マツモトクラブ:R-1でブレークも悩みは苦手のひな壇トーク 

インタビューに答えるマツモトクラブさん
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インタビューに答えるマツモトクラブさん

 最近テレビやCMでちょくちょく見かけるけれど、実はあんまりよく知らない……。そんな、今さら聞けない“ネクストブレーク芸人”の基礎知識を、本人の言葉を交えて紹介。今回はピン芸人のマツモトクラブさんをピックアップする。ピン芸人日本一を決める「R-1ぐらんぷり2015」(関西テレビ・フジテレビ系)で準優勝し一気に注目を集めた。元は俳優として劇団に所属していたという経歴の持ち主で、「YouTuber(ユーチューバー)みたいなことをしていた」のが、お笑い芸人への転身のきっかけだったという。マツモトクラブさんのブレークの自覚、今後の活動などについて聞いた。

ウナギノボリ

 ◇マツモトクラブとは?

 「SMA NEET Project」に所属しているピン芸人で、1976年6月8日生まれの東京都出身のA型。劇団「シェイクスピア・シアター」に十数年間所属して俳優として舞台に立っていたが、金銭的に難しくなったために退団。2011年にお笑い芸人に転身し、2月に開催されたR-1ぐらんぷりの敗者復活ステージで2位となり決勝に出場、最終トーナメントまで勝ち抜く快挙を見せて知名度を上げ、その後はネタ見せ番組や所属事務所のライブなどで活躍。初DVD「ヒゲメガネthank you!」(コンテンツリーグ、税抜き3000円)を発売した。

 お笑い芸人になったきっかけは、俳優をやめて約1年間、一般職に就いた際に、動画機能や録音機能のあるiPhone(アイフォーン)を買ったことをきっかけに始めた動画配信だという。作品は「たぶん60個くらい」というが、芸人になってからは削除しているといい、今はあまり残っていないという。「(動画を)見た劇団時代の後輩が『そういうことをやっているなら、お笑い芸人になったら』と勧めてくれた」と振り返る。芸名は「今で言うユーチューバーみたいなことをやっていた時のアカウント名『マツモトクラブ』でいこうと、何にも考えずに決めた」という。

 ◇お笑いへのこだわり ネタの作り方は…?

 ネタは、事前にせりふや効果音などを録音した音源を使って演じる1人コント。「自分の相手役だったり、ナレーションだったり、目の前にいる相手だったり、心の声だったり、いろんなパターンがありますが、基本的に音と(コントを)やっています」という。音を使わないネタにも挑戦したが「やっぱりそのときの反応より、音を使ってやった方が、見ている方の反応というか満足度が明らかにいい。自分はそれしか無理だなと思います」と語る。

 ネタのヒントは、日常の中にあるちょっと面白い部分。「普段は街を『なんか変なことないかな。面白いおじさんとかいないかな』と思いながら歩いている。ケンカみたいなのが起こったら、一応立ち止まってみたり」「誰もがちょっと『分かる分かる!』となるような、日常のあるあるから始められたのは好評価されるネタになる」という。

 芸人になって4年目、辞めようと思ったことは今のところはなく、「劇団の時は言われたことをやっていて、なかなか自分を出せるところがなかった。お笑いをやってみたら、自分が考えたものを自分でやって、全部自分に返ってくるというのが、充実しているし楽しい」という。ピン芸人は「頼れる人がいないし、その部分で怖いですけれど、逆に『やってやろう』という気持ち。『一人なのにコンビより面白い』と言われたい」と、お笑いへの思いは熱い。

 ◇代表ネタ「ストリートミュージシャン」誕生は…

 R-1ぐらんぷりで、はじめに披露した代表ネタ「ストリートミュージシャン」は、ミュージシャンの心の声とせりふに合わせて、なかなか帰ろうとせず、目の前で独占的に歌を聴く迷惑な客を演じるという内容で、実際に新宿駅の南口で歌っていたミュージシャンとその観客を見て思いついた。

 「目の前で、『そんな近くに立つか?』という異様な距離でミュージシャンの前に立っていた1人の観客から生まれたネタです。僕が演じる場合は、曲にちょっと乗ったりしていますけれど、(モデルになった)その人は微動だにしないですね。でも好きなんだろうなというオーラは出ている」と笑う。一方、ミュージシャンの方は「普通ですが、周りから見たらその光景がちょっとおかしい、近寄りがたい空気があったんで、その人のせいで(他の観客が)寄ってこなかったんだと思います」と振り返る。初のDVD「ヒゲメガネthank you!」では、その後のミュージシャンと客がどうなったのかが分かる続編のコントが収録されている。

 ◇ツイッターでブレーク実感

 「R-1ぐらんぷり2015」で、初めて地上波のテレビ番組でネタを披露し、ブレーク。「結構反響が大きくて、(番組放送前、ツイッターのフォロワーが)600人くらいだったのが、放送後は3000人になっていました。今(5月現在)は9000人です」といい、「『あれ、ちょっとこれ売れちゃうんじゃないの?』と思った」と喜んだ。しかし「そう思った割には、今のところあまり変わらないですが」と、生活が激変することはなかったという。

 お笑いネタ見せ番組やバラエティー番組など、テレビの出演も増え、ライブに来るファンは女性が多いというが、道でよく声をかけてくるファンは「歌舞伎町とか、池袋とかにいるキャッチのお兄さん」だという。「テレビに出させてもらったときに声をかけられると話したら、次に行ったときも、その番組オンエアの反応がある。逐一お笑い番組をチェックしてるから、キャッチのお兄さんはお笑い好きなんですよ」と分析してみせる。

 ◇最近の悩み、今後の目標は?

 ライバルと思う存在は特にいないといい「面白いなと思う人は周りにもテレビにもいる。同じ事務所の『モダンタイムス』とか、『アンドレ』とか。いろいろ危ない、ギリギリのネタが好き」とマイペース。目標についても「好きな人はいっぱいですが、この人みたいになりたいとは思わない、なれるわけがない。自分なりの何かを見つけられたら」と語る。

 最近の悩みは意外にも、ブレークした結果、バラエティー番組や取材で「ちょいちょいしゃべらなきゃいけない状況」「お笑い芸人というくくりでしゃべっている以上、何か面白いことを言わなきゃいけないと思うけれど、なかなか自分にはできないような気がする」と、自身の芸人としてのあり方に戸惑ったという。「ひな壇でしゃべるとか、自分にはできないと思うが、やらなきゃいけないと思っていたんですが、周りから無理しないでいいと言われた。急に変われないなと思う」と、ネタ見せ中心の活動を考えている様子だ。

 今後、テレビでは「1人ではなく何人か、できれば、今売れてないけれど面白いおじさんいっぱいで、コント番組とかやりたい」というマツモトクラブさん。将来的には、俳優出身らしく「映画監督はやりたい。一番遠い夢ではあるんですが、最終目標としては、そこに行きたいですね。今やっているネタみたいなのをもっと長く、ちゃんとしたお話にしてやりたいですね」と夢を語った。

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