藤原竜也:映画「僕だけがいない街」で主演 “リバイバル”で戻るなら「スポーツ選手になりたい」

「僕だけがいない街」について語った藤原竜也さん
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「僕だけがいない街」について語った藤原竜也さん

 俳優の藤原竜也さんの主演映画「僕だけがいない街」(平川雄一朗監督)が19日に公開された。「僕だけがいない街」は、2012年6月から今年3月まで「ヤングエース」(KADOKAWA)で連載されていた三部けいさんの人気マンガで、テレビアニメ化もされている。母が殺された事件の容疑者となった主人公の青年・藤沼悟が自身の容疑を晴らすため、“リバイバル”と呼ばれる不思議な現象で過去に戻り、小学生時代に起きた連続誘拐事件の謎に挑む。主人公・悟を演じる藤原竜也さんに、原作の印象や共演者、撮影について話を聞いた。

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 ◇原作を読み「知らないと損するなと思った」

 今作の出演オファーを受けたときのことを、「ちょっと面白い話があって……」と藤原さんは切り出し、「会社の人たちと食事をしていたときに『映画の話があります』と言われて、原作ものが続いていたから『そろそろ違うかな』と聞いてみたら、『原作ものです』、と(笑い)」と言われたという。続けて、「人を操ったりするような特別な能力を持った役が続いていたので、そうではないかを確認すると、『時間が巻き戻る現象に巻込まれます』、と」と言って笑い、「原作をいただいて読み始めたら、こういう面白いものがあったのかと。やっぱり知らないと損するなと思った」としみじみと語る。

 藤原さんは、原作を読み、「ストーリーが緻密に計算されていて、純粋に面白かった」という感想を持ち、「(主人公が)思考は今のまま子供時代に戻った描写を読んでいると、何か自分の過去が投影されるというか、すごく寒い雪が降っている校舎とかクラスメートの何気ない会話に、すごく温かさを感じて感動してしまいました」と原作にすっかりはまった様子。

 実写化するにあたって、「(当時は)原作も完結していない中で、どういうところに着地点を設けるのかという難しさもあると思った」と感じつつも、「平川監督や(有村)架純ちゃんとも初めてで、どういうふうにやるのだろう、面白くなればいいと思いながら撮影に入りました」と当時の心境を明かす。

 ◇初共演の有村架純に「引っ張っていってもらった」

 期待に胸をふくらませて臨んだ撮影は、「監督から細かい演出はありましたが、本当に自由にやらせてもらった」と振り返り、「平川監督は妥協せずに細かいところまで信念を曲げずにワンカット、ワンカットを撮っていて、なおかつ同じシーンでも、オーケーだけど別のニュアンスのバージョンも撮るという感じでした」と語る。

 片桐愛梨役を演じる有村さんについて、「すごく自然にいてくれるし、いさせてくれるから楽に楽しくやれて、すごくすてきだなと思った」と印象を語り、「現場で僕がくだらない話をしていても、(有村さんが)『本番なので行きましょう』と連れって行ってくれたり、役柄同様、架純ちゃんに引っ張っていってもらった感じです」と笑顔を見せる。

 アルバイトをして生計を立てている29歳の売れないマンガ家という役を演じているが、「僕も経験あって、幼いときにデパートの屋上で戦隊ものとかヒーローショーを見ましたが、悟の場合は、そこから得た正義や勇気などずっと抱えていながら、一歩踏み出すきっかけもなく淡々と過ごしている」と悟の心情を説明し、「事件が起きてリバイバルで行ったり来たりしながら……という、一つの成長物語。順を追って撮影していくうちに、自然に入り込めた役ではありました」と自然体で演じられたという。

 物語のカギを握るリバイバルシーンの撮影では「実際にリバイバルが(映像として)どうなるのだろうというような話を現場でしていましたが、完成した映像を見ると、こうなるのか、と」と納得の表情を浮かべる藤原さん。「マンガでは、“飛躍”というのは気にならないし成立できてしまうことはあるけれど、実写ではその部分を埋めないといけない」と語り、「もちろん、原作がすべて“答え”でヒントであり、そこから多くを取り入れることは確かにありますが、現場では“行間を埋める”といった作業が難しかったのを覚えています」と振り返る。

