「ラブライブ!」の人気の勢いが止まらない。2014年に放映されたアニメ第2期のブルーレイ・ディスク1巻の累計売り上げは11万本を超え、スマートフォン用ゲーム「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」も登録者数が1000万人を突破、ベストアルバムも10万枚を売り上げた。果ては「ラブライブ!」のファンを意味する「ラブライバー」を公言する女優やタレントも出現した。多くのアニメが放送される中で、なぜ「ラブライブ!」が圧倒的な支持を集めているのか。その魅力について探った。
「ラブライブ!」は、9人の高校女子生徒キャラクターが結成した「スクールアイドル」の活躍を描いた作品。原作は、アニメやゲームではなく、さまざまなメディアに展開されることを想定したプロジェクト。その始まりは、2010年にKADOKAWAの雑誌「電撃G’s magazine」でスタートした連載だ。9人のグループ名は、英語で「女神」を意味する「ミューズ」で、グループ内のユニットを構成したり、センターポジションを決める「総選挙」など、現実のアイドルさながらにファンが“投票”するイベントを次々と打ち出した。一連の読者参加型の企画は、同誌が「シスター・プリンセス」(1999年~)で培った手法だ。
「ミューズ」が映像デビューしたのは、テレビアニメではなく、ファーストシングルに入ったアニメのPVだった。「ガンダム」シリーズでおなじみのアニメ制作会社サンライズの映像は、ドラマパートのこまやかなキャラクターの表情は手描きの2D、メンバーの位置がめまぐるしく変わるダンスは3DのCGと、状況に応じて巧みに使い分け、空撮など大胆なカメラワークを駆使するなど、アニメの強みを最大限に引き出した。さらに「アニメならでは」と思われたダンスを、担当の声優たちが、厳しいトレーニングを積んで、生身のライブで演じたことも、アニメファンを驚かせた。
そして、2013年1~3月に放映された第1期のテレビアニメは、大きな節目となった。既存ファンにとって、「自分たちのアイドル」がメジャーデビューし、新規のファンを爆発的に増やすきっかけとなった。2Dと3Dが融合したアニメーションは進化。さらに9人の日常もアニメで丁寧に描かれ、一人一人の性格や関係性も掘り下げられた。母校廃校の危機を救うため、9人が力を合わせる青春ストーリーに加え、努力を重ねてレベルアップしていくスポ根の要素は、視聴者の共感も得やすい内容となった。
続いて、2013年4月にサービスを始めたスマートフォン用ゲーム「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」も、ヒットを加速させた。プレーヤーは、音ノ木坂学院の生徒となって「ミューズ」や仲間たちと練習やライブを行う……という内容の「音ゲー」で、もちろん基本利用料無料のため、年齢や性別を問わず、手に取りやすい。ゲームにはもちろん、声優のボイスが入り、アニメでの楽収録されている。
スマホゲームの配信と合わせて、アニメもテレビで再放送されたり、インターネット放送で繰り返し配信されたことも、人気を加速させた。美少女キャラクターのアニメやゲームのファン層は、男性に偏ることが多い。しかし、「ラブライブ!」のアニメ本編は、美少女アニメにありがちな「お色気路線」には走っておらず、ステージ衣装も「可愛さ」を優先させるなど、清潔感にも配慮している。「美少女コンテンツが男性向け」という“業界の常識”を取り払うことで、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」にレギュラー出演した女優の宮崎香蓮さんがファンであることをカミングアウトしたように、女性のファン層を取り込んだ。
2Dと3Dが融合したアニメ、声優ユニット、スマホゲームを有機的に結びつけているのが、“アイドルの生命線”とも言える質の高い楽曲だ。涼宮ハルヒの憂鬱の「冒険でしょでしょ?」や「ハレ晴レユカイ」、「らき☆すた」の「もってけ!セーラーふく」など数多くのアニソンを手掛けた畑亜貴さんの手で全曲が作詞されており、「ミューズ自らが手作りしている」と思えるような一貫性を維持しながら、高いクオリティーを保っている。
さらに「成長」という要素も見逃せない。当初はメンバーの9人が均等に合唱するユニゾンだったが、キャラクターの設定が固まるにつれて、ミニユニットごとの曲やダンスも出るようになった。そしてテレビアニメが放送されると、ショートストーリーやPVでは拾いきれなかった「日常のありのままの動くヒロインたち」が描かれるようになり、それを受けて、9人の内面的な変化を生かすような楽曲も作られ、深みが出るようになった。
古参のファンは、彼女らが育つ過程を見守る喜びがあり、新規のファンは、ブラッシュアップされた歌とダンスが楽しめる。見た目は仮想の美少女キャラクターだけに、現実のアイドルとは一見異なるようだが、目の肥えたコアファンを引きつけ、間口の広いテレビなどのメディアを足がかりにして新規ファンを取り込む手法は、現実アイドルの人気拡大と似た流れだ。新機軸のアイドルプロジェクトが、6月の劇場アニメ公開以降も、どのような展開、成長を見せるのか注目したい。(多根清史/アニメ批評家)
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