俳優の柳楽優弥さんの主演映画「ディストラクション・ベイビーズ」(真利子哲也監督)が21日に公開された。新鋭・真利子監督の商業映画デビュー作で、「桐島、部活やめるってよ」の喜安浩平さんが真利子監督と共同で脚本を担当。松山市を舞台に、小さな港町で暮らしていた青年が、街で強そうな相手を見つけてはケンカを売り歩き、1人の青年と出会い、2人で通行人に無差別な暴行を加えるという凶行に及んでいく姿を描く。主人公の青年・芦原泰良を演じた柳楽さんに、役作りについてや共演者、映画の魅力などを聞いた。
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柳楽さんが演じる泰良は、日々ケンカに明け暮れる野獣のような青年だが、「役柄について、今まではいろいろ調べたりして、例えば時代ものなら時代背景などを考えて役柄を掘り下げていくということを、やり方の一つとして続けている」と切り出し、「今作では、それよりも現場の空気感を感じることの方が重要で、今までやってきたものを一回、自分の中で捨てて、監督を信じて(役を)築き上げていきました」と今作の役作りのプロセスを明かす。
せりふ自体が少ない役どころだが、「せりふが少ない分、説得力を持たせたかったので、表情やたたずまいなどで、そういうところ(説得力)が出せたらいいとは思っていました」と振り返る。真利子監督からも主人公の内面に関して、「どうしてケンカするのかを聞いても、監督は『“楽しければええけん”なんです』と言うだけで、それを5回ぐらい言われちゃうと、6回目は聞けないです(笑い)」と冗談交じりに話す。
続けて、「今まで見たこともないような立ち上がり方をしてくださいとか、この世のものではないような、といった指示が多くて、逆に自分のイメージ力が問われている」と感じたといい、「(監督が)“挑発”してくるので、ある意味、やりがいがありました」と充実感をにじませる。
数多く存在するケンカシーンでは、すべて違う型が使われているが、「そこはアクション部さんのお陰です」と柳楽さんは感謝しつつ、「いわゆるカッコいいアクションではなく、もっと泥くさいストリートファイトだから、練習しないと自然にならない」と説明する。
続けて、「やればやるだけ自然に見えるので、(練習する)時間をもらえたのはよかったんですが、6~7時間やっていたのできつかった」と語るも、「(腹筋が)シックスパックになり、(体が)軽くなりました」と楽しそうに笑う。
映画の中で柳楽さんは丸刈姿も披露しているが、柳楽さん自身のアイデアだったという。「(物語の中で)時間がたっている場面なのに髪が伸びているわけでもなく、あまり変わり映えがない」と感じたことがきっかけで思い付き、「(泰良が)どこかでカミソリを拾ってそり、それが伸びてミリぐらいというイメージで、僕が3月生まれなのでラッキーナンバーの3にちなみ、3ミリにしました」と髪の長さの経緯を説明。「監督はいいと言ってくれたけど、事務所に怒られるのが怖いと言っていました(笑い)」と舞台裏を明かす。
さらに、「そういう状況でできたのは、監督と役柄を共有できている感じのようなものがあり、心地いいと思いました」と実感を込める。さらに、「オリジナルだからできたことかもしれず、わりと自由にできましたし、そういうものが劇場公開されるというのは、すごく面白いのではないかと思います」と思いをはせる。
北原裕也役の菅田将暉さん、那奈役の小松菜奈さんをはじめ、世代の近いキャストたちとの共演について、「みんな気合バチバチで現場に臨んで来るので、僕としても絶対負けない」と心に誓い、監督からも「食われないでください」と言われたといい、「食われるなら俳優をやめますと乗っちゃいました」と柳楽さんは笑う。そして、「監督はいろいろな情報を知っている中で僕をあえてあおっていたと思いますが、まんまと乗せられてしまったので、意地でも頑張らなければという追い込みもあったかもしれない」と当時の心境を振り返る。
現場では、「役柄を意識してか、みんながある程度の距離を保っていた」と柳楽さんはいい、「将暉くんや小松さん、(村上)虹郎、池松(壮亮)さんなど似た世代が多く出ている中、こういう内容の作品で演技をぶつけ合っているというのも見てもらいたい」と力を込める。「恋愛映画とかできちゃうメンバーなのにもかかわらず、振り切りまくっているという(笑い)。真利子監督、すごい」とたたえる。
ストリートファイトなど過激なシーンも多い今作への出演を、「内容がハードですが、ちょっと熱くなれるというか、遊び心を持って本気で挑めるという作品に毎回出られるわけではないので、今回は存分に楽しませてもらいました」と柳楽さんは笑顔を見せるも、「撮影当時は結構本気でハードだったから、もう一回やれと言われたらできないんじゃないかというぐらい。やっぱりタイミングはあるのかなと思う」としみじみと語る。
見どころについて、「僕らより上の世代は(こういう作風を)見慣れているだろうから、いろいろ思うことがあると思いますが、それがすごく大きくて大事」と切り出し、「逆に下の世代はリアルタイムで劇場で見たことがある人は少ないと思うし、普段とはちょっと違う違和感のようなものを感じるだろうし、見てどう感じてもらえるかが楽しみ」と自信をのぞかせる。
そして、「好き嫌いは分かれるかもしれませんが、暴力肯定というわけではなく、すごく深いメッセージが作品自体にある気がする。公開して多くの人に見てもらい、意見を言ってもらいたいけれど、できれば褒められたい(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに語った。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
1990年3月26日生まれ、東京都出身。映画「誰も知らない」(2004年)に主演し、第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を日本史上最年少で受賞。その後、「星になった少年」(05年)、「シュガー&スパイス~風味絶佳~」(06年)、「包帯クラブ」(07年)、「許されざる者」(13年)などに出演。12年には舞台「海辺のカフカ」、14年には舞台「金閣寺」で主演を務め、活躍の場を広げる。最近の主な出演作に「クローズEXPLODE」(14年)、「闇金ウシジマくんPart2」(14年)、「ピンクとグレー」(16年)、「HK/変態仮面アブノーマル・クライシス」(16年)など。16年6月には出演した「任侠野郎」の公開を控える。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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