俳優の渡辺謙さんが、山田太一さんのオリジナル脚本で今秋に放送されるスペシャルドラマ「五年目のひとり」(テレビ朝日系)で主演を務めることが24日、明らかになった。東日本大震災の5年後を舞台にした、癒えぬ心を抱く孤独な中年男と多感な少女の不思議な出会いがもたらす再生の物語で、渡辺さんは「東日本大震災以来、さまざまな形で支援活動に携わってきたので、このドラマにはある種の責務を感じながら取り組んでいます」と力を込めると、「テーマはハードですが、脚本はとても柔らかく、緩やかな希望や、ささやかな笑顔が描かれ、心温まるラストになっています。災害の多い国に生きる私たち日本人すべてに届くドラマだと思っています」と作品への思いを語った。
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「五年目のひとり」は、2004年の「それからの日々」、05年の「終わりに見た街」、07年の「まだそんなに老けてはいない」、14年の「時は立ちどまらない」に続く、“山田太一ドラマスペシャル”。渡辺さん演じる、震災の傷と戦いながら孤独に生きる男・木崎秀次が、たまたま訪れた中学校の文化祭でダンスを披露していたひとりの少女に目を奪われ、こみ上げる気持ちのまま言葉を投げかけたことをきっかけに2人の交流が始まり、やがて少女は、震災で多くのものを失った木崎のまだ癒えぬ心の傷に触れていくことになる……というストーリーが展開する。
脚本を手がけた山田さんは「『5年もたてば悲しみも少しは薄れるだろう』という一般的な感覚、“悲しみの常識”みたいなものが、それぞれの悲しみを見損なってはいないかと感じていました」といい、「一度押さえこんだ悲しみが、思いがけない過去の不意打ちでよみがえることもあるでしょう。頑張って強く生きようと、いつの間にか悲しみに蓋をしていたことに気づく人も。月日を経て初めて感情を解き放つ人のドラマを描いてみたいとも思いました」と執筆の動機を語っている。
また山田さんは主演の渡辺さんに「中年期の成熟と純粋さを兼ねそなえた人物を、説得力を持って演じられる人。謙さんと組めるのなら『王様と私』が終わるまで待つ値打ちがあると思いました。謙さんは大変な試練を何度も経られて、何度目かの旬を迎えてらっしゃるという思いがあります」と絶大な信頼を寄せるとともに、「私が気がかりだったシーンも、謙さんがある意見を提案して乗り越えてくださいました。さすがだと敬服しました。謙さんならば、被害に遭われた方々に穏やかに深く心を寄せて演じてくださると信じています」と仕上がりに自信をのぞかせている。
一方、渡辺さんは「せりふが積み重なっていく中で、それぞれの登場人物の抱えているものが丁寧に浮かび上がっていきます」と山田太一脚本の特徴を挙げ、「だからこそ役を作り込んでのぞむのではなく、先生が書いたセリフにただ包まれていく……。そうすることで、キャラクターが自然と生まれていくのを感じています。そしてそのせりふを役者が発したときに、目が覚めるような新たな発見が生まれ、胸に突き刺さる。まさに“山田マジック”ですね!」と興奮気味にコメント。さらに「1シーンが長いので覚えるのは大変ですが、山田先生が振り絞って書かれたせりふの力を、今回も感じています」と生き生きとした表情でここまでの撮影を振り返っていた。
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