ドラマからドキュメンタリー、バラエティー、アニメまで、さまざまなジャンルのテレビ番組について、放送前に確認した記者がレビューをつづる「テレビ試写室」。今回は、宮藤官九郎さんが脚本を手がけ、岡田将生さん、松坂桃李さん、柳楽優弥さんの若手人気俳優3人が“ゆとり世代”の若者を演じるドラマ「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系)だ。
ウナギノボリ
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それまでの“詰め込み教育”からの脱却をうたった“ゆとり教育”は、完全週5日制、学習時間の低減など盛り込んで、2002年に施行された学習指導要領の改定によって生まれ、そんなゆとり教育を受けた世代は“ゆとり世代”と呼ばれている。朝ドラ「あまちゃん」などの話題作で知られる宮藤さんと、映画「舞妓Haaaan!!!」や「謝罪の王様」などで宮藤さんとタッグを組んできた水田伸生監督が今回焦点を当てたのは、“ゆとり世代”の中でも今年29歳になる“ゆとり第1世代”だ。
メインキャストの3人が演じるのはそんな“ゆとり第1世代”だが、岡田さんは大企業の営業職から系列の居酒屋に左遷されてしまった坂間正和、松坂さんは生徒から“やまじー”と愛称で呼ばれてしまう真面目な小学校教諭の山路一豊、柳楽さんは風俗店の呼び込みで東大合格を目指して11浪中の道上まりぶと、単純にひとくくりにはできない個性的なキャラクターたちだ。
自分が“ゆとり”であることを否定する正和だが、自分の送別会にウソをついて出席しないなど、そのマイペースっぷりは3人の中で最もステレオタイプな“ゆとり世代”に見えて、40過ぎの記者は正直なところ若干イラッとさせられた。しかし、その後の正和の“ゆとり世代”ならではの怒りの叫びを聞いて少し考えさせられたのだ。のびのび育ってきたように思えた“ゆとり世代”も、就職など人生の転換期にリーマンショックや東日本大震災といった災難に見舞われている。さらにネットでの情報の“拡散”や“炎上”などSNSの功罪を最も肌で感じている世代でもあるだろう。
さらに、正和の後輩で、営業職ながらメールのやり取りだけで取引先に出向こうとしない超合理主義の山岸ひろむ(太賀さん)や、一豊のクラスの教育実習生で、熱を入れてアドバイスすると泣き出してしまう佐倉悦子(吉岡里帆さん)といった、さらに年若い“ゆとり世代”の突飛な行動に、“ゆとり第1世代”の3人がストレスを感じるシーンも描かれる。“ゆとり第1世代”が、社会人としてある程度の経験を積み、後輩に指導もしなければならなくなる“アラサー”になった2016年の今だから描けるドラマなのだ。
視聴者の年代によってさまざまな見方ができるドラマだが、岡田さん、松坂さん、柳楽さん以外のキャスト陣も、中田喜子さん、吉田鋼太郎さんといったベテラン勢から、手塚とおるさん、高橋洋さん、青木さやかさんといった中堅勢、そして安藤サクラさん、島崎遥香さん、矢本悠馬さん、吉岡さん、太賀さんといった若手勢と、幅広い年齢層の実力派で固めているので、安心して楽しめる。個人的には“脱ゆとり世代”とされる今の中高生の感想が聞いてみたい。17日午後10時半放送。
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