アメトーーク!
ひとり暮らし長~い芸人
11月21日(木)放送分
壇蜜さんの主演ドラマ「アラサーちゃん 無修正」で、女性のセックスや恋愛観を赤裸々に描き、平日昼帯の旅番組「昼めし旅~あなたのご飯見せて下さい~」では、普通の人たちの食をリアルに紹介。そんな両極端な番組を制作するのは、テレビ東京の工藤里紗プロデューサーだ。好調を続けるテレ東を担う若き女性プロデューサーに、テレビ界を生き抜く秘訣(ひけつ)とテレ東的バラエティーの作り方を聞いた。
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−−どんな学生時代でしたか。
修学旅行の時にビデオをいつも回しているビデオ小僧みたいな感じでした。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスでは、一応メディア系のゼミに入っていましたが、ダンスばかりの毎日でした。中学ごろまで10年くらいバレエをやっていて、その後、ヒップホップなどの音楽が好きになって、ストリートダンスを始めました。大学に入ってからは週5日練習で、土日も午前9時くらいから練習していました。大学のサークルや大学以外でもチームを組んでクラブのイベントに出たり。頭もベビーアフロみたいなのにしたり、全部編み込みにして三つ編みだらけだったり。大学4年間はそんな感じでしたね。
−−なぜテレビを目指したのですか。
小学校の時に映画「ダンス・ウィズ・ウルブズ」を見て、ケビン・コスナーが主演・監督をしていて、なんだか世の中にはすごい人がいるものだなって思って。なぜか分からないですけど、映画を作る人になりたいなと思って、映像系を探していたんです。現場にいられたらいいなと思っていて、映画、広告、テレビを受けて。いろいろお話を聞いて、映画会社は、興行の方にいったりして、必ずしも映画を作れるわけではないし、広告はクリエーティブに行けるか分からない。たまたまその年のテレビ局の採用では、クリエーティブ総合職というものがあって、クリエーティブで入れば報道か制作かスポーツといった制作現場に配属してもらえるだろうと思いました。
−−テレビ東京に入ったのは?
映画会社の内定が出たり、(出身の)大阪の局も受けていたのですが、最後はテレ東に絞りました。服装はスーツは着ているんですけど、トレンチコートみたいなのではなく、おしゃれな?革ジャンを着ていたり、赤いコートを着ていたりしましたが、無事採用してもらえました(笑い)。
−−入社前のテレビ東京の印象は?
テレビは普通の人ぐらい見ていたんですが、テレ東だと「ファッション通信」が好きだったり、テレ東が出資していた「アメリ」とか「インファナル・アフェア」などの映画が好きだったりしました。入社の時は放送は終わってしまっていましたが、ダンスをやっていたので、SAMさんと優香さん司会の「RAVE2001」というダンス番組は、ダンス界では“神番組”でした。
−−最初からバラエティーだった?
最初は「ペット大集合!ポチたま」のADでスタート。他の番組と比べたらましな方だったんですけど、慣れないスケジュール感とか、メンタル的には大変でした。その後、「モーニング娘。」の番組「ハロー!モーニング。」を担当しました。いわゆるアイドル番組なんですが、グルメリポートも撮りにいくし、スタジオでセットを組んで「人間だるま落とし」とかもやるし、ゲームあり、歌あり、コントあり、ロケありと、結構そこでいろいろ経験できましたね。
−−AD時代の苦労は?
テレビ業界を目指していたので、マスコミのゼミに行ったりして、本気でいすが飛んできたりすると思っていた。そんなことはなかったですが、怖いレベルがいい意味で高かった。入社してからも、「こんな目に遭ってさ」という先輩の話を全部真面目に聞いて、ガードし過ぎていました。常にいすが飛んでこないように動いていたり、食事に誘われても、「いえ、これこれがあります」といって仕事したり、ものすごくバリアを張っていました。ご飯を食べてる=楽をしている=やられる可能性がある=絶対にすきを見せてはいけない、と思っていたんですね。ちょっと可愛げがなくて、損していたかもしれません。「ここは自衛隊じゃない」と先輩に言われたこともありました。
あと、女性だからというのはあまりないんですが、とにかく顔を1日1回洗うことは大事であると思っていて、編集所で徹夜して夜が明けると、ポーチを持って、汚いトイレに行って、洗顔をきちんとして、自分の中でリセットしました。取材のお願いに行ったり、いろいろするのだって、すごい汚かったりしたらあまりよくない。見た目も大事ですからね。
−−ディレクターになってからは?
