米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが主演を務めたディズニー映画「マレフィセント」(ロバート・ストロンバーグ監督)がヒット中だ。ウォルト・ディズニー創立90周年記念作品として製作された今作は、「眠れる森の美女」の“本当の物語”を描くアクションファンタジー。オーロラ姫ではなく、ジョリーさん演じるマレフィセントの視点で描かれる物語が話題を呼んでいる。エル・ファニングさん演じるオーロラ姫の日本語吹き替え版声優を務める上戸彩さんに、映画の感想や役作り、大ファンだと公言するジョリーさんについて話を聞いた。
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上戸さんがディズニー作品で吹き替えを担当するのは、2002年に公開された「ピーター・パン2 ネバーランドの秘密」で少女ジェーンを演じて以来2度目となる。「アンジー(ジョリーさん)が大好きなので、彼女の作品に携われることがうれしかった」と出演が決まった時の心境を明かし、「ディズニー作品の仕事は本当に楽しくて、スタッフの皆さんの心遣いもすごい。ディズニーさんとお仕事できると聞くと、いつも『やった!』と思います」と笑顔を見せる。
「眠れる森の美女」の悪役・マレフィセントの視点で展開する物語について、「禁断の呪いが生んだ真実の愛といいますか“究極の愛”の話」と評す上戸さん。「夢にあふれいつでも子供に戻れるようなイメージのディズニー作品と比べると、今作は大人向けにも作られている」と感じたといい、「人によって見る角度も変わると思いますが、私はアンジーが演じるマレフィセントの感情を理解できたし、見ていて苦しくもなった。オーロラ姫に対する母性を感じ、すてきだなと思いました」と物語の深さなどに共感したという。そして「きっとお子さんがいるお母さんが見たら、とても胸に刺さる作品だと思います」と強調する。
今回演じたオーロラ姫の印象を上戸さんは、「ピュア過ぎて物事をそんなに深くは考えない子」と評す。続けて、「見えているものしか信じないというか、目の前にあることだけにすべてを注ぐ女の子だと思っているので、マレフィセントに呪いをかけられていると知った時は普通の人が経験する以上のショックを受けただろうと思います」とオーロラ姫の心情を分析した。演じる上では「エル・ファニングが常に笑って天真爛漫(らんまん)で明るいプリンセスを演じていたので、彼女の表情に合わせて声を作るようにしていました」と心掛けたという。
オーロラ姫の声を作っていく過程では、「エル・ファニングの声が少し低めなので彼女の声に合わせて私の地声の低い声でせりふを入れようか、日本人がイメージする15~16歳の可愛い女の子の声で入れようかで悩みました」と声のトーンが難しかったと上戸さん。現場ではファニングさんの声に合わせてアフレコしたそうだが、「彼女の笑顔を見ながら声を出すと自然と音が高くなり、子供っぽい声になっていることに気が付きました。監督からは『その声の方がいいから、もう一度最初からとり直しましょう』となって、最初からとり直すことになりました」とこだわりを語る。
上戸さんは5月に米ハリウッドで行われた同映画のワールドプレミアに出席した際、憧れのジョリーさんと対面を果たしている。「(ジョリーさんは)実在していました」と満面の笑みで初対面の喜びを語る上戸さんは、「顔も小さくて髪の毛もサラサラ、肌もツルツルしていて吸い込まれそうになりました。人に会って久々に赤面しました」と興奮気味に語る。実際に顔を合わせたことで「表情がとても豊かで、すごく柔らかい雰囲気を持った方。シャキシャキというかテキパキしているイメージがありましたが、あの日のアンジーはほんわかしていました」と憧れの女優の意外な一面を垣間見て、同じ女性として「なりたくてもなれないですけど、少しでも近づきたい」と思いをはせていた。
ジョリーさんが演じたマレフィセントについて、「決して口数が多いわけでもなく真っすぐ表情に出るようなキャラクターではないですが、アンジーの心の動きというのが表情に出ていました。微妙な心の動きを表情に出せるというのは、やはりアンジーはさすがだなと」と絶賛。さらに「(マレフィセントが)オーロラ姫を憎むところから始まりますが、エル・ファニングが演じるオーロラ姫だからこそ、アンジーが演じるマレフィセントの心を動かすことができたと思います」とファニングさんの演技が相乗効果をもたらしたと分析し、「オーロラ姫の魅力がなかったら、どんなにアンジーがカッコよくてもきっと映画は成立していない。やはりエル・ファニングもアンジーも素晴らしかったと思います」と力説した。
数々の作品に出演してきた上戸さんに、今作のマレフィセントやオーロラのようなターニングポイントを質問。上戸さんは「すぐに浮かぶのは『(3年B組)金八先生』(TBS系)や映画では『あずみ』、あとは『李香蘭』(テレビ東京系)に『流れ星』(フジテレビ系)とたくさんあります」と多くの作品を挙げ、「自分の年齢と作品が合った時にステップアップを感じ、作品の力を借りて自然にイメージを変えることができるのでありがたいと思います」と関わった作品から多くのことを吸収してきたと明かす。そして女優業を続けていく上でのモチベーションにはスタッフの存在が欠かせないという。「私は働いた分だけスポットを浴びることができますが、美術さんや技術さんはじめスタッフさんは家に帰れないとか見えない苦労をたくさんしている。一番しんどいし、一番逃げたくなるのがドラマの現場ですが、苦労を分かち合いながらエネルギーをぶつけ合うのが好きなのかなと思います」と感謝の言葉を口にする。
今作は“ディズニーヴィランズ(悪役)”と称されるディズニー作品の悪役や敵役キャラクターが主軸の映画。こういった作品の印象を「今までスポットを浴びていなかった、スポットを浴びても悪役的な存在だった人がいい形になっていくのはとてもすてきなこと」と表現し、「子供たちが見たらもっと心の器も広がるでしょうし、『どんな人でも輝けるんだよ』というのをディズニーが表現していくのはとても素晴らしいことだと思います」と新たな作風に理解を示す。
そういった流れの中で、上戸さんは今作を「今回の『マレフィセント』は、皆さんが思われているイメージとは全く違うオリジナル作品になっていると思います」と強調。「アンジーがとてもカッコよく、エル・ファニングがとてもキュートですてきな映画になっていると思いますし、女性なら誰しもが共感できるのではと感じました。家族の愛だったり真実の愛というものにたくさん触れられる映画なので、ご家族や恋人同士、大切な人と見に行ってください」とメッセージを送った。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
1985年9月14日生まれ、東京都出身。97年に「第7回全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞を受賞。99年から芸能活動を開始し、2000年にフジテレビ系ドラマ「涙をふいて」で女優活動を開始。以降数々のドラマや映画などで活躍し、02年にはシングル「Pureness」で歌手デビューした。13年はNHK総合ドラマ「いつか陽のあたる場所で」で主演を務めたほか、TBS系ドラマ「半沢直樹」や映画「おしん」などに出演。7月からフジテレビ系ドラマ「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」で主演を務めている。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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