俳優の本木雅弘さんが2008年公開の「おくりびと」以来、8年ぶりに主演を務めた映画「永い言い訳」(西川美和監督)が14日に公開される。「ゆれる」(2006年)や「ディア・ドクター」(2009年)、「夢売るふたり」(2012年)で知られる西川監督のオリジナル脚本による、ある再生の物語。妻を亡くした小説家と母親を失った子供たちとの不思議な交流を描く。主人公の小説家の妻を深津絵里さん、子供の父親をミュージシャンの竹原ピストルさんが演じ、黒木華さんや池松壮亮さんも出演している。
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「永い言い訳」は、直木賞候補に選ばれた西川監督の同名小説が原作。人気作家・津村啓こと衣笠幸夫(本木さん)は、妻・夏子(深津さん)が親友のゆき(堀内敬子さん)と旅先で不慮の事故に遭い亡くなったと知らせを受ける。その時、不倫相手と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。そんなある日、ゆきの夫でトラック運転手の陽一(竹原さん)とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い彼らの世話を買って出ることにする……というストーリー。
ある日、突然始まった妻の“不在”、そこからの“再生”というのはある意味、使い古されたテーマのようにも思えるが、今作での主人公・幸夫と夏子との関係は、死別する前からすでに破綻しており、実際に幸夫は、事故のあとものんきに浮気相手と逢瀬を重ねようとするなど、妻の死に真剣に向き合おうとしない(この点を淡々と言い当てる池松さん演じるマネジャー・岸本のせりふにもグッときた)。世間一般の尺度でいえば、幸夫はきっと“クズ男”の部類に入るのだろうが、スクリーンに映し出された姿は、時に哀れで醜く、滑稽でありながら、それらを補って余りあるほどチャーミングで、本木さんが演じる幸夫という人物に原作を読んだとき以上に感情移入してしまった。
原作以上といえば、陽一とