女優の鈴木京香さんの主演映画「救いたい」が22日に公開される。映画は、鈴木さんの出身地・宮城県の東日本大震災から3年後の現状を描いた物語。過去にも鈴木さんは、地元を舞台にした作品に出演したことはあるが、今作について「私が出演させてもらったのは偶然ではなく、宮城県出身ということが大きな要素の一つだと思っています」と並々ならぬ思いを明かした。そして「せっかくやらせていただくからにはきちんと地元を伝えたい」「中途半端にはできない」と取り組んだ今作の魅力や自身が演じた役柄、そして夫役の三浦友和さんの印象などを聞いた。
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「救いたい」は、仙台医療センターの麻酔科医・川村隆枝さんのエッセー「心配ご無用 手術室には守護神がいる」が原作。仙台の病院で麻酔科医長を務める川島隆子(鈴木さん)と、震災後に仙台の病院を休診して地域医療を立ち上げた医師で夫の貞一(三浦さん)を中心に、震災から3年たった宮城で前向きに生きようとする人々の姿が描かれている。「ハチ公物語」「ひめゆりの塔」「ラストゲーム 最後の早慶戦」などの名匠・神山征二郎監督がメガホンをとった。
映画について「心優しくて力強い人たちのお話」と語る鈴木さん。「派手さはないけれど、一生懸命、前を向いて歩く人たちの暮らしを丁寧に描いた映画だと思いました。震災の実際の映像が流れたりしてどうしても心が痛むこともありますが、全体を流れているムードは、決して暗いものではなくて、あきらめずに生きている人たちの心の交流の話だと思います」と続ける。
さらに、演技への取り組みも「そこで必死に生きている人、自分らしく職業を全うしようとしている人たちが奇をてらわずに(脚本で)描かれていましたから、私もとにかく素直に正直に役と向き合って演じました」と役への思いを語る。
鈴木さんが演じたのは、原作者・川村さんの実体験を基にした第一線で活躍する麻酔科医という役どころ。役作りについては「大事な職業を任せられている女性としての責任、取り組み方や姿勢みたいなものを忘れずに演じようと思いました」といい、「何かしらの問題に一喜一憂する繊細さではなくて、女性の強いところ、明るくどっしりしていられる部分みたいなものを大事にしたいなと思って演じました」と語る。
一方で、被災者を演じながら「震災当時、私はそこで実際に暮らしていたわけではないですから、そのご苦労をこちらの勝手な想像で表現することは失礼な気がしました」と葛藤を明かし、「だから、一番大事なことは、とにかく知る努力をすること。できるだけ見るとか、聞くとか、できる限りのことをするしかなかったですね」と心境を語る。
そんな鈴木さんが演じる隆子と被災地でたくましく生きる夫を演じたのが三浦さんだ。三浦さんとはこれまでも同じ作品に出演することはあったが、2人が「目と目を交わしてお芝居するのは今回が初めて」だったという。
「頼りがいのあるお医者さんであり、心細い中、一緒にいてほしいと思わせてくださる旦那さん像を見事に演じていらした。こういう方が身近にいるからこそ、自分も麻酔科医として頑張れる、と素直に感じることができました」と話す。
撮影は、宮城を中心とした被災地で行われた。「大変な現状の中、暮らしている方々のところにお邪魔して、三浦さんも『迷惑をかけていないかな』といろいろ気にされていたみたいなんです。でも、エキストラとして参加してくださった地元の方たちが帰り際に『楽しかった』って言われたらしくて。日常、大変なことも多いのに、この撮影に参加したことで、ちょっと違う時間を過ごせたかなと、三浦さんが話してくださったそのエピソードが印象に残っています」と笑顔を見せた。
そして、出来上がった作品について、鈴木さんは「震災後の今の状況を映像で見てもらいたいし、知ってもらいたい。いい悪いとか、まだまだだということではなくて。ただ知ってもらいたいというのがあります。大変な状況の中、一歩一歩進んでいる現状を一人でも多くの方に見ていただけたら」と語る。
続けて、「麻酔科医の仕事は川村先生が一番訴えたいところだと思うんですが、麻酔科は今の先端医療を支えているパートであり、重要な役割です。忘れがちですが、麻酔科の大事な役割を改めて知っていただきたいと思います」とアピールした。
次回は、今回撮影で訪れた宮城県の印象や地元愛を聞く。
<プロフィル>
すずき・きょうか。1968年生まれ、宮城県出身。1989年に映画「愛と平成の色男」で女優デビュー。91年にNHK連続テレビ小説「君の名は」でヒロインを演じて一躍注目される。2004年の映画「血と骨」で第28回日本アカデミー賞最優秀女優賞を受賞。その他の主な映画出演作に「ラヂオの時間」(97年)、「釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪!」(02年)、「男たちの大和/YAMATO」(05年)、「沈まぬ太陽」(09年)、「セカンドバージン」(11年)、「清須会議」(13年)などがある。
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