「ハロー!モーニング。」でADとディレクターと両方やらせてもらって、勉強になりました。2年目の時、歌番組の「Melodix!(メロディックス)」で、初めて歌を撮らせてもらって、チャンスに恵まれていた。すごく早かったんですが、先輩やプロデューサーにいいねと言われて結構自信になりました。ダンスをやっていたので、曲のどこで切ると面白いとか、アクセントにするといいとか、ちょっと共通するところがあって、それが生きたのかなと思います。その後、自分の番組を持つようになっても、自分だけが女性ディレクターだったりすると、なめられちゃいけないと思って、「シャキーン」って“ファイティングポーズ”を取っていました。社食に行こうと誘われても、「大丈夫です」って。ご飯も行きません、トイレも行きませんって、そんな人はいないのに……。1年目が一番シャキーンが強くて、だんだん打ち解けていきましたけど。
−−順風満帆ですが、壁に突き当たったのは?
(ドキュメントバラエティーの)「奥さまは外国人」を担当しました。総合演出は、看板番組「田舎に泊まろう!」もやっていた五十嵐洋文さんで、当時のテレ東では“将軍”みたい人の下に兵士として参戦しました。外部の制作会社の一員となって参加していたので、アウエー感もすごいし、ディレクターになった時のプレッシャーもあった。実在する外国人妻の人生を紹介する再現ドラマも作るんですが、例えば、戦後間もない頃の電車とかを再現するために、似ているものを探すけれど、ない。出せども出せども違うと言われて、スケジュールもタイトで、追い込まれて初めて逃亡しようと思いました。
−−どこで乗り越えましたか。
スペシャルの回の大ネタをやらせてもらうことになったんです。ルーマニア人の女性と日本の外交官の男性が出会って、恋に落ちた時に、第二次世界大戦が勃発して、その女性はしばらく軟禁状態になって、そこからソ連に渡って、シベリアの収容所に入れられて、そこでもいろいろあって、ようやく青森・弘前にたどり着いて、そこで戦後を迎えて……っていう人生の再現ドラマを撮りました。昔の資料を全部読み、ご本人は亡くなっていたので、お嬢さんや親族から話を聞いて、台本を作り、軍服、銃、外国人キャストを用意して、収容所の再現や青森のロケなど、全部過去のことで、映画レベルの壮大なドラマなので、求められるから応えようと思って精いっぱい頑張って作りました。出演者も泣いてくれて、数字もよかった。やり切った!と思ってたら、予算がかかり過ぎて、「お前はテレ東のスピルバーグか!」って怒られました。予算という概念がなかったんですね。とにかく大変でこの時期の記憶がない。電車に乗って、このままどっかにいこうかと、もうろうとしたこともありましたが、ゴールデンのメインネタをやらせてもらって自信になりました。
−−その後は?
関ジャニ∞の「むちゃ∞ブリ!」と「ありえへん∞世界」、「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」を担当しました。今でもA.B.C−Z の「ABChanZoo(えびチャンズー)」のディレクターもしています。あとは「東急ジルベスターコンサート」のディレクターでオーケストラのカット割りもやっています。
−−音楽ものも多いですね。
よりこの角度からこう撮ったほうが画的にいいとかカット割りを考えるのは、バラエティーだとなかなかそこまでいかないけれど、音楽だと、もっと構図とか、こうなったらすてきじゃないかとカット割りを考えています。自分では分からないんですが、「あれは男では撮れない」と言われることもあります。女性をちょっとセクシーに撮る時に、男の人だと遠慮して撮るところをいけるからかもしれません。
−−女性ならではのよさは?
