ドラゴンボールDAIMA
第11話 デンセツ
12月23日(月)放送分
2003年に公開され大ヒットした「ファインディング・ニモ」の続編「ファインディング・ドリー」のMovieNEX(ブルーレイディスクとDVD、スマホで本編が見られるデジタルコピー、購入者限定のスペシャルサイトのセット)がリリースされた。米カリフォルニア州エメリービルにあるピクサー・アニメーション・スタジオを訪ね、今作に登場する人気キャラクター、タコのハンクの製作秘話を関わったクリエーター陣に聞いた。
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「ファインディング・ドリー」は物忘れの激しいナンヨウハギのドリーが主人公。前作「ファインディング・ニモ」で、カクレクマノミのマーリンと出会い、人間にさらわれた彼の愛息ニモの救出劇に一役買ったドリー。今作は、その冒険から1年後、グレートバリアリーフのサンゴ礁で幸せに暮らすドリーが、今度は、ニモとマーリンの助けを借りながら、自分の家族を探す旅が描かれている。
出席者はジェイソン・ディーマーさん(キャラクター・アート・ディレクター)、ジェレミー・タルボットさん(キャラクター・スーパーバイザー)、マイケル・ストッカーさんアニメーション・スーパーバイザー)、ジョン・ハルステッドさん(スーパーバイジング・テクニカル・ディレクター)の4人。
ジェイソン・ディーマーさん(以下JD):ハンクをデザインした過程について少しお話しします。監督のアンドリュー(・スタントンさん)が今回の作品にはタコが登場すると言った時、最初に思ったことは、僕はタコの絵を描いたことがなかった。そこで、すぐにタコについてリサーチを開始しました。何か(デザインに)使えそうなものはないかと探しました。丸い形や、触手の裏側などを見た時には、デザインに生かそうと、すぐに写真をファイルに保存しました。一方、たいていの生き物には気持ちが悪い部分や不快な部分があるものですが、タコはとりわけ気持ちの悪い部分が多かった。ですからデザインに入れない部分についても確認していきました。ただ、なるべく自然のままの姿を見るようにしています。(もしリサーチせずに)すぐに絵を描き始めると、どこかで誰かが描いていたような絵になってしまったりします。自分の頭で考えるよりも本物の方がずっと興味深いのです。
タコには興味深い部分がたくさんあります。色だけでなく、皮膚の質感も似せることができます。他の魚に擬態することも知られています。魚の形になって泳ぐことができるのです。なるべく体を大きくしているのもいます。目玉まで(似せて)います。これらを見た時、これだ! これをキャラクターに取り込むんだ!と思いました。それで絵を描き始めました。
僕は、ハンクはいやいやながらスーパーヒーローになっていると思いました。彼は時にはバックパックに化けます。またタコは小さい穴からでも抜け出せるらしいので、監督にはハンクが逃亡の達人という設定を提案しました。それにタバスコの瓶の中にでも隠れることができたり、自動販売機の隙間(すきま)に隠れたり。また、タコの体は伸びるということが、初期の段階でグラフィックにするのにとても苦労した部分なので、いっそのこと、ぺちゃんこになったり、縦に細長くなったりして、形を変えることができるということも提案しました。そういう特性をすべて盛り込んで、観葉植物に化けることになったのです。
僕がアイデアを提案している時、監督は私に、ハンクの顔をバド・ラッキーという(ピクサーにいる)アーティストのように年を取った感じにしてほしいと言いました。バドは1作目の「トイ・ストーリー」でキャラクター・デザインや絵コンテを担当し、「カーズ」までずっと関わっていた人物で、社内のみんなから愛されていたからです。人間の年のとり方をタコに取り入れるなんて、よく考えたら変ですよね。でもこれは面白い点をついていた。
また、キャラクターは演技をしてせりふを言わなければならないので、口をどこに描くかという問題が出てきます。タコの口は実際には横に隠れているのです。最初は実際とは違っても顔の正面に口を描きました。でもそれだとマンガチックになり過ぎるのです。前作「ファインディング・ニモ」で登場したキャラクターたちとの調和が取れなくなります。そこで、口は下にして、触手の間の部分を上唇に見せて動かすことにしました。そして最後に色と質感を決めました。ハンクは何色にでもなり得るので、さまざまな色を試しました。
