名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
三部けいさんの人気マンガが原作で、藤原竜也さんの主演で実写化された映画「僕だけがいない街」(平川雄一朗監督)が全国で公開中だ。原作は「ヤングエース」(KADOKAWA)で連載されていたマンガで、4日に最終回を迎えた。現在コミックスが7巻まで発刊され、テレビアニメ化もされている。母が殺された事件の容疑者となった主人公の青年・藤沼悟が容疑を晴らすため、“リバイバル”と呼ばれる不思議な現象で過去に戻り、小学生時代に起きた連続誘拐事件の謎などに挑む。今作のメガホンをとった平川監督に、実写化の経緯やキャスティング、映画に込めた思いを聞いた。
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原作を読んだとき平川監督は、「面白いと感じ、映画にしなければと思った」と感じたと明かし、「そう思っていたところにプロデューサーから電話が来て、素晴らしいタイミングだった」と言って笑う。実写映画化はコミックス第1巻が発売された頃に動きだし、「開発を進めると同時に、三部さんのほうから4巻以降のプロットのようなものをいただいた」といい、「そのメモをもらう前は僕ら映画製作スタッフも、『僕だけがいない街』というタイトルの意味やオチも予想していたのですが、映画としてたくさんの人に見てもらうとすると、誰しもが感じられるというか共通する『僕だけがいない街』にしたいという思いが、そのときにはすでにあった」と打ち明ける。
そして、原作の流れが把握できるメモが届くと、平川監督は「なるほど原作はこうなるのかと思いつつ、映画チームの『僕だけがいない街』をこうしたいというところを提示した」と語り、「(映画の方向性を)三部さんも了承してくださったし、編集部の方々が心が広いというか懐が深く温かかった(笑い)。そういった協力があって映画ができたと思います」と感謝する。
原作に衝撃を受けたと話す平川監督は、「原作はいいことを言っている」と笑顔でうなずき、「日常生活で忘れてしまいがちな大切なことを、原作ではポイント、ポイントで言ってくれていて、読んだときにそうだなと思った。大切なことをリバイバルすることで見ている人にも感じさせてくれる原作だったので、映画でもリバイバルしたとき、そこにいる人たちがどういう事情、気持ちで生きているのかを伝わりやすくすることで、見ている人たちに共感してもらえればいいのでは」と方向性が見えたことを説明する。
売れないマンガ家で、ピザ屋のアルバイトをして暮らす29歳の青年・藤沼悟を、藤原さんが演じている。平川監督は藤原さんを、「すごく力がある役者だと、一緒にやって改めて認識したというか思い知らされた」と演技力に脱帽し、「本人は自然な感じでやっているように見えるけれど実際はすごく一生懸命で、ひょうひょうとしている割に芝居になるときちんとやれるというところが、カッコいい」とたたえる。
悟のアルバイト仲間の片桐愛梨を有村架純さんが演じているが、当初から「イメージのキャストとして(藤原さんと有村さんの)2人はすでにいた」といい、「悟は内向的で自分の殻を破れず葛藤している男の子だから、(藤原さんに)悟になってもらうために、『表現が大きい演技ではなく抑制してください』という話はした」と基本となる演出指示を出したという。続けて、「愛梨は原作よりも年齢の設定が上がっている分、原作ほど子供ではない大人の愛梨だけれど、悟よりも頑張っていこう、前を向いていこうという女の子を演じることは、彼女(有村さん)も苦労していた」と振り返る。
そんな有村さんには、「愛梨に近づくために大きな表現、快活な女の子を演じることに苦労していたから、振りを付けたりした」というが、「愛梨という人物像を見たときに、彼女が頑張っている部分が僕の中ではしっくりきたし、よかったと思っている」と納得の表情を見せる
物語の重要人物の一人で、悟の少年時代の担任教師・八代学を演じるのは及川光博さん。「登場人物が限られているし、みんなは犯人が誰というサスペンスを楽しみたいのだろうけど、原作もあるし、(映画の)ポスターを見ただけでもある程度、犯人は想像できてしまう(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに話す。しかし、「そこではなく、リバイバルという現象の理由、犯人と主人公がどのような接点を迎え、どう葛藤して戦い、どんな結末を迎えるのかというサスペンスは最後まである映画だし、原作も同じだと思う」と力を込める。そして、「犯人捜しもできるようになっていますが、そこが主軸ではない」とテーマ性に踏み込む。
時間が巻き戻る現象・リバイバルに主人公が巻き込まれるというタイプリームものの一種である今作。「タイムリープの表現はどうやるのが一番のいいのかというのが、脚本段階も含め現場と編集で変化していき映画の形になったが、悩んだのはそこだけ」と平川監督は明かし、「29歳の男性が10歳に戻ったら……という男の子を、子供がやらなければならないということが一番難しく、主人公が現代と過去を行ったり来たりしていないといけないから、少年の悟は大変だっただろうと思う」と語る。
少年時代の悟を演じたのは、オーディションで選ばれた中川翼さんだ。「藤原竜也に似た子を探せというオーディションから始まり、当時は経験もないから芝居が未熟で、(雛月加代役の鈴木)梨央ちゃんより1つ下ということもあり、びびっていたし、芝居することも恥ずかしがっていた」と当初の印象を振り返り、「実は声がそんなに出なかったけど、クランクインのときには声が出るようになっていた」と平川監督は驚く。
