ロックバンド「RADWIMPS」の野田洋次郎さんの初主演映画「トイレのピエタ」(松永大司監督)が6日に公開される。手塚治虫さんが死の直前まで書いていたという病床日記の最後のページに残されていたアイデアに着想を得たオリジナル作。突然余命3カ月を宣告された青年が、一人の女子高生と出会い、交流を深めていく姿を描いている。演技初挑戦の野田さんと、1年にわたるオーディションの末にヒロインに選ばれた杉咲花さんが、生きる喜びやつらさ、切なさなどを体当たりで表現している。ドキュメンタリー映画「ピュ~ぴる」の松永監督の初の長編映画でもある。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
画家への夢をあきらめ窓拭きのアルバイトをして暮らす園田宏(野田さん)は、美大時代の恋人・さつき(市川沙椰さん)と再会し、彼女の個展に誘われるが、絵など見る気にもなれないでいた。ある日、突然倒れ病院へ運ばれた宏は、精密検査の結果を聞くのに家族を呼ばなければならなかったが、郷里の両親に連絡する気になれず、偶然知り合った女子高生の真衣(杉咲さん)に妹役を演じてもらう。そこで余命3カ月を告げられた宏は、漠然とした恐怖に支配されながらも入院生活を送ることになる……というストーリー。
松永監督が10年ほど前に出会った手塚さんの日記からアイデアを得たという今作は、透明感のある世界観ながらひりひりとした焦燥感が印象的だ。余命少ない主人公という設定の物語は数多くあれど、今作だから出演したという初挑戦とは思えない野田さん演技や、魂の叫びが聞こえてきそうな花咲さんの演技からは生々しさが感じられる。いなくなる人と残される人が真剣にぶつかり合う姿に、絶望と執着の間に見える小さな光が自然体で表現されていて胸に突き刺さる。生きていると楽しさもあるが、それを上回るぐらいのつらさも多く、生きる意味を感じられないと日々嘆いてしまうこともあるだろう。そんなふうに人の心に一石を投じる作品だ。新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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