今年の第87回アカデミー賞で3部門を受賞した映画「セッション」(デイミアン・チャゼル監督)が17日に公開された。偉大な音楽家になることを夢見て名門音楽学校に入学した青年が、天才を創り出すことにとりつかれた鬼教師の指導を受けるも、次第にレッスンが狂気に満ちていく様子を描いている。「スパイダーマン」シリーズなどに出演した米俳優のJ・K・シモンズさんが鬼教師役を怪演し、生徒とのサスペンス感あふれるやりとりで魅了する。物語と合わせてパワフルなドラムプレーも見どころだ。
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名門音楽大学へ入学したアンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラーさん)は、フレッチャー(J・K・シモンズさん)のバンドにスカウトされる。バンドで成功すれば偉大な音楽家になるという夢はかなったも同然だったが、ニーマンを待ち受けていたのは、天才を生み出すことにとりつかれたフレッチャーの完璧を求める常人には理解できないレッスンの日々。罵声を浴びせられ、時には暴力も辞さない指導にニーマンは精神的に追い詰められながらも必死に食らいついていく。ニーマンは家族や恋人などすべてを投げ出しフレッチャーが求める高みを目指していたが……という展開。
ジャズドラマーが主人公の音楽映画だが、おそらく一般的な音楽映画とは似て非なるものだろう。楽曲の素晴らしさや登場人物たちの才能を軸に展開する音楽映画は多いが、今作はそのセオリーを完全に無視。とにかくどこまでいってもフレッチャーの過激なスパルタぶりが止まらず、もはやサイコスリラーかと感じてしまうほどの過酷さに震え上がってしまうほど。そしてフレッチャー役のシモンズさんの狂気じみた演技と悪人顔が見事で、想像のはるか上をいく演技には無条件で拍手を送りたくなる。予告でもあおっている「ラスト9分19秒」は、結末へ持って行くために物語があったのだと納得させられ、予想外の結果とエネルギーに打ちのめされる。細かいことは考えず純粋に面白いと感じさせてくれる映画だ。TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で17日から公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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