剛力彩芽:「黒執事」で男装役初挑戦 マンガの実写化に不安も「人が動くからこそ伝わるものがある」

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 枢(とぼそ)やなさんの人気マンガを基にした映画「黒執事」(大谷健太郎監督、さとうけいいち監督)が18日に公開された。近未来の西洋と東洋の文化が入り乱れた大都市を舞台に、水嶋ヒロさん演じる執事としては完璧だが性格が最悪というセバスチャンと、主人にして女であることを隠して生きる剛力さん演じる幻蜂清玄を中心に、奇怪な事件が巻き起こるオリジナルストーリーが展開する。初の男装役として話題を集める清玄役の剛力彩芽さんに話を聞いた。

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 「実際は女の子であってもいいのですが、男だと覚悟を決めて生きている子なので、男っぽく見せるにはどうすればいいのだろうと思いました」と、男装の令嬢を演じたことを振り返る剛力さん。「歩き方、立ち方、座り方というのは一番女性らしさが見えてしまったりする部分なので、仁王立ちしてみたり、若くして企業のトップというのもあるので、いかに上に立つ者として見えるかというのをいろいろ考えました」と見た目や仕草などから役作りを始めたという。本読みのときに声を低くするなど、剛力さんの役作りを見た監督が「どちらかというと感情を大切にしてほしい。無理やり声を低くする必要はない」とアドバイスしたことをきっかけに、剛力さんは「男と思って生きながら、いろんな弱さがある中で“この子、女の子だったんだな”と思ってもらえるような、女性としての強さや弱さ、男性としての強さや弱さみたいなものをいろいろな形で見せられたらと思うようになりました」と語った。

 剛力さんといえば、パブリックイメージとして笑顔が浮かぶが、清玄は心に傷を抱えているため“笑わない役”でもある。笑わないことを剛力さんは「“月9”(『ビブリア古書堂の事件手帖』)で笑わない役はやっていましたが、その笑わないとはまた意味が違って、ドラマのほうはすごく照れ屋な消極的な女性が笑わないけど、清玄は笑うことや楽しいことを忘れてしまった人間で、笑うという感情が持てない。楽しいことが大好きな自分としては、すごく悲しいこと」と感じたという。笑えないということは表情以外で感情を表現することになるが、剛力さんは「清玄は顔に気持ちが出ず、どちらかというと目や言葉などにすごく気持ちが出る子だったので、顔や表情でお芝居できないのはすごく難しく大変でした」と苦労を語った。

 過去の出来事が原因で心に闇を持つ清玄。ダークな面を演じることについて「難しかった」と振り返る。その理由を「清玄が伝えたい言葉というのは本当に大切なことや大事なことが多かったので、ちゃんと思いを理解しないとペラペラな全然たいしたことではない言葉になってしまうと感じたので、いろいろ本を読んだりとかして理解をしようとしました」と役作りについて明かす。また、「幼いころのシーンを見させていただいときに、素直に泣きました。あれがあるからこそ今の清玄がいるので、見せてもらって本当によかった。見なかったら、また違うふうになっていたのかなと思います」と回想シーンを役作りに生かしたという。

 人気マンガが原作ながら、映画版はオリジナルの展開が描かれる。原作のイメージについて、剛力さんは「今回のお話をいただいたときに原作を読ませていただいて、出ているキャラクターもみんなカッコいいし、可愛いくて、話の内容もすごく面白く、ハラハラドキドキも感動もするし、どんどん魅力に引き込まれてファンになってしまいました」と笑顔を見せる。映画の脚本を読んだ際の感想は「ファンタジーの要素も残しつつ、すごくリアル。清玄が発する言葉などがすごく人間的だなと思う部分を感じました。台本で読んだだけでは想像できないものがたくさんあり、実際に映像になって『ここはこういう世界になっていたんだ』というワクワク感もありました」と答えた。

 マンガの実写化については賛否両論が付きもの。剛力さんは「原作ありきの実写化に出演させていただくことが多くて、原作ファンの方などに対してすごく不安があるのですが、実際に人が動いてお芝居をするからこそ伝わるものは必ずあるのではと思います」と力を込める。そして「男装することによって女性が男性になるまでして生き抜く、生きたいと思う気持ちというものは、少なからず伝えられるのではないかなと。私がまず理解しないと、きっと見てくださる方には男装の令嬢をやった意味が伝わらないと思います。男装の令嬢だからこそ、人間としての気持ちを伝えられたらいいなという思いで挑みました」と撮影に入るにあたっての心境を明かした。

 マンガが原作の作品ということで、「初めてはまったポップカルチャー」を聞くと「自分自身ではまったのはダンスですが、それ以前に姉などから影響を受けていたのは『セーラームーン』かな。ダンスも姉の影響を受けてやり始めたりと、姉の影響は大きいなと思います」と笑顔で語る。そして「表現することが好き。ダンスから始まり、モデルだったりお芝居だったり、(見たり、集めたりするよりは)自分が出す(表現する)方にはまってしまったかもしれません」と語った。ちなみに「黒執事」のマンガで好きなキャラは「セバスチャンやシエルはもちろん好きですけど、グレル、死神も意外と好きで、メイリンも好き」だそう。そして「原作(のキャラクター)もみんなすごく個性的ですが、映画の中でも一人一人が個性的なキャラクターが出来上がったのではと思います」と自信をのぞかせた。

 俳優としてだけでなく、共同プロデューサーとして企画から参加している共演の水嶋さんの印象は「主演としてももちろんそうだと思いますが、現場は楽しくないと嫌だというのを最初からおっしゃっていたので、そういう姿は人としても役者としてもすてきだなと思いました」と語る。続けて、「ストーリー作成などからかかわっているというのは聞いてはいましたが、現場ではそういう姿は一切見せていなくて、最後の最後になって舞台あいさつなどで共同プロデューサーという形で入っているということを聞くことが多かったので、役者・水嶋ヒロさんだけを見てきました」という。ところが、ある出来事で剛力さんはそのことを実感したという。「今回、親友と共演しているのですが、芸能界を目指している子といつか共演したいという話を以前、ある番組でさせていただいたのを水嶋さんがたまたま見てくれていたみたいで、『ぜひ』と提案してくださいました。今思うと、それがプロデューサーとしての顔だったのかなと思います。すごくうれしかったです」と“粋”なエピソードを披露した。

 最後に続編について聞いた。「セバスチャンと清玄の関係はとても残酷というか、実際に行き着いてしまったら魂をくわれてしまう関係なので、それを考えると寂しいという思いもある。黒幕が誰なのかというのは清玄としてはとても知りたいところ。今後、セバスチャンに人間的な感情が芽生えるのか、清玄といることでセバスチャンも変わっていくのかなと思うと、(続編が)あれば私もうれしいです」と笑顔を見せた。映画「黒執事」は新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開中。

 <プロフィル>

 1992年8月27日生まれ、神奈川県出身。2008~13年、雑誌「Seventeen(セブンティーン)」の専属モデルとして活動。11年にフジテレビ系ドラマ「大切なことはすべて君が教えてくれた」で本格的に女優デビューを果たす。13年には大河ドラマ「八重の桜」に出演したほか、フジテレビ系ドラマ「ビブリア古書堂の事件手帖」でゴールデンタイムの連続ドラマに初主演。映画「カルテット!~Quartet!~」(三村順一監督)では第21回日本映画批評家大賞新人賞を受賞。14年春には映画初主演作となる「L・DK」(川村泰祐監督)の公開が控える。

(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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