注目映画紹介:「東京難民」 佐々部清監督作 中村蒼がネットカフェ難民に落ちていく青年を好演

「東京難民」の一場面 (C)2014「東京難民」製作委員会
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「東京難民」の一場面 (C)2014「東京難民」製作委員会

 福澤徹三さんの同名小説を、NHK大河ドラマ「八重の桜」(2013年)や「潔(きよ)く柔(やわ)く きよくやわく」(13年)などに出演した中村蒼さん主演で映画化した「東京難民」が22日から全国で公開される。これまで「日輪の遺産」(11年)や「ツレがうつになりまして。」(11年)などヒューマンな内容の作品が多かった佐々部清監督がメガホンをとり、ネットカフェ難民を生む今の社会の仕組みにカメラを向けた。中村さんが、大学を除籍されホームレスとなり、それでもどこかのほほんとし、「必死さが足りない!」と尻をたたきたくなるような主人公・時枝修を好演。そのほかに、大塚千弘さん、劇団EXILEの青柳翔さん、山本美月さん、金子ノブアキさんらが出演。ベテランの井上順さんが主人公に手を差し伸べるホームレスを演じ、作品にぬくもりを与えている。

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 大学に通う修(中村さん)は、親の失踪によって仕送りを止められ、大学を除籍、住む家も失ってしまう。ネットカフェ難民となった彼はチラシやティッシュ配りの仕事で日銭を稼ぎ、住める場所を見つけて再起を図ろうとするが、うまくいかない。遂に、だまされて入ったホストクラブで高額料金を請求され、やむにやまれずそこで働き始めるが……という展開。

 これまでネットカフェ難民がらみの報道などを見ていて、なぜ当人たちはそうなる前に何らかの手を打たなかったのかと首をかしげてきた。「悪いのは今の社会の仕組みだ」という結論づけにも違和感を覚えていた。しかし今作を見たことで、そうならざるを得なかった彼らの状況が理解でき、可能性は自分にもあることを教えられた。坂の上から転がり落ちるように社会の底辺にまでいってしまう修の描写は、原作よりもソフトではあったが悲惨なことに変わりはない。最後に見える希望の光のともし方や、東日本大震災を意識した展開は佐々部監督作品ならでは。同時に、「会社という居場所があるのが一番強い」「一番つらいのは何もすることがないこと」など、脚本を担当した青島武さんのせりふが心に響いた。決して人ごとではすまされないと、我が身を律してくれる作品だ。22日から有楽町スバル座(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(りんたいこ/フリーライター)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。

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