ジェレミー・タルボットさん(以下JT):私の仕事はこの美しい絵をコンピューターのモデルにして、動かしたり演技をさせたりできるようにすることです。そうするとタコの動きをアニメーションで表現できるようになるわけです。私のチームはすべてのキャラクターのCGモデルを作りますので、このクレイジーなキャラクターも手がけることができるという幸運に恵まれました。アニメーションやアートの部署と同じように、我々も実際のタコのリサーチをしました。ただ、リサーチの目的は全く違っています。タコが小さな隙間に入るというクレイジーな動画を見たり、気持ち悪い様子や不思議な姿で動き回っていたりする動画を見るのですが、それは、こういった動きをすることができるような機能を作るためです。「モンスターズ・ユニバーシティ」の時にも似たようなことをしたのですが、あの時はもっと単純でした。もっと例を挙げましょう。動きがオーバーラップしているのです。複雑な動きですから、全く新しいところから始める必要がありました。
ジェイソンと監督の会話から考えて、おそらく望まれるであろうすべての動きを可能にするために図表化していきます。水かきの見え方や吸盤が他のものにどうくっつくかなど、監督のアイデアの基本設計を作ります。リアルに動くように作らなければならないのです。そのために新しい触手を開発しなければなりませんでした。
アニメーションの部署に渡す最初のシミュレーションは新車の試乗のような感じで、新しく我々が作ったものを試してもらいました。各触手が違う動きをしますので、アニメーターたちにそれを使った感想のフィードバックをもらいました。それでもまだかなり基本的なもので、本物のタコの動きのようにはオーバーラップしていませんでした。
このころ、アンドリューとアンガスの両監督が「ジャングル・ブック」を参考にしたらどうかと提案してくれました。特にヘビのカーの動きで、タコの触手の動きと似ているのです。このヘビのデザインの単純さが大きなヒントになりました。タコの実際の動きの複雑さを削り取って、戯画化された、スタイル化された動きになりました。そうして、転がるような動きを達成するために新しく作った仕掛けを試しました。初期のテスト映像では中に長い曲線が入っていて、動きが変えられるのです。アニメーターたちやアート部門の人たちにこの新しい装置の使い方を説明しました。関節ではなく曲線で動きます。テスト映像を作って監督に見せましたら、良い方向に進んでいました。初めてオーバーラップができるようになりました。監督たちはこれを見てとても興奮していました。ようやく彼らが求めていたハンクが見えてきたのです。我々も自信を持って進めていくことができました。
アニメーションのために作ったアクションフィギュアには基本設計に入っていたものが盛り込まれました。ケビン・シングルトンというスタッフが作ったのですが、ぺちゃんこになるとか、細長く伸びるとかいうような変わった動きが表現されています。触手を一つ持ち上げると口が持ち上がって、体も持ち上がるのが分かると思います。本物のタコのようにすべてがつながっているのです。
それからカムフラージュも作らなければなりませんでしたし、色を変えることもできなければなりませんでした。ジョナサン・ホフマンというアーティストがタコの肌の様子が分かる動画を見つけました。細胞の一つ一つにおいて形状と色が変わり、それが層となってカムフラージュを作ります。そこで我々の部署のアーティストがこれと同じシステムを開発しました。ハンクの皮膚全体にわたって、いくつか違った質感の部分があります。このエフェクトを使うと、赤い部分、青い部分、緑の部分、それぞれの色と質感がタイミングを合わせて、またはランダムなタイミングで変化します。他のエフェクトと合わせることによって、美しい変身過程を表現することができました。このようなクレイジーな装置を作ったので、これをアニメーションの部署の人たちに渡して演技をつけてもらうことになりました。
