安藤サクラさんが女性ボクサー役に挑んだ映画「百円の恋」(武正晴監督)が20日から全国で公開される。故松田優作さんの出身地である山口県の周南映画祭で、2012年に新設された脚本賞「松田優作賞」の第1回グランプリに輝いた足立紳さんの脚本を、映画「イン・ザ・ヒーロー」(14年)の武監督が映像化した。安藤さんは、700人以上の応募からオーディションでこの役を勝ち取ったという。安藤さんの役に懸けた意気込みがうかがえる快作だ。
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弁当屋の実家で、働きもせず自堕落な生活を送っていた32歳の一子(安藤さん)は、出戻りの妹(早織さん)と壮絶なけんかをしたことから、家を出て1人暮らしを始める。いつも行く100円ショップで働き始めた一子は、店に出入りする中年ボクサー狩野(新井浩文さん)と知り合い、彼の引退試合を見に行ったことで、自分もボクシングをやりたいと思うようになり……という展開。
とにかく、映画の前半と後半の安藤さんの変わりようがすさまじい。安藤さんはオーディション段階で体重を一度増やし、その後、撮影開始10日間ほどで減量したという。映画序盤では、脇腹のぜい肉をぼりぼりとかきながらおいっ子とゲーム三昧(ざんまい)。歩き方もダラダラしていて、見るからにだらしがない。そんな彼女が、ボクシングを始めたことで己を律し、心身ともにむだなものをそぎ落とし、スリムになっていく。二重あごも見事に解消され、最後には顔が一回り小さく見えたほどだ。狩野との出会いはまた、一子の中に眠っていた“女心”も目覚めさせた。“勝負下着”を買い、中華屋のトイレの便座に腰かけファンデーションを塗る姿が、なんともいえず愛らしい。クライマックスの試合のシーンでは、何度もリングに沈んでは立ち上がり、満身創痍(まんしんそうい)になりながら対戦相手に向かっていく。その痛々しい姿に涙をこぼしながら、心の中で「カッコいいぜ、一子!」と叫んでいた。カタルシス効果抜群の作品だ。20日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほか全国で順次公開。 (りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。今年もお読みいただき誠にありがとうございました。2015年がみなさまにとってよき年になりますように。来年もよろしくお願いいたします。
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