その理由を、「『何かやったの?』と聞いたら、家でバランスボールに乗って発声の練習をしていた」と聞かされたといい、「自分より1つ上の子供たちが多い中、本当に29歳の悟ではないけれど、リーダーシップを持ってしっかりしていたのは彼の努力の成果」と認める。
これまでも「ROOKIES ルーキーズ」や「JIN-仁-」など、原作ものを手がけてきた平川監督。「原作はよく練られているし、非常にリサーチされているから、よく考えられているものを土台にできると、映画もドラマも、より深くなれるというか深いものを見てくれる人に提供できる」と原作ものを映像化する際の心境を明かす。
一方、「オリジナルものは、(原作ものの)原作者がかけているような時間を、脚本家やプロデューサーなど僕らが(同じだけ)かければ、それはもう深いドラマになると思うし、できると思う」と持論を語り、「表現方法は違いますが、根っこは一緒で創作。それをどのように表現するかという間に僕が今いるだけで、オリジナルものできる能力だったり時間というものが取れれば、ぜひやってみたい」と思いをはせる。
映画製作時は原作が連載中だったが、「原作者の方に本当に助けられた」と平川監督は切り出し、「(ラストは)別でいいということ。だけど基本に流れている、原作が持っている魂は映画の中にももちろんある」と説明する。続けて、「おそらく三部さんは、2時間では原作がそのままできるわけないという割り切りもあったと思うし、『僕だけがいない街』という作品がいろんな形で成長してくれたらいいという優しさがあったのではと思う」と原作者の思いを代弁する。
そして、「苦労は苦労だけど、映画のラストシーンがどうあるべきかというのは、竜也くんと一緒に撮影中まで考えていた」と告白し、「2人で最後まで戦って生まれたラストシーンではないかと思う」と力強い口調で語る。
今作の撮影は時代に合わせた各場所で行われ、「現代は混沌とした人間の欲望とかがあふれているから都会で、原作の舞台でもある千葉・船橋。(少年パートは)原風景が田舎でないといけなくて探しいたら、長野の伊那市というところに原風景が今もあった」と平川監督はロケ地を説明し、特に「1988年が描けるという場所にはこだわった」という。
悟と愛梨の関係についても、「悟が持っていないものを愛梨が持っていて、愛梨にないものを悟が持っているからこそ、お互いが引かれ合う関係にしたかった」と意図を明かし、「露骨にはならない程度でラブストーリーを描けるのでは」と構想したことを語る。さらに、「『僕だけがいない街』というタイトルを考えたときに物語として、タイムリープを勝手にしてしまった者は何かを得たときには何かを失わないと……ということを提示せざるを得なかった」と神妙な面持ちで語る。
リバイバルという現象を平川監督は「なぜリバイバルしたのだろうという理由が僕の中にはある」と言い切り、「それを探してください。『こういうことなのでは』と見た人それぞれが思ってもらえればいい」と心情を明かす。さらに、「結局みんな『ああしておけばよかった』『こうしておけばよかった』という後悔はあるので、やり直せるとなったとき、自分だったらどうするかと思ってもらうだけでもいい」と期待する。
自身にリバイバル現象が起きたら……と聞くと、「今作をやったから、今の考えや頭で小学生に戻ったらどういうふうに本当は見えるのだろうということは、興味を持った」と話すも、「興味でしかなく、やり直したいとは思わない。現状に満足していますし、今を幸せと思わないで生きていてもしょうがない」と力を込める。
見どころについて、「リバイバルというSFの要素がありますが、映画を見て謎を解いてほしいのはもちろん、絶望の中にある希望を見つけてほしいというか、持って帰ってほしいという思いが強い」と話し、「生きていく中で、いろんなことにいろんな意味で疲れている人はいっぱいいると思いますが、この映画を見てかすかな希望だけれども力を持って帰ってほしい」とメッセージを送る。「僕が子供の頃に経験した、映画を見たあとの印象が“前を向ける”ということなので、作り手となった今は、皆さんに持って帰ってほしい」と目を輝かせた。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
1972年生まれ、大分県出身。1972年生まれ、大分県出身。テレビドラマ「ROOKIES ルーキーズ」(TBS系)や「JIN-仁-」(TBS系)シリーズなどを手がけ大ヒットさせる。2007年に「そのときは彼によろしく」で映画監督デビュー。主なドラマ演出作に、「世界の中心で、愛をさけぶ」「白夜行」「とんび」「クロコーチ」「天皇の料理番」「わたしを離さないで」(いずれもTBS系)など。監督作には、「陰日向に咲く」(08年)、「ROOKIES-卒業-」(09年)、「ツナグ」(12年)、「想いのこし」(14年)などがある。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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2024年12月22日 22:00時点
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