エクスペンダブルズ3:ヒューズ監督に聞く スターたちを「ランボーなど役名で呼んでいた」

最新作「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」について語ったパトリック・ヒューズ監督
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最新作「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」について語ったパトリック・ヒューズ監督

 アクションスターが勢ぞろいした人気シリーズ第3弾「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」が全国で公開中だ。今作は「レッド・ヒル」(2010年)で脚光を浴びたパトリック・ヒューズ監督がメガホンをとり、シルベスター・スタローンさんが演じるバーニー・ロス率いる兵士の部隊「エクスペンダブルズ」の活躍を描いている。主演のスタローンさん、ジェイソン・ステイサムさん、ジェット・リーさんら前2作のメンバーに加え、今作ではハリソン・フォードさんやメル・ギブソンさんも出演していることが話題だ。スター軍団をまとめ上げ、見応え十分のアクション映画を作り上げたヒューズ監督に聞いた。

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 ◇自分が見て育ってきたヒーローとの現場に興奮

 「エクスペンダブル」シリーズ最新作の監督オファーを受け、「一番最初はスタローンと一緒に仕事ができるチャンスが来てうれしかった」とヒューズ監督は語る。喜びの次にやってきたのは「すごいな、ハリウッドの大スターと仕事するんだ」という実感と重圧だったという。豪華なキャストが魅力の今作だが、ウェズリー・スナイプスさんやアントニオ・バンデラスさんなど出演者が続々と決定。特にヒューズ監督はハリソン・フォードさんの出演に驚いたと話す。監督が8歳の頃に初めて撮った23秒の映画には、フォードさんが演じた「スター・ウォーズ」のハン・ソロのフィギュアを使っていたそうで、「非常に奇妙な縁を感じた」と振り返る。

 フォードさんとの仕事を「自分が見て育ってきたヒーローと、20年後に実際に自分が監督として現場に立っているというのが本当に巡ってきた感じ」と表現し、さらに「監督として、今作に出演しているようなアクションヒーローたちとやるというのは夢だった」と語り、「夢がかなって神様からのご褒美のような感じがした」と笑顔を見せる。そして、「それぞれのスターの人たちに非常に大きな敬意を抱いている」という。

 現場では「ものすごいことをやってきたヒーローたちなわけで、現場での皆さんの経験や知恵といったものは計り知れない」と驚き、「皆さんで作られた映画は合計すると1200本くらいあるわけで、そこにいるのはまるで映画学校に入り直したみたいな感じだった」と目を輝かせる。「できるだけいろいろな話を聞こうと思っていた」とスターたちから多くのことを吸収し、「楽しいと同時にとても学びの多いチャンスをもらった」と感謝した。

 ◇スターたちを出演作の役名で呼ぶ

 自身よりもキャリアの長い俳優たちに対し、「戸惑いやためらいは全然なくて本当に楽しく仕事をした」とヒューズ監督は話し、「監督というのはガイダンスを与える立場」と自身の立ち位置を説明。「必ずしも(ストーリーに沿って)順撮りしているわけではないので、役者は自分がどこをやっているのかや自分のキャラクターがどういう関係や位置にあるのかということを、しっかり伝えてあげることが必要だと思う」と話し、「監督の仕事はたくさんあるけれど、その中でも役者さんと関わる部分が一番好きだ。そこが非常に今回は楽しかった」とほほ笑む。

 監督とキャストの関係性について「役者との関係はオープンで正直なものがいいと思っている」といい、「相手が大スターだとしても、『気に入らないところがあったら気に入らないと言いますから、あなた方も気に入らないところがあったら言ってください』とやりとりすることで、非常に正直でオープンな関係ができた」と振り返る。そんな良好な関係を築けたからだろうか、現場では出演たちを「みんな役名で呼んでいた」と明かし、「『ランボーおいで』とか『ブレイドおいで』とかね」と笑い、「メル・ギブソンは『リーサル・ウェポン』のマーティン・リッグスと呼んでいた」と明かす。ちなみに俳優陣から監督は「(背が高いので)“ミスター・ヒュージ”(巨大さん)と呼ばれていた」といって再び笑う。

 ◇観客の期待に応えるためこだわり抜いたアクション

 今作は肉弾戦もあり、銃撃戦もあるアクションシーンが見せ場だ。「なるべくダイナミックにしようと思った」とアクションへのスタンスを語り、「ヘリコプター、車、モーターバイク、船など思いつく限りの乗り物がすべて出てきたと思うが、それぞれのシーンを違ったものにしようと思った」という。そして、「一番気を付けたのがコンピューターグラフィックス(CG)に頼らず、なるべく実写にしたいということ」とこだわりを明かす。

 シリーズのファンは「ものすごいスタントシーンとかスペクタクルなものを見に来る」と傾向を分析するも、「爆発などは実際に現場でやると時間がかかる」と頭を悩ませたヒューズ監督。「例えばバイクシーンでは16回分飛んでいる」と例を挙げ、「CGでやれば簡単だが、そうじゃなくて世界一のバイク乗りを探してきて実際にやろうということで、あのシーンだけで1週間以上かかった」とこだわり抜いた。さらにギブソンさんが演じるコンラッド・ストーンバンクスの初登場のシーンでは、「彼が爆弾を落として爆発させるのも本物で、700フィート(約213メートル)の炎が上がっている」と明かし、「人生の中でたびたび経験できることではないので、自分にとって(爆発シーンの撮影日は)本当に特別な日だった」とうれしそうに語る。アクションシーンを「実際に撮ると、人も時間もエネルギーもものすごくかかる」そうだが、「やっぱり『エクスペンダブルズ』に観客も求めているものではないかと思う」と力を込めた。

 ◇逆境をはねのけ作品の完成度に自信

 今作は公開前に映像データがインターネット上に流出してしまう事件が起きたが、「とても打撃だった。落胆した」とヒューズ監督は肩を落とし、「1回ダウンロードされてどれぐらいの人が見てしまったか分からないが、ものすごい時間とお金とエネルギーをかけて作った映画が盗まれることは非常によくないことだ」と憤る。しかし、「“最速ダウンロードされた記録”があり、それは人気の度合いを示しているということだと思う」とユーモアを交えて今作の完成度に自信を見せる。

 前2作のヒットを受けて今作でメガホンをとったが、「何か新しいもの、新鮮なものを持ち込まなければというプレッシャーは確かにあった」と打ち明けつつ、「やっぱりこれだけのスターがそろい、現場では皆さん楽しそうに撮っていたので、楽しい感じというのは演技にも反映されていると思う」とチームワークのよさを強調。監督自身、「13人のヒーロー全員、特技を披露しているシーンを見せつつ、ストーリーに関与していなければいけないという構成をするのが大変だった」というクライマックスの壮大なアクションをはじめ、「規模が大きく、さらにとても“生”な感じがし、ほとんどを実写で撮った作品はなかなか最近では見られない」とアピールした。映画は全国で公開中。

 <プロフィル>

 1978年生まれ、オーストラリア出身。短編映画「The Director」「The Lighter」「Signs」を製作後、2010年に初の長編映画「レッド・ヒル」で製作・脚本・監督・編集を担当し、同年のベルリン国際映画祭に出品される。「The Director」でオーストラリア映画協会賞脚本賞、「レッド・ヒル」ではオーストラリア映画批評家サークル賞編集賞にノミネート。09年のカンヌ広告大賞でCM監督としてゴールドライオンを受賞する。シルベスター・スタローンに見いだされ、今作の監督に抜てきされた。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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