ジョス・ウェドン監督:「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」 原作と異なるウルトロンにワクワク

映画「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」のジョス・ウェドン監督
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映画「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」のジョス・ウェドン監督

 アイアンマンやキャプテン・アメリカ、マイティ・ソーらマーベルコミックのヒーローたちの活躍を描く人気シリーズ第2弾「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」が、4日に公開される。前作に引き続きジョス・ウェドン監督自らが脚本を書き、メガホンをとった。作品はすでに世界興行収入1600億円突破という大ヒットを記録。日本公開を前に来日したウェドン監督に話を聞いた。

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 ◇原作ファンの反応は「気にしなかった」

 映画は、アイアンマンこと実業家のトニー・スターク(ロバート・ダウニーJr.さん)が開発した人工知能ウルトロン(声:ジェームズ・スペイダーさん)が暴走し、その脅威から人類を守るためにアベンジャーズが立ち上がるというストーリー。ウルトロンに加え、特殊能力を持つスカーレット・ウィッチことワンダ(エリザベス・オルセンさん)と、クイックシルバーことピエトロ(アーロン・テイラー・ジョンソンさん)のマキシモフ姉弟が新たに登場する。

 彼らは、原作のキャラクター設定から大幅な改変がなされているが、そこは、自身もマーベルコミックの大ファンであるウェドン監督。原作ファンが「映画とコミックは別物。原作のエッセンスをとらえ、スピリッツこそ外さなければ、何らかの変化を加えることは、ビジュアル的にも物語的にも必要だったと理解してくれるはず」と、当初より原作ファンの反応は「気にしなかった」と話す。そして監督自身、ウルトロンに関しては「見た目からして原作とは違う。作りながら面白いウルトロン像ができるんじゃないかと一番ワクワクしたところだ」と映画ならではのアプローチを試みたことを打ち明ける。

 スカーレット・ウィッチとクイックシルバーを登場させたのは、監督自身が「大好きなキャラクター」だからだ。それに加え、彼らが持つ特殊能力が、アベンジャーズの他のメンバーとは「タイプが違うため、ビジュアル的に非常に面白い」こと、2人を加えることで、「『アベンジャーズとは何たるか』を客観的に見直すことができると思ったから」と説明する。

 ただ、脚本を書いている段階でクイックシルバーが、同じマーベルコミックを映画化した「X-MEN:フューチャー&パスト」(2014年)に出てくることを知ったときは「ちょっとやられたな、というか、取られたなという感はあった(笑い)」と告白する。しかし自分たちなりのクイックシルバーを作ろうと前向きに考え、その仕上がりに、「僕がやりたかったクイックシルバーを十分描き切れたと思う。(『X-MEN』とは)違うスタイルとして楽しんでほしい」と胸を張った。

 ◇後にも先にもキャラクター

 アクションシーン満載の今作だが、その中で、アベンジャーズ・タワーでメンバーが一堂に会する場面と、ホークアイことクリント・バートン(ジェレミー・レナーさん)の“隠れ家”にメンバーが身を寄せる場面は、今作に独特の効果をもたらしている。「映画全体のメリハリとして、観客にほっと一息つかせるシーンをはさみ込むことはとても重要だ。映画では、なんといってもキャラクターが大事。ああいうちょっとしたシーンだからこそ、キャラクターのより深い部分が垣間見えるんだ」とその効果を語る。

 さらにその二つのシーンは、「ビジュアル的にもストーリー展開においても、意図的に対照的に描いてる」といい、「アベンジャーズ・タワーではパーティーこそしているが、メンバー同士の競争心が強くてガードが堅い。都会的でとても冷たい感じがする。一方の、ホークの田舎の隠れ家の場面になると、みんなが普段の生活に戻り、心を開いて話し合ったりしている。そういうところからもキャラクターの内面が見えてくる」と解説した。

 ◇「家族」をテーマの一つに

 今作の「一つの大きなテーマ」として、「何かを創造するとき、そこには責任が伴う」ことを挙げる。そのことが、「家族」というものと「密接に絡んでくる」。「アベンジャーズ自体がけんかばかりしている家族みたいな存在。また、ウルトロンは生後間もない赤ちゃんからティーンエイジャーになり、さらに年を取り……という人間の成長をなぞっているようなキャラクター。そして、ホークアイの、双子への、特にワンダに対する接し方は父性を感じさせる。そういう家族というテーマを映画の1本の軸として描きたいという思いは最初からあった」と明かす。

 前作に続いて今作の監督、そしてテレビシリーズ「エージェント・オブ・シールド」(13年~)では企画から製作、脚本、さらに監督を務めるなど、「アベンジャーズ・シネマティック・ユニバース」に深く関わってきたウェドン監督。しかし、今作を最後にその立場から退くという。次はDCコミック原作の映画にくら替えか?という声も聞こえてくる。それについては、「あくまでもうわさ。それはそれで面白そうだけど」と一笑に付しながら、「今はとにかくメジャースタジオの作品ではなく、自分で脚本を書き、自分だけのための小さい映画を作りたいと」と大作から距離を置く構えを見せる。

 だからなのか、最近のスーパーヒーローもののアクションシーンが作品を追うごとにエスカレートしていることに危機感を抱かないかという質問に、「僕がこの先アクション大作を作り出していくという計画はないので、どうこう言うつもりはない(笑い)。そこまで将来を危惧することはない」と応じる。「ただ」と言葉をつなぎ、「どれだけアクションが大掛かりで、見た目が素晴らしく、アクションシーンがたくさんあろうと、中心に共感できる魅力的なキャラクターがいないと映画的にはつまらないものになってしまう」と話し、その上で、「そこが僕が一番気にするところであり、一番力を入れたところだ」と自身の作品を振り返った。映画は7月4日から全国で公開。

 <プロフィル>

 1964年、米ニューヨーク州出身。テレビシリーズ「バフィー~恋する十字架~」(97~2003年)で企画、製作総指揮、監督を兼任。「セレニティー」(05年、日本未公開)で映画監督デビュー。「アベンジャーズ」(12年)の原案・脚本・監督を担当。脚本を担当した作品に「トイ・ストーリー」(95年)、「エイリアン4」(97年)などがある。ジブリ作品好きとして知られるが、ほかの好きな日本アニメ作品に「パプリカ」「攻殻機動隊」を挙げた。

 (インタビュー・文・撮影:りんたいこ)

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