 ◇中川翼と鈴木梨央「子どもたちが“主役”のような映画」

 完成した映像を見て、藤原さんは「ある種、子どもたちが“主役”のような映画」とたたえ、「(鈴木)梨央ちゃんが演じる雛月の抱えている問題とか、(物語の舞台である)当時も現代もたくさんのそういう子たちがいて、そういう目線で見るとすごく切なくなる」と神妙な表情で語り、「(撮影中は)原作が連載中で、平川監督がうまくまとめてくださった」と感動したことを明かす。

 リバイバルに巻き込まれた幼少時代の悟を演じる子役の中川翼さんと、雛月加代を演じる鈴木梨央さんの演技を見て、「11歳ぐらいなのに、子供って本当にすごい」と藤原さんは驚く。そして、「翼くんとかは泣きながら演技指導を受けていたり、汗だくで監督の要求に食らいついている姿を見ていましたから、この年でこれだけもまれていれば、いい財産になるだろうな、と」と思いやり、「完成したものを見ても、彼らの姿勢が作品に温かみをプラスしてくれたのかなと思いました」と実感を込める。

 そんな懸命に頑張る中川さんだが、「僕がビーチサンダルに短パンで現場に入っていたら、ある日、翼くんが短パンにビーサンで来たことがあって……」と藤原さんは切り出し、「どうしてか聞いたら『藤原さんを尊敬してまねしてみました』と(笑い)。ほかの現場ではやめたほうがいいとは言っておきましたが、そういうピュアなことをしてくれて、すごく可愛かった」と子供らしい一面を明かす。

 ◇謎解きを楽しみながら見てほしい

 今作は主人公の子供時代も描かれているが、「悟が幼い頃に起きた小学生の連続誘拐事件が描かれていくけれど、僕も埼玉の田舎町でしたから、学校から『集団で帰りなさい』のようなプリントが回って来たりして、僕たちも悟たちみたいに『犯人を探しにいこう!』みたいなことをやっていました」と言って笑う。

 実際に“リバイバル”が起きたら、いつに戻りたいか……。藤原さんは「特に戻りたいとは思わないけれど……と前置きした上で、「14歳で演劇の世界に入って、それが自分の人生においてプラスだったのかマイナスだったのか確かめるために戻ってみるくらいかな。違う道もあったかもしれない」と語る。“違う道”については「本当に西武ライオンズか浦和レッズの選手になりたかった」と子供の頃のスポーツ選手の夢を明かし、「今もスポーツを見るのがすごく大好きで、スポーツ選手は究極の趣味の延長という気がしますし、楽しいことを仕事にしていてうらやましい」と理由を説明。そして、「芝居をしていても“楽しい”とはいえませんから、スポーツ選手になりたい(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに語る。

 普段はあまりマンガを読まないという藤原さんは「(歌舞伎俳優の)中村勘九郎さんがマンガ好きで、たくさん読んでいて『これがいい、あれがいい』とアドバイスをくれるくらい(笑い)」と話すも、「手に取ったものが印象に残った作品で、自分がやるかどうかは分からないけれど、そういうものが実写になる面白さというのもありますが、本当に大好きなマンガは実写化してほしくないという思いは僕にもあります」と原作ファンの心情に理解を示す。

 そんな藤原さんが、最近読んだマンガの中でのお気に入りは「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」だという。「僕は秩父出身ですが、遅ればせながらアニメを見て本(コミックス)も読みました」と切り出し、「最初は“めんま”なんて変な名前と思っていましたが、気付いたら声を出して泣いていました……」と感動したことを打ち明ける。

 今作の見どころを、「すてきな(悟の母親役を演じる石田)ゆり子さんをぜひ見てほしい」と藤原さんは切り出し、「(石田さんに)次は恋人役をとお願いしました」と言って笑う。そして、「一緒に謎解きを楽しみながら見てもらえれば」とメッセージを送った。映画は全国で公開中。

 <プロフィル>

 1982年生まれ、埼玉県出身。97年に蜷川幸雄さん演出の舞台「身毒丸」のロンドン公演でデビュー。2000年には「バトル・ロワイアル」で映画初主演を飾る。舞台、映画、ドラマ、CMなど幅広く活躍。主な出演作に「DEATH NOTE デスノート」シリーズ(06年)、「カイジ」シリーズ(09、11年)、「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」(10年)、「藁の楯 わらのたて」(13年)、「神様のカルテ2」(14年)、「サンブンノイチ」(14年)がある。「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」(14年)、「映画 ST赤と白の捜査ファイル」(15年)などがある。

 (インタビュー・文:遠藤政樹)

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