BORDER:小栗旬の異色刑事ドラマが視聴率上昇中

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 俳優の小栗旬さん主演の刑事ドラマ「BORDER」(テレビ朝日系、木曜午後9時)の第5話が8日に放送され、平均視聴率はシリーズ最高の13.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。同時間帯の裏番組として話題作「MOZU Season1~百舌の叫ぶ夜~」(TBS系)が放送されていることもあり、序盤こそ9%台と苦戦したものの、刑事ドラマの苦戦が伝えられる中、第3話で2桁に乗せ、第4話でも12%(同)と右肩上がりにじわじわと数字を上げている。関係者への取材も交え、好調の理由を探った。

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 ◇奇抜な設定も作りは丁寧

 「BORDER」は、「GO」「SP 警視庁警備部警護課第四係」の直木賞作家・金城一紀さんが書き下ろしているオリジナル脚本で、死者と対話できる能力を持ってしまった警視庁捜査1課の刑事・石川(小栗さん)の活躍を描く刑事ドラマだ。設定こそ奇抜だが、刑事ドラマを得意とするテレビ朝日らしく丁寧に作り込まれており、決してリアリティーは損なわれていない。ゼネラルプロデューサーは「相棒」など多くの名作刑事ドラマを生み出してきた松本基弘さん、演出には「相棒」などを手がける橋本一監督も名を連ねており、そのクオリティーにも納得できる。

 放送開始当初から「面白い」との評判も多かったが、“裏番組”の「MOZU」の期待度が高かったためか、序盤は苦戦した。また、テレビ朝日の早河洋社長も今期放送している刑事ドラマ3本について「女性層を取り込めていない」と総評したように、序盤では殺人現場の生々しい描写や“能力”を持ってしまった石川の困惑ぶりなど、やや重苦しい雰囲気が続いていたことも視聴率に影響したかもしれない。だが、ここに来て、石川が“能力”を積極的に捜査に生かそうとするなど、徐々に雰囲気も変わってきた。第5話も脚本家の宮藤官九郎さんがどこかとぼけた死者役で出演する“小休止”的なエピソードだった。

 ◇光る小栗の演技 個性的な脇役と小気味いい展開

 直木賞作家の書き下ろすストーリーの面白さはもちろん、ドラマの世界観に合わせた小栗さんの抑えた演技も光る。熱く語ったり、声を張り上げたりするわけではない。死者と向き合い、静かに語りかけるシーンや事件現場での立ち姿でも“見せて”くれる。脇役もいい。捜査をともにする刑事役の遠藤憲一さんと青木崇高さん、クールな検視官役の波瑠さんはもちろん、石川刑事が事件解決のために使うようになる裏世界の人間たちも魅力的だ。

 古田新太さん扮(ふん)する情報屋・赤井をはじめ、登場シーンから衝撃的だった浜野謙太さんと野間口徹さんが演じる全身黒ずくめの“ハッカーコンビ”の「サイモン」と「ガーファンクル」、大ヒットドラマ「半沢直樹」の近藤役で脚光を浴びた滝藤賢一さんが演じる便利屋・スズキ……。石川が自らの“能力”とともに、“裏人脈”を駆使して事件を解決していく展開も小気味いいのだ。

 さらに、第4話では爆破シーン、第5話でも犯人を追って街中を走るシーンなど、アクション要素も多くなった。好調の要因について関係者も「アクションシーンも増えてきたし、視聴者の方が世界観に慣れてきたのかもしれない」と語る。“能力”を生かして次々と事件を解決していくが、どこかあやうさも感じさせる石川刑事。終盤に向けてどのような展開が待ち構えているのか。右肩上がりの視聴率とともに、ますます目が離せなくなりそうだ。

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