小出恵介さん、木村文乃さんが出演する映画「十字架」(五十嵐匠監督)が6日に公開される。重松清さんが2010年吉川英治文学賞を受賞した同名小説を、「地雷を踏んだらサヨウナラ」(1999年)や「長州ファイブ」(2006年)などの作品で知られる五十嵐監督が映画化した。同級生がいじめを苦に自殺したことで、重い十字架を背負うことになった主人公たちの、20年にわたる心の軌跡を描いている。
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中学2年生の秋、“フジシュン”とみんなから呼ばれていた藤井俊介(小柴亮太さん)が、いじめを苦に自殺した。遺書には、いじめの当事者への叫びとともに、「親友になってくれてありがとう」と、クラスメートの真田祐(ユウ:小出さん)に宛てた感謝の言葉と、俊介が思いを寄せる別のクラスの女生徒、中川小百合(サユ:木村さん)の誕生日を祝福する言葉があった。フジシュンのことを、幼なじみでこそあれ親友とは思っていなかったユウは戸惑い、サユもまた、自分の誕生日がフジシュンの命日となってしまったことにショックを受ける。以来2人は、重い十字架を背負って生きることになる……というストーリー。
五十嵐監督が、企画を映画会社やテレビ局、制作会社に持ち込んだとき、いじめの映画という理由から、どこも関わりたがらなかったという。それでも一人で脚本を書き続け、やがて、今作のプロデューサーや出演者らが五十嵐監督の熱意に賛同。茨城県筑西市の協力も得られ、製作に漕ぎつけられた。確かに、いじめのシーンは、目をそむけたくなるほどの痛みを伴う。周囲の生徒たちの反応には薄ら寒さを覚え、フジシュンの死後、責任逃れと的外れな謝罪の言葉を繰り返す学校側の対応にはあきれるばかりだ。「親友」と名指しされたことで、いじめた当事者より重い十字架を背負うことになってしまったユウは、気の毒というほかない。しかし、一歩引いてみると、ここに描かれていることは、過ちを犯してしまった人間、あるいは、過ちに限らず、“荷物”を背負った人間すべてに当てはまることだ。決して明るい話ではない。しかし、真摯(しんし)に向き合った先には、希望の光が見える。
観賞してしばらくたつが、真っ先に思い浮かぶのが、通学路の抜けるような青空、フジシュンの家の庭に植えられた柿の木の神秘的な輝きであることが、今作が、いじめを描いただけの作品ではなく、他者への許し、さらに人間のしなやかな強さにまで言及した作品であることの証しなのだと思う。ほかに、フジシュンの両親役で永瀬正敏さんと富田靖子さんらが出演。6日から有楽町スバル座(東京都千代田区)ほかで公開。 (りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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