マイケル・ストッカーさん(以下MS):アニメーション・スーパーバイザーは全てのキャラクターに全ての演技をつける、我々の部署の仕事です。このタコはおそらくこれまでピクサーが手がけた中で最も難しいキャラクターでした。我々の部署は少人数ですが、とても難しい二つのことを学ばなければなりませんでした。一つは、タコが実際にどうやって動くのか。どのように機能するのか。二つ目はその動きを、キャラクター・デザインの部署が作った装置でどうやって表現するのか。ものすごく複雑な装置です。
まずは全員でモントレー・ベイ水族館に行きました。スタジオから少し南に行ったところにあります。そこでこのタコの映像を撮影しました。タコを実際に腕で持ち上げて触り、なでてみました。まず解明しなければならないことは規則性です。タコはどういう動きをしているのか。その規則性を見つける必要がありました。とても単純な規則が二つあることが分かりました。一つはそれぞれの触手に肘のような部分があり、この肘が足の中で動いて曲がるのです。もう一つは、タコの体には動きが止まっている部分がないということ。すべてが動いています。これはアニメーターにとってはとても難しいことです。コントロールするのが大変だからです。ものすごい大量の動きをコントロールする必要があります。
ピクサーに戻ってから、まずは簡単なテストから始めました。触手だけを動かして、実際のタコのように見せるにはどう動けばいいのかを見るのです。装置の操作方法のテストも兼ねています。自然さが出るような動きを目指して作っていかなければならなかった。どうすればそれができるのかを探り続けました。
もう一つの点は、ハンクの体は常に動いていて、ボヨンと膨らんだ生き物だということです。頭が動くと触手も動きます。体のすべての部分が動くのです。足を一本動かすと他の足も動く。すべての動きがつながっています。通常、何かのキャラクターのアニメーションを監督たちにプレゼンする場合、数日前からそのアイデアを見せる映像を作成します。でもハンクの装置を使う時は、一つの動きを作成するのに1週間か2週間かかった。これでは時間がかかり過ぎです。チームは10人ぐらいで構成されていましたが、ほとんどのメンバーが2Dのアニメーションも描ける人たちでしたから、まず2Dで動きを作ってそれを監督たちに見せました。監督たちがアイデアを気に入ってくれたらその2Dのアニメーションをコンピューターに取り込み、ソフトを使って同じ動きを作り出しました。
一つやらなければならなかったのは、ハンクの性格をどう表現するかです。ハンクはこういう動きをするだろうか? おかしすぎないだろうか? 面白くて楽しく、かつリアルでもある。そのバランスを見極めなければならないのです。
さらに我々はハンクにポーズをとらせるためのツールも開発しなければなりませんでした。触手の絵を描いてクリックすると絵と同じように触手がはじけます。2Dの絵と装置を合わせて使うソフトを開発しました。
最終的に口の動きをは、とてもうまくいきました。というのは正面の水かきの部分が口ひげのようにも見えて、年を取った感じを出すことができたからです。口を見せなければ見せないほど、より魅力的になることが分かりました。ときどき見えますが、なるべく見えないようにしました。そうなると巨大な目玉がとても重要になります。演技はそこでしかつけられないからです。映画本編で口は見えていません。すべての演技は目で表現されています。最初にシンクのシーンのアニメーションを作った時、すべての触手がシンクから出ていて、口も見えていました。全部を見せ急いでいたのです。でもそれでは実写映画のようで、見ていて疲れるということが分かったのです。ごちゃごちゃし過ぎていました。それである部分は隠すようにしました。二つか最高でも三つの触手が見えていれば十分です。その分、目を集中して見てもらえます。
ハンクは人間のような動きもします。でも動かしているのは触手ですから、タコが人間のような動きをしたらどうなるかを考えなければなりませんでしたが、とても楽しいものを作り出せたと思います。これも2Dの絵と装置を合わせて動きを作りました。足の絵を描いて監督に見せ、監督が気に入れば、その足の動きに装置を合わせます。レイアウトを作って、足を描き、水中のアニメーションをつけ、体、そして足の動きをつけます。
