さよなら歌舞伎町:前田敦子と染谷将太に聞く AKB48メンバーに一番人気の染谷との共演に…

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 映画「ヴァイブレータ」(2003年)や「やわらかい生活」(06年)などで知られる廣木隆一監督と脚本家の荒井晴彦さんが3度目のタッグを組んだ映画「さよなら歌舞伎町」(24日から全国公開)。東京・新宿は歌舞伎町にあるラブホテルで交錯するワケありの男女の1日を描いた群像劇だ。今作で、ラブホテルの店長、高橋徹と、その恋人でプロのミュージシャンを目指す飯島沙耶を演じているのが染谷将太さんと前田敦子さん。初共演にして倦怠期のカップルを演じた2人が、作品の魅力や互いの印象、さらに今年の抱負を語った。

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 ◇「フラット」な前田さんと「フワッといた」染谷さん

 「話し合うことはなかったですね。その場の空気感を大切にして作っていきました」と、前田さんとの芝居を振り返る染谷さん。染谷さんは、前田さんについて「すごくフラットな方」と感じたといい、「いい意味で気を使うこともなく、そのままの流れでお芝居が始まって、終わって、解散、みたいな(笑い)。そういうのが自分は結構好きなので、すごくリラックスしてやらせてもらいました」と語る。一方、前田さんは、染谷さんに会う前、「(芝居について)一つ一つ確認する真面目な方」だと想像し、「話し合わなきゃいけなかったらどうしよう」と身構えていたそうだが、実際の染谷さんは「フワッと(現場に)いたので、すごく安心しました」と笑顔を見せる。

 染谷さんが演じる徹という青年は、周囲には自分は一流ホテルマンと偽りながらラブホテルの店長をやっている。女性の前田さんからすると「なぜそんな小さなことを隠しているの? そこはうそをつかなくてもいいでしょう」という思いがよぎったそうだが、演じる染谷さんにしてみれば、徹は「とても男の子らしいプライドや自意識」の持ち主で、「それが崩れていくときの弱さみたいなものに男の子らしさを感じた」という。一方、プロのミュージシャンを目指す沙耶について、前田さんは「私自身が置かれた環境とは全く違うところにいる女の子」と表現しながらも、「徹との微妙な関係というか、もがいている感じとか、彼女の気持ちはよく分かります」と理解を示した。

 ◇「やりたいことがあるならもがいて当たり前」

 前田さんが言うように、沙耶にせよ、徹にせよ、ここに登場する人々はみな、現状を打破しようともがき、葛藤している。そういう姿を見て、前田さんは「やりたいことがあるんだったらもがいて当たり前だと思う。それぐらい何かに必死になるということは大事なことなんじゃないかな」と語る。前田さんは「壁があるならぶつかっていきたいタイプ」で、しかも「当たって砕けるのではなく、当たって次に行きたいタイプ」だという。「負けず嫌いなので、気になるものはなんでも見たいんです。欲張り精神ですかね」と笑顔で語り、「頑張り屋」の一面をのぞかせる。

 かたや、普段から「もがく役が多い」という染谷さんは、「自分の人生よりも、自分が演じる役のほうがはるかに葛藤して」おり、すでにそこで「もがき切っている」ため、自身の葛藤は「消化できているかもしれないですね」と、役がもたらす思わぬ効能を明かした。

 ◇周囲から羨ましがられた2人

 染谷さんは、脚本を執筆した荒井さんから「ピンク映画をやらないか」と持ちかけられたとき、怖気(おじけ)づくより、「廣木さんも荒井さんも、一度ご一緒させてもらえたらうれしいと思っていたお二方だった」ことに加えて、「歌舞伎町を題材にするというのはとても魅力的だった」ことから出演を快諾したという。前田さんも「廣木さんに呼んでいただけて、ぜひ出たいとしか思わなかった」と当時の心境を語る。もっとも、前田さんは廣木監督がピンク映画出身ということを知らなかったそうだが、「一番素に近い監督の作品に出られることがうれしい」という気持ちの方が勝ったようだ。

