亜人:話題の3DCGアニメの制作の裏側 “マンガを動かす”技術

「亜人」の一場面 (C)桜井画門・講談社/亜人管理委員会
1 / 10
「亜人」の一場面 (C)桜井画門・講談社/亜人管理委員会

 桜井画門さんのマンガが原作のアニメ「亜人」。テレビアニメ第1期が2016年1~4月に放送され、3部作の劇場版アニメの第2部「衝突」が公開中だ。「亜人」は3DCGによるダイナミックな映像が見どころの一つになっており、今作を手がけたアニメ制作会社「ポリゴン・ピクチュアズ」の技術が注目を集めている。「亜人」の制作の裏側に迫った。

あなたにオススメ

 ◇“マンガを動かすこと”を目指す

 ポリゴン・ピクチュアズが制作したテレビアニメ「シドニアの騎士」(14、15年放送)のほか、サンジゲンによるテレビアニメ「蒼き鋼のアルペジオ」(13年放送)など最近、国内で3DCGのアニメが増えつつある。3DCGの映像は、ダイナミックな動きを表現できるのが特徴の一つだが、顔がのっぺりしていて、目が極端に大きいようなセル画(2D)のアニメキャラクターを表現するのは難しい。そこで、アニメ業界ではセル画で制作されたアニメのような表現を実現する3DCGの手法「セルルック」に注目が集まっており、最も多く手掛けているのがポリゴン・ピクチュアズだ。

 「亜人」を手がける瀬下寛之総監督と安藤裕章監督は、30年近くCG制作に携わってきたベテランで、2人が携わった「シドニアの騎士」も映像美が話題になった。2人は「CGのいいところも悪いところも知った上で、CGの個性を作品に結びつけていくことを大事にしています」と話す。

 「亜人」は、12年から「good!アフタヌーン」(講談社)で連載中の桜井画門さんのマンガが原作で、アニメで目指したのは「マンガを動かすこと」だ。瀬下総監督と安藤監督は「セル画のキャラクターのような表現を3DCGで再現するムーブメントがあり、とてもリスペクトしていますし、否定しているわけではありません。それとはまた異なり、マンガの世界観を映像としてダイナミックに動かすことを目指した」と説明する。

 ◇CGの“技術論の罠”とは?

 「亜人」は、何度死んでも生き返る新生物・亜人が動き回り、激しいバトルシーンが3DCGで表現されている。CGによるハイクオリティーな映像が注目を集めているが、瀬下総監督は「CGは“技術論の罠(わな)”に陥りやすい。例えば、キャラクターの髪の毛をすごく細かく作っていったからといって、作品が面白くなるわけではない」とも話す。

 CG技術ばかりが注目されているかもしれないが、瀬下総監督と安藤監督は「ストーリー構成を一番大事にしている。もちろん絵に対するこだわりは強いのですが、ストーリーが8割、絵が1割、音が1割というイメージ」と明かす。

 ◇配信で海外展開も

 「亜人」は、テレビアニメや劇場版アニメのほか、有料動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」で世界配信されていることも話題になっている。深夜アニメは1クールに30本以上が放送されているが、海外展開を前提に制作されている作品は決して多くはない。一方で、日本のアニメやマンガは、世界的に注目を集めている。

 深夜アニメは、DVDなどのソフトや原作の売り上げで制作費を回収するのが一般的といわれている。ポリゴン・ピクチュアズの守屋秀樹プロデューサーは「これまで(DVDなど)パッケージを何本売るか、が前提になっていたが、配信でどれだけ稼げるのかという考え方に変わりつつある。日本のセールスだけでなく、世界展開を視野に入れていきたい。車業界もそうですよね」と新たなビジネスモデルの構築も見据えている。

 守屋プロデューサーによると、「亜人」は海外のファンにも好評だといい。瀬下総監督は「普遍性を意識している。一人の少年が数奇な運命の中で成長し、葛藤し、守るべきものを見つけていくというのは、どの文化の方にも伝わるはず」と考えている。

 ◇物語やキャラに集中するための技術革新を目指す

 「亜人」では映像技術が注目を集めているが、瀬下総監督と安藤監督はCGについて「欠点も多い」とも話し、万能なツールと考えているわけではないという。瀬下総監督が「CGならではの違和感を払拭(ふっしょく)して、ストーリーやキャラクターに集中できるための技術革新ができれば」と語るように、まだまだ進化中で、今後の展開も注目される。

 「亜人」は、第1部「衝動」が2015年11月27日に公開され、第2部「衝突」が公開中。第3部「衝戟」が9月23日に公開される。テレビアニメ第1期が16年1~4月に放送され、10月から第2期がスタートする。

写真を見る全 10 枚

アニメ 最新記事