川口春奈:映画「クリーピー 偽りの隣人」出演 今後は「ぶっ飛んだ役にも挑戦したい」

出演した映画「クリーピー 偽りの隣人」について語った川口春奈さん
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出演した映画「クリーピー 偽りの隣人」について語った川口春奈さん

 第15回日本ミステリー文学大賞で新人賞を受賞した前川裕さんの小説を基に、俳優の西島秀俊さん主演で映画化した「クリーピー 偽りの隣人」(黒沢清監督)が全国で公開中だ。元刑事の犯罪心理学者が、刑事時代の同僚から6年前に起きた一家失踪事件の分析を依頼されたことで、自身も“奇妙な隣人”によって謎に巻き込まれていく姿を描く。犯罪心理学者の高倉を西島さんが演じ、その妻・康子役で竹内結子さん、高倉家の隣・西野役で香川照之さん、高倉の元同僚の刑事・野上役で東出昌大さんらが出演。6年前の一家失踪事件で生き残った長女・早紀を演じる女優の川口春奈さんに話を聞いた。

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 ◇イメージと異なる役に挑戦し「新しい扉を開く緊張があった」

 今作で謎のカギを握る役のオファーを受け、「単純にうれしかった」と川口さんは喜ぶも、「自分が今までやったことがないジャンルの新しい扉を開くような緊張もあった」と当時の心境を明かす。しかし、撮影終了時には「いろんな思いがあったけれど、撮り切ったときの達成感はすごくありました」とすがすがしい表情を見せる。

 川口さんが演じる早紀は笑顔を見せることなく、つらい過去の記憶を徐々に思い出すという役どころ。「物語のメインになっている家族失踪事件の唯一の生き残りの役で、西島さん演じる高倉に追い詰められるように思いをはき出していくんです」と切り出し、「説明のせりふだったり、過去の記憶を思い返すという芝居で、早紀も曖昧だけれども、それでも思い出そうとしてもがいている。警察に対しても怒りなどを感じることはたくさんあって、そこがすごく難しかった」と振り返る。

 鬼気迫る感情をしているのに説明ぜりふが多く、回想シーンは一切使われていない。そのため川口さんは「全部せりふで説明しなければいけないから集中してやりました」という。さらに、「長い説明ぜりふのシーン(の撮影)はほぼ(カットを)割っておらず、長回しだったので、そういうところがドラマやほかの現場と違う空気で進んでいきました」と説明し、「かなり緊張してプレッシャーもありましたが、監督のおっしゃるものに近付けるように頑張りました」と撮影を振り返る。

 撮影を終えたときには「本当によかったという感じでした」とホッと胸をなで下ろし、「初めて黒沢監督の作品の撮影に参加させていただいて、勉強になることばかりでした」と感謝の言葉を口にする。

 ◇撮影では「現場での感覚を重視」

 川口さんは今作の撮影現場を、「雰囲気を含め独特な世界観でした」と表現し、「撮りたい画(え)とか、こういうふうにしたいというのは明確にあるけれど、黒沢監督は割とおっとりされた方で、現場の雰囲気は柔らかくて、全然ぴりぴりせずに進んでいった」と理由を説明。続けて、「そういう現場だと思えたし、映画自体は結構生々しいですが、現場はいい雰囲気でできたと思います」と笑顔を見せる。

 役作りでは、「イメージが一番。役作りは何をしていますかと言われても、必ずこれはして、撮影の前日にはこれをするというのが、そこまでないんです」という川口さんだが、「台本を読んで自分の思うキャラクターを想像して、なんとなくイメージを持って現場に行く。実際にお芝居をしてみて違うと思うこともあれば、役者さんと向き合ってみたときに思うことも出てくるので、そういうものを大事にしようとは思っています」と自身のイメージと現場での感覚を重視していると説明する。そして、「あまり決めつけずに、柔軟でいたい」と語る。

 10代からモデルや女優として活躍している川口さんは、20代を迎えた今も仕事に対する考え方は「根本は変わらないと思う」という。しかし、「仕事に対して信念を持ってやり遂げるみたいな気持ちは、学生のときもあったのだろうけれど、薄かった部分もあると思う」と切り出し、「今はもっとずっしりくるものがたしかにあって、もっと真剣に取り組まなくちゃと思うようになったし、責任を感じながらやりたい」と真摯(しんし)に語る。

 今作に出演したことで、「ちょっとぞくっとする、ホラーとはまた違った初めての作風だったので、自分の新しい一面を見る、自分を知るという意味では今後もこういう作品には携わっていきたい」と川口さんは感じたという。そして「どの役でもそうですが、特に西野(香川さん)みたいな役は、お芝居というものに関してかなりステップアップできる、いろんな幅を広げられる役だと思うので、そういう意味ではサイコパスだったり、ちょっとぶっ飛んでいるような役もいずれ挑戦できたらいいなと思います」と目を輝かせる。

 ◇隣人に迷惑を掛けないよう「テレビの音量には気を付けている」

 今作では隣人の恐怖も描かれているが、「自分の(家の)一番近いところにこんな人がいてもおかしくない世の中なので、映画を見て余計に怖くなった」と川口さんは真剣なまなざしで語り、「こういう仕事をしているから余計にだと思いますが、家の隣に誰が住んでいるのだろう、(自宅が)ばれたらどうしようとか、常に思っています。西野みたいな人が住んでいないことを願っています……」と力を込める。

 川口さん自身は、「静かにものを動かしたり、そんなに聞こえてはいないと思うけれど、夜中などはテレビの音量とかには気を付けています。そのへんは割と神経質だなと自分でも思う」と隣人に迷惑を掛けないよう心がけているという。実家で暮らしているときは「田舎だったので近所づきあいは盛んでした」と話すも、「東京に出てきてからは、家の玄関に入るまでは、まだ落ち着けないようになっちゃいました」と言って笑う。

 今作の見どころについては、「人は本当に分からないというのをすごく思いました」と川口さんは言い、「常にそういう怖いことを予想して想像しながら生活していけば、何かあったときに対応できたりするのかなと思わせるような、そういう映画」と表現する。さらに、「ただ気持ち悪くて怖かったと思う人もいれば、気を付けようみたいな人もいる。そもそもこの手の映画が苦手という人もいるかもしれないけど、すごく吸い込まれるように時間が過ぎていくので、ぜひ見てもらいたいです」とアピールする。

 常に悪い事態を想定してしまうという川口さんは、「家を出る前とか遅刻してしまいそうなくらい火元や鍵閉めを確認したり、(途中まで行ってから)もう一回家に戻ったりとか、そういうのばっかり」と苦笑いするも、今作のように“奇妙な隣人”が、もしいたとしても「敏感だと思うので、多分すぐ気付くと思います」と語った。映画は全国で公開中。

 <プロフィル>

 1995年2月10日生まれ、長崎県出身。2007年、ローティーン向けファッション誌「ニコラ」のモデルオーディションでグランプリを獲得しデビュー。「三井のリハウス」や「ポカリスエット」のCMでも注目される。09年、「東京DOGS」(フジテレビ系)でドラマデビューし、11年、ドラマ「桜蘭高校ホスト部」(TBS系)で連続ドラマ初主演、同作の劇場版(12年)で映画初主演を果たす。以降、ドラマや映画、CMなどで幅広く活躍。主な出演映画に、「絶叫学級」(13年)、「マダム・マーマレードの異常な謎」(13年)、「好きっていいなよ。」(14年)などがある。16年には主演映画「にがくてあまい」の公開が控えている。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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