「このマンガがすごい!」(宝島社)に3年連続でランクインした三部けいさんのヒットマンガを実写化した「僕だけがいない街」(平川雄一朗監督)が19日から公開される。母親を殺された主人公が、時間が巻き戻る“リバイバル”という現象を利用して過去に戻り、事件の真相を探るミステリー作だ。「カイジ 人生逆転ゲーム」(2009年)などマンガ原作の実写化作品に出演している藤原竜也さんと、「ビリギャル」(15年)の有村架純さんが初共演した。
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売れないマンガ家の悟(藤原さん)は、ピザ屋でアルバイトをしている。ある日、配達の途中で悪いことが起きる予感がした悟は、未然に防ぐまで時間が巻き戻る“リバイバル現象”を活用して、事故を未然に防ぐことができたが、自身はけがをしてしまう。病室で目覚めると、バイト仲間の愛梨(有村さん)が心配そうに付き添っていた。看病のために悟の家へやって来た母親の佐知子(石田ゆり子さん)と過ごした時間もつかの間、突然母親を殺された悟は、犯人として指名手配されてしまう……という展開。
母親を何者かに殺された青年・悟が、大人の意識のまま、小学生時代に戻って事件の真相に迫ろうとする物語。二つの時代を行き来する悟が、愛する人を守ろうと必死になる姿が浮かび上がってくる。長い連載のマンガを映画化によって縮めているので、展開は少々急ぎ過ぎる感があるが、子役の演技が印象に残る。10歳の悟を演じるのは、オーディションで選ばれ、これが本格的な映画デビューとなった中川翼君。芝居がうまい藤原さんの子ども時代を演じるのは難しかったと思うが、大人の悟の雰囲気をそのまま内包しながら、表情や間のとり方まで似せて熱演している。子ども時代の悟が、同級生の女子を守ろうとする勇敢な姿は感動的だ。友達の助けを借りて少年探偵団さながら、誘拐事件の真犯人に迫ろうとするところも愛らしい。
悟に守られる女子を演じるのは、NHK連続テレビ小説「あさが来た」などで活躍する鈴木梨央さん。母親から虐待される難しい役どころを、自分のものにしている。虐待する母親を熱演する安藤玉恵さんの芝居にも目を見張る。「児童の虐待等の防止に関する法律」が施行されたのは、2000年。悟の子ども時代(1988年)の12年後のことだ。子ども同士で守り合うしかなかった姿に、胸が張り裂けそうになる。美しい冬の景色も手伝って、小学生時代のパートをずっと見ていたい気分だった。「ツナグ」(12年)などの平川監督が手がけた。19日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。最近一番ドスンときた映画は、ドキュメンタリー作「大地を受け継ぐ」。
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