名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
2003年に公開され大ヒットした「ファインディング・ニモ」。その続編「ファインディング・ドリー」が全国でヒット中だ。メガホンをとったのは、前作に引き続き、アンドリュー・スタントン監督。「続編は作らない」と言っていた監督は、「ドリーが、マーリンやニモを失うかもしれない。彼女の家族が見つからないかもしれないと心配で、続編のことが頭から離れられなくなった」とその意思を覆した理由を明かす。来日したスタントン監督と、共同監督を務めたアンガス・マクレーン監督に聞いた。
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「ファインディング・ドリー」のタイトルが示すように、今回中心になるキャラクターは、物忘れの激しいナンヨウハギのドリーだ。前作「ニモ」で、カクレクマノミのマーリンと出会い、人間にさらわれた彼の愛息ニモの救出劇に一役買ったドリー。今作は、その冒険から1年後、グレート・バリア・リーフのサンゴ礁で幸せに暮らすドリーが、今度は、ニモとマーリンの助けを借りながら、自分の家族を探す旅が描かれていく。
そもそも今作の発端は、12年の「ファインディング・ニモ」の3D公開が決まり、スタントン監督が作品を見返したときだった。スタントン監督の心に、オリジナル完成当時からずっと引っかかっていた、モヤモヤの正体がつかめたのだ。それは、「ドリーがもし迷子になってしまったら、彼女は大丈夫だろうか」という不安だった。
「ドリーは、幼少期をほとんど一人で海をさまよって生きてきました。ほかの魚と出会ったときに彼女が“人懐っこい”のは、その魚に、自分とより長く時間を過ごしてもらうため。それが、彼女自身で身に着けた自身の身を守る術(すべ)だったのです」と話す。そういったドリーの性質や過去については、「ファインディング・ニモ」の頃から頭にあったものの、当時は描くまでは至らなかった。そこで、明らかになった“心配の芽”を摘むためにも、今回、ドリーの生い立ちに焦点を当てようと決断したのだ。ドリーの家族については、今作を作りながら「少しずつ見えてきた」という。
とはいえ、4年に及ぶ製作は容易ではなかった。アイデアが浮かばず、「毎月のように煮詰まっていた」とスタントン監督は打ち明ける。「大問題」として挙がったことの一つが、家族探しをスタートさせたドリーとニモ、マーリンが、「オーストラリアから米カリフォルニアまでの7000マイル(約1万1200キロメートル)にも及ぶ距離を、どうやって、話の半分の尺を使わずに移動させるのかということでした」と、マクレーン監督は明かす。
観客を納得させられる最も理にかなった説明として、マクレーン監督の頭に浮かんだのは、前作にも登場したアオウミガメのクラッシュを登場させることだった。前作の英語字幕版でクラッシュの声を担当していたのがスタントン監督だったことも、渡りに船だった。しかし「それではあまりに安易過ぎないか」(マクレーン監督)という懸念は残った。
それを払拭(ふっしょく)させたのは、マクレーン監督が子供たちを連れて、本国のディズニーランドを訪れたときだった。そこで、クラッシュと観客が対話できるアトラクション「タートル・トーク」に参加したマクレーン監督は、観客のクラッシュに対する反応を見て、両者の間の「感動的なつながり」と、クラッシュが「十分影響力のあるキャラクターである」ことを「初めて認識した」という。その体験から、スタントン監督に「クラッシュを入れるべきではないか。クラッシュを使えばすべてを手っ取り早く説明できる」と提案。マクレーン監督は「卵が先か、ニワトリが先か、じゃありませんが、1作目から生まれたテーマパークのアトラクションから、今回の、あのアイデアが生まれたのです」と笑顔を見せる。
常に進化し続けるピクサーの映像技術。今作でも、目を見張るほどの映像に出合うことができる。例えば、海水の動きなどは本物と見まがうほどだ。その一方で、このまま技術が進化し、リアリズムを追求していけば、ピクサーの持ち味であるチャーミングなキャラクター造形が失われはしないかという懸念もまた、頭をもたげる。
そんな思いを、スタントン監督は「リアリズムの程度は、コンピューターのセッティング次第で、自分たちでいくらでも調整できます」と否定する。その上で、「絵画に印象派と写実派があるように、私たちの作品も、われわれが選んだルックス(雰囲気)がそのまま、観客が目にするものになっています。もっと写実的にすることだってできるのです。ですから、“これだけやれる”ということが、作り手に限界を与えるわけではなく、むしろ逆だと考えています」と説明する。
その言葉にマクレーン監督が、こう補足する。「前面にいるキャラクターと背景にいるキャラクターというのも考えなければいけません。実際、目玉があって、言葉を話す魚をリアルに描いたら、ちょっと気味が悪くなってしまいます」と笑う。するとスタントン監督は「写真が発明されたからといって、絵を描くことはなくなりませんでした。むしろ選択肢が増えました。あるいは、物語で強調する部分が変わっただけのことだと思います」と指摘し、「例えば、『ジャングル・ブック』(ジョン・ファブロー監督、8月11日公開)のような写実的な作品もあれば、もっとマンガ的なルックスの作品もあります。つまり、どんなビジュアルが必要かは、物語が要求することなのです」と、ピクサーの技術に限界はないことを明言した。映画は16日から全国で公開中。
<アンドリュー・スタントン監督のプロフィル>
1965年生まれ、米マサチューセッツ州出身。カリフォルニア芸術大学でキャラクター・アニメーションを学び、90年、ジョン・ラセター監督に次ぐ2人目のアニメーター、および9人目の社員としてピクサーに加わった。現在はクリエーティブ部門のバイスプレジデントとしてすべてのピクサー作品を監修している。監督、脚本を務めた「ファインディング・ニモ」(2003年)と「ウォーリー」(08年)は、米アカデミー賞長編アニメーション賞に輝いた。アニメーションだけでなく、「ジョン・カーター」(12年)では実写映画の監督と脚本を担当した。「トイ・ストーリー1~3」(1995年、99年、2010年)では脚本を担当。
<アンガス・マクレーン監督のプロフィル>
1975年生まれ、米オレゴン州出身。ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで学び、97年ピクサーに入社。アニメーターとして「バグズ・ライフ」(98年)から「トイ・ストーリー3」(2010年)まで、ピクサーのすべての長編作品に関わってきた。監督を務めた作品に「ニセものバズがやって来た!」(11年)、テレビスペシャル「トイ・ストーリー・オブ・テラー!」(13年)がある。
(取材・文・撮影/りんたいこ)
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2024年12月23日 01:00時点
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