西島秀俊:とと姉ちゃんヒロイン父に「一つの理想」見た “余命1週間”に理解も家族への思いは深く…

「とと姉ちゃん」に出演する西島秀俊さん=NHK提供
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「とと姉ちゃん」に出演する西島秀俊さん=NHK提供

 俳優の西島秀俊さんが出演する2016年前期のNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」が4月4日にスタートする。西島さんが演じるのは、女優の高畑充希さん扮(ふん)するヒロイン・小橋常子の父・竹蔵だ。竹蔵の「固定観念とか、『こうでなければならない』という既成の概念から外れて自由に発想していることろ(に引かれた)」といい、「僕もできるだけ自分の固定観念から外れたいとずっと思っていて。父親として、男性として一つの生き方の理想の形でもある」と役に共感を寄せる西島さんに、撮影の日々を振り返ってもらった。

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 ◇“とと”竹蔵は「当時の一般的な父親像とはかけ離れている人物」

 「とと姉ちゃん」は、生活総合誌「暮しの手帖」の創業者である大橋鎭子、花森安治らの軌跡をモチーフとしたドラマ。11歳で父を亡くしたことを境に家族の父代わりとなった小橋常子(高畑さん)が静岡から上京し、女性向けの雑誌を創刊。雑誌は、花山伊佐次(はなやま・いさじ)の助けを借りながら、高度経済成長期を生きる女性の一代記となる……というストーリー。

 竹蔵は、浜松の染物工場で営業部長を務める常子たち三姉妹の父。仕事熱心ではあるが同時に家庭を深く愛し、眠る時間を削ってでも家族との時間を大切にするよき父で、娘たちから「とと」と呼ばれている。西島さんは「竹蔵は当時の一般的な父親像とはかけ離れている人物。男女に分け隔てなく丁寧な言葉で話し、自分が間違っていれば『すまなかった』と素直に謝ることができる人」と役を通じての印象を語る。

 また性格は物静かで、他人ともめるのが嫌いなため、営業先にも好かれているという竹蔵だが、西島さんは「娘たちにもよく突っ込まれて、よく考えると『すまん、すまん』って毎回のように謝っていましたね」と苦笑いする。その上で「でも娘たちには、日々の生活を丁寧に大切にして暮らすということが、人生には一番重要で価値があるということを伝えようとしていた」といい、「今、家族という枠も難しくなってきていると思いますけれど、生きていく上で、時代が変わっても“変わらない一番大切な部分”を子供たちに伝えようとしていたのではないか」と話す。

 ◇紙の人形と会話も…撮影現場では3人の娘に翻弄されっぱなし!

 撮影は今年の1月から2月にかけての、約1カ月間で「子供たちと毎日、控え室にも戻らず、むしろカットがかかってからの方が、ワイワイするくらいの感じで過ごせて、幸せな思い出です」と笑みをこぼす西島さん。主に一緒に過ごしたのは妻・君子役の木村多江さんと、3人の娘の幼少期を演じた内田未来ちゃん(常子役)、須田琥珀ちゃん(鞠子役)、川上凛子ちゃん(美子役)で、西島さんは「とにかく子供たちと本当の家族のような関係になれたらなって思っていたし、実際に初日からみんなでじゃれ合えて。たぶんそれは木村多江さんが、撮影に入る前に家族の形を作ってくださったからで、今、思い出しても顔がほころんじゃうような撮影期間でした」と振り返る。

 また西島さんは、オンオフ通じて3人の娘に翻弄(ほんろう)されっぱなしだったといい、「手で押す相撲がはやったらずっとやっていたり、あとは娘たちに『歌え』って言われたりもしました。凛ちゃんが紙でキャラクターを作ったら、それと会話したり、宿題も見てあげたり……」と苦労話を楽しそうに披露。「ただ女の子って幼くても一人のしっかりとした人間で、コミュニケーション能力は僕よりもずっと高い。せりふもきちんと入っていて、切り替えもできていた。逆に僕の方が(オフの空気を引きずり)吹き出して、NGを出してしまって、その都度、子供たちに怒られているような感じでしたね。かなり飲み込まれて、いい意味で翻弄されつつ、引っ張ってもらいました」とも明かす。

 さらに家族との思い出として、西島さんはちゃぶ台を囲み、みんなで食事をするシーンを挙げると「子供たちが本気で食べている姿は本当にチャーミングでしたね」としみじみ。「僕が『食事の時は本気で食べるので、みんなもお願いします』って言ったら、最初は“えっ?”って顔してたんですけど(笑い)。自分がこの世界に入ることになって家を出る時に、父親から『まず食事をキチンと取れ』って言われていたので、そこに通じるのか通じないのかは分からないですけれど、とにかく小橋家は食事のシーンが多く、家族全員で朝ごはんを食べるのが家訓の一つだったので、印象に残っているシーンですね」と語った。

 ◇「もっともっと子供たちと演技したかった」 竹蔵ロスには否定的

 竹蔵は常子が11歳の時に、結核で死去するため、西島さんは1週目のみの出番になるが、「『とと姉ちゃん』とは、まさに“とと(竹蔵)”から子供たちがバトンを受け取って、それぞれ才能を開花していくストーリーだと僕は思っている。竹蔵はその土壌というか、種が埋められる土のような存在」といい、「本当はもっともっと子供たちと演技がしたいというのが正直なことろ。残念ではありますが、死なないと話が始らない役なので、1週間で死ぬのもいいと思います」と理解を示す。

 長女・常子に「ありきたりの毎日を大切にし、家族のことを頼む」と言い残し、この世を去る竹蔵だが、西島さんは「常子に自分の思いを吐露してしまう一瞬、彼女に託していくシーンというのは本当に印象深くて。互いに見えていない状態だったんですけど、ふすまの向こうからも彼女の演技のすごさを感じることができた」と明かした。また、「最後に桜のシーンがあるんですけど、これも本当に素晴らしくて。娘たちみんなで美術さんのことを手伝って、作り上げたということもあって、本当に美しいシーンになったんじゃないかって思っています」と思い出に浸っていた。

 最近は、人気のドラマの終了や、登場人物の“不在”による視聴者の心情などを「○○ロス」と表現することが多いが、西島さんは「竹蔵は、ないですね」ときっぱりと否定。また西島さんは「家族の雰囲気もよかったですし、現場全体が家族みたいになっていたので、できることなら幽霊でもいいのでまた出してほしいですけれど」と本音をのぞかせる場面もあったが、「本当に丸眼鏡をかけた、ちょっとぼんやりとした人なので、そういう抜けたお父さんを温かく見守ってほしいというのが個人的な思いです」と話していた。

 「とと姉ちゃん」は4月4日~10月1日、NHK総合で月~金曜午前8時ほかで放送。全156回を予定。

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