注目映画紹介:「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」時代に負けない脚本家の誇りと不屈の闘い

「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」のワンシーン (C)Hilary Bronwyn Gayle
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「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」のワンシーン (C)Hilary Bronwyn Gayle

 「ローマの休日」(1953年)などの名作を偽名を使って生み出した脚本家ダルトン・トランボの知られざる実話をモチーフにした「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(ジェイ・ローチ監督)が22日から公開される。米ソ冷戦下の“赤狩り”によってハリウッドを追放された男が、家族とともに闘う物語。不屈の精神に圧倒される。

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 第二次世界大戦後。脚本家として売れっ子だったトランボ(ブライアン・クランストンさん)は、議会での証言を拒んだことで投獄され、失職してしまう。愛する家族の元へと戻ったトランボは、B級映画専門の会社から仕事を請けて、家を事務所代わりに家族の手伝いも受けながら、複数の偽名を使って脚本を書きまくる。やがて、友人にこっそりと渡した「ローマの休日」が米アカデミー賞に輝くが、再起を阻止しようとする輩(やから)もいて……という展開。

 政治・思想の異なる人を排除する、ハリウッドで起きたそんな暗黒の時代の物語だ。共産主義者とその同調者を排除することが目的で開かれた公聴会。そこで証言を拒否した10人の人物“ハリウッド・テン”の中で、一番有名だった人物ダルトン・トランボが主人公。一人の男が時代と闘う話なのだが、ユーモアのある温かい作風に仕上がっている。入浴しながら必死で書いている姿さえ、のほほんとしたおかしさが漂う。再び名前を取り戻し、表舞台に出るための大変な闘いを強いられていることをものともしない。とにかく、トランボは書いて、書いて、書きまくる。B級映画もハリウッドの作品も、書く姿勢に変わりはなく、そこが職人のようで魅力的に映る。

 彼の闘いは、妻と子どもを巻き込んでの一家総出作戦だ。トランボを家族の中に描いたことで親近感あふれる温かい映画になった。トランボ役のクランストンさんと妻役のダイアン・レインさんの相性も抜群で、夫婦の距離やあり方に心を動かされる。クランストンさんは、その魅力的な芝居によって、今年度の米アカデミー賞主演男優賞に初めてノミネートされた。傷つけられた誇りをどう取り戻すのか。実話が基となっているだけあって、最後まで興味を引かれる。ヘレン・ミレンさん、エル・ファニングさん、ジョン・グッドマンさん(実にいい味を出している!)ら豪華俳優陣が出演。「ミート・ザ・ペアレンツ」シリーズのローチ監督作。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほかで22日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。夏が嫌いです。

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