ハンクがカムフラージュする場面は、最終的にはジェイソンのアイデアが採用されました。観葉植物になるというものですね。僕がこのショットを気に入っている理由は、すべての部署が何かしらハンクに関わっているということです。全員の努力によってこのショットが可能になりました。我々は植物に見せるための装置を作りましたし、シミュレーションの部署はハンクがコーヒーポットの中に入る様子を作らなければなりませんでした。また水などもあるのでエフェクトの部署も関わっています。簡単に見えますが、とても難しいショットなのです。(難しくても)簡単に見えるショットほど出来がいいといえます。見る人に難しさを感じさせないからです。
ジョン・ハルステッドさん(以下JH):ハンクを作る工程の最後の部分についてお話ししたいと思います。アニメーションの部門から受け取った後も、ハンクの動きを調整しなければなりませんでした。例えばハンクが床に座っている時、吸盤は床に埋もれるのではなく、つぶれて抵抗していなければなりません。ハンクがカップを持っている時には吸盤はカップの外側にくっついていなければなりません。そうやってしっかりと握っている感じを出します。こういった細かい部分はコンピューターが自動的に調整してくれるものではありません。自分たちで作業しなければならないのです。
ここでシミュレーションの部署の出番となります。現実世界の物理を使って映像を直す専門家です。まず吸盤一個の動きが適切に表現されるにはどうしたらいいかを研究します。吸盤がつぶれる、くっつく、そしてはがれる、というような映像を、楽しくかつ本物らしく表現しなければなりません。カスタムメードのシミュレーターを使って皮膚が周囲の物とどう接触するかといったことをシミュレートしていきます。吸盤一個の動きが作れたら、次はすべての吸盤を同じように動かさなければなりません。
その他にシミュレーションの部署が担当することは、ハンクの顔の動きです。皮膚の揺れなどはシミュレーションの部署がつけています。全体に柔らかい皮膚感が出ています。このようなディテールをつけることで、観客にとってハンクがより本物らしく見えるようにしているのです。
――ハンクの動きを初めて見た時に重みを感じた気がしました。タコの足が机からずるっと自然に落ちたりといった部分ですが、重力があるように工夫をされたのでしょうか。
MS:それを表現するのはとても難しいことだったのですが、目標でした。タコは70パウンド(約32キロ)くらいあるのですが、我々がタコを持った時の重みを観客に感じてほしいと思いました。手に張り付いたタコをはがす、うわっという感触を観客にも味わってほしいと思いました。そういったものをアニメーションで表現すること、そしてシミュレーションの部署がタコのつぶれた感じなどを表現してくれることなどすべてを目標としていました。ですからもし重みを感じてもらえたのならうれしいです。
――監督が「やっとハンクが見えてきた」と言ったのはどれくらいの時間がかかってからのことですか。
JT:たぶん1年くらい。
――監督からタコのキャラクターがいると聞いた時に困ったと思ったそうですが、タコ以外にこれが来たら嫌だと思うものは?
JT:鳥は大変です。羽が複雑だから。ただ実際はどんな生き物だって大変(笑い)。一番大変なのはキャラクターを作ること。全員でキャラクター作りにとりかからなければならないからね。
MS:ハンクはこれまでピクサーが手がけた中で最も難しいキャラクターだったと思いますが、これまで作ってきた作品それぞれに大変なキャラクターがいたわけです。「Mr.インクレディブル」のヘレンはパラシュートに変身したけれど、ああいうのはものすごく難しい。どの作品にも一つや二つは難しいショットがあります。人間も大変です。
JH:実写のような人間はピクサーではやらないからね。助かった。それは本当に難しいよ。
全員:ジンベイザメもアザラシも大変。(結局、)全部大変(笑い)。
(取材・文・撮影:細田尚子/MANTAN)
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