名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
“異世界もの”がブームのライトノベルに異変が起きている。ジャンルの細分化が進み、一見ニッチな作品が誕生しているのだ。その代表格が異世界と“食”が融合した“異世界グルメ”だ。「異世界食堂」(ヒーロー文庫)は、ラノベ定番の冒険や恋愛などの要素が薄いにもかかわらず、1巻が約8万部を売り上げるなど人気を集めている。ラノベは、珍奇なジャンルが人気を集めることもあるものの、異世界とグルメの融合とはいささか奇抜にも見える。盛り上がりつつある異世界グルメを探った。
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ラノベ業界は小さなブームが生まれては消え……というサイクルを繰り返している。そんな中でも、ジャンルの細分化が進む背景には、“なろう系”がブームとなっていることがある。なろう系とは、小説投稿サイト「小説家になろう」の投稿作品などネット小説から生まれた作品のことで、そのなろう系の人気の中心が異世界ものだ。「Re:ゼロから始める異世界生活」(MF文庫J)や「この素晴らしい世界に祝福を!」(角川スニーカー文庫)など、なろう系の異世界ものからはアニメ化される作品も出ており、今やラノベの主流にとってかわる勢いだ。
異世界グルメ作品も「小説家になろう」から誕生した。登場し始めたのは2年ほど前で、1年半ほど前から人気ジャンルになった。人気の「異世界食堂」は、人間界の商店街の一角にある洋食屋「ねこや」が、毎週土曜日になると異世界とつながり、エルフなど異世界の住人がメンチカツやオムライス、カレーライスなどの料理を楽しむ姿が描かれている。異世界の住人は、おいしそうに料理を食べ、料理をきっかけに元気になったり、人生を見つめ直す。異世界がテーマではあるが、料理を軸とした人情もののような展開だ。
このほか、「異世界居酒屋『のぶ』」(宝島社)、異世界の架空の食材で架空の料理を作る「異世界料理道」(HJ NOVELS)、マンガではあるが「ダンジョン飯」(KADOKAWA)など、異世界グルメものが続々と刊行されている。そんな異世界グルメの魅力について、「異世界食堂」の編集を担当した主婦の友社の高原秀樹さんは「身近にある料理が、異世界の住人にとっては未知の料理に見え、料理の魅力を新たな目線で発見する。平凡な主人公が異世界では強くなって活躍する異世界ものと構造は似ている」と分析する。
一方、異世界グルメ作品が次々と誕生する背景について、マンガやラノベの専門書店の関係者は「ラノベは一つのジャンルがブームになると、似たような作品が続々と刊行されたり、ほかのジャンルとミックスしたような作品が生まれる傾向がある」と指摘する。実際、高原さんは異世界グルメは「ラノベの異世界ブームとグルメマンガブームの邂逅(かいこう)なのかもしれない」と語っており、異世界ものがグルメマンガの要素を取り入れることで新たな展開を模索したということなのだろう。
ジャンルの細分化とクロオーバーの果てに生まれたような異世界グルメ作品だが、思わぬ効果があるという。女性層の支持だ。ラノベのファンは男性が中心だが、高原さんによると、異世界グルメは女性読者が比較的多く、3割程度に及ぶという。また、30代以上の普段はラノベを読まない層にも読まれているという。高原さんは「身近な料理がテーマになっていることもあり、普段はラノベを読まないような層にも受け入れられやすい。グルメマンガのファンも手にとっている」と思わぬファン層の拡大に期待している。
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