ラサール石井:「こち亀」終了に秋本治さんねぎらう「大変だったと思う」 “両さん”として歩んだ日々振り返る

約8年ぶりの新作テレビアニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所 ~THE FINAL 両津勘吉最後の日~」で両津勘吉役を演じるラサール石井さん
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約8年ぶりの新作テレビアニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所 ~THE FINAL 両津勘吉最後の日~」で両津勘吉役を演じるラサール石井さん

 秋本治さんの長寿マンガ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(こち亀)が17日、約40年にわたる連載を終えた。東京の下町を舞台に、さまざまな騒動を引き起こす主人公の警察官の両津勘吉をアニメや舞台で長年演じ、18日から放送される新作テレビアニメや9日から上演されている舞台版でも両津役を演じているタレントのラサール石井さんに、両津役や連載が終了した原作への思いなどを聞いた。

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 ◇「こち亀は終わらないと思っていた」

 原作の連載終了に石井さんは「(寂しさは)ありますね、こち亀は終わらないと思ってましたから」と心境を明かし、さらに「もったいないと思いましたけどね。まだまだアイデアもいっぱいあったみたいだし、あと15年、20年ぐらい全然いけると思っていたので……。でも、秋本先生も大変だったと思うんですよ、40年。だからリニューアルしたい気持ちもあるのかなって」と原作者をねぎらった。

 「こち亀」の魅力は「世界が広いこと」と石井さん。「最初の入り口は狭いんですけど、中に入ると四次元空間のように、なんでもかんでも受け入れられる広さがある。だから、世代を超えて誰でもが楽しめるのでは」「警察という閉ざされた設定の中で、よくこんなにいろいろなことができるなあ、と思う」と改めて感嘆する。

 主人公の両津が人並み外れたエネルギーで大暴れするのも「こち亀」の魅力だが、石井さんは「まず、憎めない。むちゃくちゃなんだけど、可愛らしい。そして、エネルギーがすごい。自分の欲望のために、いろいろなものを破壊しちゃったり(笑い)」と両津が愛される理由を説明する。自身との共通点は意外にも「ほとんどない」というが、両津のとことんひとつのことを極める性格や趣味には影響も受けたといい、「(両津を演じて以来)フィギュアを集めたり、僕もしてますしね。面白そうだなー、と」と明かす。

 ◇両津役は「不思議な感じだった」

 「こち亀」は、1976年から「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された。テレビアニメシリーズは1996~2004年に放送され、その後は不定期で特別番組が放送されている。18日から放送される「こちら葛飾区亀有公園前派出所 ~THE FINAL 両津勘吉最後の日~」は08年放送の特別番組以来、約8年ぶりの新作。バイトですしを出前中の両津が、誘拐犯に襲われているアッタカイーノ王国の王女サブリナを救い、誘拐未遂事件は、やがて下町全体を巻き込み、国際的大騒動にエスカレートする……というストーリーだ。

 約8年ぶりの収録に石井さんは、感慨は「もちろんありましたね」としみじみ。「(収録で)昔の仲間に会えて、座る場所も立つ位置も同じで。(役に)すんなり入れました」と振り返る。久々の収録で声帯が心配だった、と石井さん。以前は当たり前だった“両さんの声”だが、8年の空白で声帯が元に戻ってしまったと当初は不安もあったが、今では「大丈夫です」とすっかりなじんだようだ。

 両津役を演じるなかで苦労したことはあまりないという。ただ、昔はあまりに忙しすぎて「(アフレコを)やっている途中で、とにかくよく寝てました」と苦笑する。「他の人がとり直しをしているときとかに寝ちゃって。自分の番で起こされたり(笑い)」と懐かしそうに語る。両津を演じるうえで、大事にしていたのは新鮮さ。「そのときの新鮮さを大事にしていたので、台本を読まず、ビデオも見ずに収録に行って、ぶっつけでどれぐらい早く終わるか、ということに挑戦していました。自分の中での戦い」と振り返る。

 印象深いのは、ゲスト声優としてさまざまな人に参加してもらったこと。「こち亀」といえば、登場人物が多いことも特徴のひとつだが、それに合わせて総出演者も「延べ人数で400人ぐらい」。中には、現在の人気俳優なども参加していたという。石井さん自身は国民的なキャラクターといってもいい両津の声を演じることへのプレッシャーはなかったというが、「不思議な感じでしたね」と述懐。「ちょうど、どストライクな世代が20代後半、30代ぐらいで。その人たちの前で両津の声を出すと、ものすごく感動してくれたり」と語る。

 9日からは舞台版の上演も始まった。「こち亀」らしく「盛りだくさんなこと」が見どころで、石井さんは「ヒップホップダンスからタップダンス、笑い、泣き、映像とのコラボのダンスもありますし、普通、こんなに(いろいろな要素を)入れないだろうというぐらい入ってます(笑い)」と説明し、「毎日お客さんの反応がとても良くて、評価も高いので楽しくやってます」と笑う。

 最後に、改めてファンへのメッセージを聞いてみると、「ひょっとしたらね、アニメはまたやれる可能性はないこともないと思います」とちらりと意欲ものぞかせつつ、「みなさんの心に両津勘吉がずっと残っていればいいなと思います」と晴れ晴れとした表情で語ってくれた。

 「こちら葛飾区亀有公園前派出所 ~THE FINAL 両津勘吉最後の日~」はフジテレビで9月18日午前9~10時に放送。

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