 さらに前田さんにとって魅力だったのは、相手役が染谷さんということだった。なんでも染谷さんは、「(AKB48の)メンバーの子たちの間では、今一番、旬みたいで(笑い)、会うたびにみんなから、『カッコいいよね』と(共演したことを)羨ましがられる」のだという。この話に、戸惑い、照れながら「そうですか、意外です」とぽつり、ぽつりと言葉をはさむ染谷さんに、前田さんは「知らなかったでしょう。いっぱいいるんだよ、好きって言っている人が。若い子たちからもキャアキャア言われて、年上の女性からは可愛いと言われて、すごいです」とたたみかけ、染谷さんをさらに“へどもど”させていた。しかし、羨ましがられたのは染谷さんも同じで、知人からは「なんでお前があっちゃん(前田さん)の恋人役なんだ」とやっかまれたという。

 ◇2015年の抱負と映画の見どころ

 廣木監督の作品といえば「自転車の2人乗り」がおなじみだが、今作にもそれは出てくる。染谷さんも前田さんも、2人乗りは「人生初」の体験だったそうで、 染谷さんは長回しで撮られたそのシーンを、「しんどかったというより緊張した」と打ち明ける。一方、前田さんが印象に残るシーンの一つとして挙げたのは、ギターの弾き語りの場面。撮影には5、6時間かかったといい、前田さんは「(廣木監督は)もっと時間をかけてやってみようと、かなり待ってくださいました」と語り、廣木監督への謝意を示した。

 このインタビューが行われたのは、2015年が明けて1週間ほどたった頃。そこで、2人に今年の抱負を聞くと、前田さんは、「もうちょっと一人の時間を増やしたいです。カッコいい言い方だと『自分と向き合いたい』というのでしょうけど、そういうのではなく(笑い)、一人で静かでいられる時間を作って大人になりたいです」とにっこり。対する染谷さんは「毎年言っていますが、心身ともに健康で今年もやっていきたいと切に願っています」と無難な答え。元日に、女優の菊地凛子さんとの結婚を発表し世間を驚かせた染谷さんだが、当人はいたって平常心で、そんな周囲に惑わされないところも、AKBのメンバーはもとより、世の多くの人々に愛される理由なのだろう。

 今作について前田さんは、「ぜひとも女性の方に見てほしいです。『さよなら歌舞伎町』というだけあって、そういうシーンはもちろんありますけど、すごくきれいだと思うし、内容的にもすごくピュアなラブストーリーで、いろんな人に楽しんでもらえると思います。同世代の子たちにも勧めていきたい」と話し、その上で「ラストにかけてはグッとくるものがあって、すごくすっきりしてもらえるんじゃないかな」とアピール。その言葉を後押しするように染谷さんも、「歌舞伎町を舞台にして、いとおしく思ってしまう人々が、いとおしく思ってしまう出来事を繰り返し、最後は心が温まる、すがすがしい気持ちで家路につける映画だと思います」とメッセージを送った。映画は24日から全国で公開中。

 <染谷将太さんのプロフィル>

 そめたに・しょうた 1992年生まれ、東京都出身。9歳のときに映画「STACY」で活動開始。2009年、映画「パンドラの匣」で映画初出演を果たし、「ヒミズ」(11年)でベネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)を受賞。主な作品に「生きているものはいないのか」「悪の教典」(ともに12年)、「永遠の0」(13年)、「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」(14年)、「寄生獣」(14年)などがある。出演した「寄生獣 完結編」が4月に、「ストレイヤーズ・クロニクル」が6月に公開を控える。初めてはまったポップカルチャーは「ウルトラマン」と「仮面ライダー」。特に仮面ライダーの初代、2号、V3、アマゾンが好きで、幼稚園児ぐらいの頃、レーザーディスク(LD)で見ていたという。

 <前田敦子さんのプロフィル>

 まえだ・あつこ 1991年生まれ、千葉県出身。2005年の結成当時から活動してきたAKB48を12年に卒業。一方で07年の映画「あしたの私の作り方」で女優デビュー。映画初主演作は「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(11年)。以降、「苦役列車」(12年)、「もらとりあむタマ子」(13年)などに出演。14年には「神さまの言うとおり」で声優に初挑戦した。5月に出演した「イニシエーション・ラブ」の公開を控える。初めてはまったポップカルチャーは、玩具の「シルバニアファミリー」。幼稚園から小学生にかけてずっと集めていたといい、とりわけ熱心に集めたのはハムスターの家族。いまだに実家に置いてあるそうだ。

 (インタビュー・撮影・文:りんたいこ)

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