年)で公安部の刑事を演じたときは、元CIA諜報員が活躍する「ボーン」シリーズを見た。今回は、「セブン」(1995年)のケビン・スペイシーさんをはじめ、「ダークナイト」(08年)のヒース・レジャーさん、「アンタッチャブル」(89年)のロバート・デ・ニーロさん、さらに「レオン」(94年)、「トゥルー・ロマンス」(93年)のゲイリー・オールドマンさんらのキレた演技を見直した。「好きなんですよ。危ないときの彼らの芝居が」。そのコメントからは、洋画好きであることもうかがえる。

 半面、現場で役者同士がぶつかり合うことで生まれる「ひらめき」の大切さも承知している。「作ってはいくけれど、作ったものには固執しない。相手役の俳優さんがどういうリアクションをするかをきちんと感じて演技する」ことを優先させる。ただ今回の加納役はちょっと違った。水川さんやジャニーズの千賀さん、高田さんとの場面では、ひらめきよりも「アクションでケガをさせないよう気を使った」そうだ。

 バイロケは、人間が相反する感情で精神的に引き裂かれたときに発生する。そこで、もしあなたのバイロケが発生するとしたらどんな性質かをたずねた。すると「弱々しい人じゃないですか。とても小心者だと思うな。いじめられている、『半沢』の近藤みたいな人じゃないですかね、たぶん」と答えた。そして、「絶対に凶暴じゃないですよ。僕は自分でいうのもなんですが、とても温厚な人間だと思います。めったにキレないし。自分の子供はしかったりしますけど、相当理不尽なことがない限り、普段はめったに怒らないです。だから、芝居でキレるのが楽しいんです」と笑顔で芝居の魅力を語る。

 取材をしていると、俳優ご本人と、その人が演じてきた役柄によって作られたイメージとの違いに驚くことがときどきある。今回がまさにそうだった。てっきり、伏目がちの、小声で話す、物静かで神経質そうな人を思い描いていた。ところが“オリジナル”の滝藤さんは、ストライプのスリーピースをビシッと着込み、快活に話を進める好人物だ。「僕、芝居で相手を不快にさせたりちゃかしたりするのが大好きなんです。基本的にドSなんです(笑い)。だから、相手の腹を立たせたりするのがすごく楽しいんですよ」。そんな言葉まで飛び出す“楽しい”滝藤さんが、凶暴なバイロケにひょう変する「バイロケーション 表」は18日から全国で公開中。別エンディングバージョンの「バイロケーション 裏」は2月1日から公開。

 <プロフィル>

 たきとう・けんいち 1976年生まれ、愛知県出身。98年から仲代達矢さん主宰の「無名塾」に在籍し、舞台を中心に経験を積む。2008年、映画「クライマーズ・ハイ」の演技で注目され、以降数々の映像作品に出演。主な出演作に、ドラマでは「外事警察」(09年)、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(10年)、NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」(12年)、「半沢直樹」(13年)など。映画では「ゴールデンスランバー」(10年)、「踊る大捜査線THE FINAL 新たなる希望」(12年)、「許されざる者」(13年)などがある。また、「愛の渦」(3月1日公開)、「捨てがたき人々」「るろうに剣心 京都大火編」「同 伝説の最期編」の公開を控える。初めてはまったポップカルチャーは、ジャッキー・チェンさんの「プロジェクトA」(84年)、「プロジェクトA2/史上最大の標的」(87年)。テレビの「洋画劇場」をよく見ていたという。そのため今でも「字幕より日本語吹き替え版のほうがしっくりくる」そうだ。

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