「奥さまは外国人」は、当時はあまりなかったディレクターカメラでずっと密着して撮っている番組で、女性だからこそ距離も近くて、リラックスして撮れるのでより密着感が出る。「ありえへん∞世界」の時も、自分でデジカメ持って撮りにいくことが多かったですね。突っ込んだ質問もその流れでできるし。女性だから相手もあまり構えないのかもしれません。
−−最初に自分でプロデュースした番組は?
「極嬢ヂカラ」です。女性に向けた深夜番組というのが今までなくて、自分が帰宅するのが深夜だったので、一つくらい自分向けの番組があってもいいのではと思って、プロデューサーデビューで、キャスティングも演出も担当しました。特番で2回やってレギュラー化しました。ガールズトークというのは今まであるけど、ふわふわしたガールズトークではなく、もっと突っ込んだものが好きなので、恋バナもあったけれど、体に関するものが多かったですね。スタッフはほとんど女性だったので、会議でも「生理の時、大変じゃない? ナプキンですか? タンポンですか?」と聞いて、「意外とタンポン少ないんだなあ。番組で聞いてみよう!」ってなったり、誰かが海外に行って「ハワイのタンポンめっちゃ可愛いじゃないですか? 外国のタンポン集めてみよう」ってなったり、社内の男性の方はどん引きでしたが、女性からの支持率は高かったですね。
−−女性の本音といえば、壇蜜さん主演のドラマ「アラサーちゃん 無修正」も企画されたんですね。
原作が男性誌の「週刊SPA!」で連載されているんですが、単行本は7割が女性が買っているそうなんです。その単行本の帯に壇蜜さんが出ていて、本の中で、著者の峰なゆかさんと対談していて、壇蜜さんが「ドラマ化されるなら、私がやってみたい」と言っていたので、壇蜜=アラサーちゃんというアイデアは先にあったんです。いろいろラッキーが重なって実現できました。
−−ネット版も話題になりましたね。
「極嬢ヂカラ」の時もネットに力を入れていて、YouTubeのテレビコンテンツの再生回数で1位になったことがあるんです。ネットを使って、広まる要素とかそこで残っていく要素があるなと思っていたので、アラサーちゃんの時も、お金のかからない範囲で、写真を撮っておいて、写真館を作ってみたり。
−−ネットの可能性は?
テレビがこれからも面白くなっていくのに欠かせない要素となっていくので、そこでの実験とかは、予算がスピルバーグにならない限りはなんだってやってみたらいいと思う。ただ、ネットで話題になるからといって、直接視聴率につながるとは限らない。ツイッターで爆発的に伸びる番組でも、視聴率はあれ?ということがあります。
−−ウェブ動画で気をつけていることは?
短くしています。長い番組をきちんと見たかったらテレビで見たり録画しますよね。ウェブ動画は簡単に、短くして、逆にあまり手を加えないようにしている。カッコいい編集をしたり、すごい音楽がついたりはせず、ひょいって撮った30秒ですみたいな。スマートフォンで撮った40秒くらいの雰囲気が出ているのがいいかなと思う。「アラサーちゃん 無修正」はネットとの親和性が高い感じがしました。そもそも4コママンガなのですごくイージー。パッと見てすぐ読めちゃうので、ネットは隙間(すきま)で見られるので、そういう感覚が生きています。
−−現在の担当番組は?
地上波の平日帯番組の「昼めし旅~あなたのご飯見せて下さい~」と「A.B.ChanZoo」、BSジャパンでバラエティーの「大竹まことの金曜オトナイト」とクラシック音楽番組の「エンター・ザ・ミュージック」をやってます。
−−テレ東の旅ものは人気ですが、平日昼の帯番組の企画にしたのは?
裏が豪華キャストのバラエティーが多いので、いろいろ試してそうなりました。昨夏、友近さん司会で「ダンナの居ぬ間に……」という女性ばかりで主婦向けのトークバラエティーを特番で1週間やって、結構面白かったんですが、昼のテレ東の視聴者はそこにはいなかった。相談室バージョンとか、旅ものとか、1週間ごとで試した時に、旅っぽいものがよかったので、そこに企画を乗せたんです。
−−他局の視聴者とは違う?
主婦の方はもちろんですが、年配の男性でおうちにいる方も結構います。他が完全に主婦向けの番組だから、結構男性を意識してます。レシピとかは女性を意識しますが、男の人も楽しめるように、旅の要素を入れて。旅ものの特番でディレクターをやった時、ワンカット、ワンカット自分が思うよりも長く撮れって指導されました。例えば、部屋を紹介する時も、7~8秒以下のカットで「パンパンパン」という編集ではなく、ゆったりとした気分を味わってもらうとか。それは「昼めし旅」で意識してやっています。画面も、お年寄りに優しく、うるさくないようにごちゃごちゃテロップ入れず、赤も使うけど和風の赤にして、字は大きく。また、ごちゃごちゃ効果音を入れずに、70、80年代の懐かしい曲を使う。ナレーションもゆっくりで、入らなければ削るか、映像を延ばすか。出てくれているリポーターの方には失礼かもしれないけど、演者よりも食べ物とか出会う人、場所が大事。リポーターは案内人だから、そんなに目立たなくていい。他局でもいろんな人が出ている番組があるので、コンビなら“じゃないほう”芸人をお願いして、申し訳ないけど、リポーターの方が目立たないように。華やかなのは他にいっぱいあるから、引いて、引いて、薄めて、薄めて、謙虚に、謙虚にしています。
−−最近「テレ東が元気」と言われています。
本当にたまたまだと思います。一瞬でもあぐらをかいたら、すぐプシュッてやられる。テレ東いけてるぜ、なんて絶対に言っちゃいけない。たまたまニッチさが、インターネットなどの流れとうまくマッチしているんだと思います。
−−これからやりたいことはありますか。
「アラサーちゃん 無修正」で、今までのバラエティーで培ったものを生かしたものができたので、今度は自分の経験値で、女性として、ママになっての経験を生かしたい。「大竹まことの金曜オトナイト」で、結構ギリギリなことをやっている。真面目にやるだけじゃなくて、ちょっとエンターテインメントにしながら問題提起していくというのはずっと意識していきたい。
−−BSは違いますか。
「オトナイト」はちょっとBSの中でも違うと思います。ゆったりとした平和な番組が多い中、結構とがった内容だったりする。バカな部分とか、軟派な部分と硬派な部分が両方があるのが面白いと思っています。真面目にこうですね、優しくしましょうとかそうじゃない手法で出していけるといいな、と。バラエティーだったり、ドラマなのか、映画なのか、出し方はいろいろあります。
−−これからテレビ業界を目指す人にアドバイスを。
大学のうちに長期の海外旅行には絶対行った方がいいと思います。社会人になったら絶対に行けないから。今でも行ったらよかったなと思う。テレビを目指す人には、幅広くいろんなものに興味を持つ人がいいなと思います。特殊能力はいらない。スーパーマンが一人で番組を作るわけではないので。専門学校、資格、というより、なんでも番組作りにつながると思う。飲みに行く。恋をする。バイトする。サークルを頑張る。おばあちゃんに会いに行く。そういうことがすべて生きるのがテレビだと思う。それぞれ、いろんなことを楽しんで毎日を生きていければいいと思います。
<プロフィル>
くどう・りさ 2003年に入社後、「ありえへん∞世界」「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」のディレクター、「極嬢ヂカラ」「大竹まことの金曜オトナイト(BSジャパン)」ドラマ「アラサーちゃん 無修正」昼ベルト「昼めし旅~あなたのご飯見せて下さい!」などの演出・プロデューサーを務める。3歳の息子のママとしてたまに“鬼”に変身!?
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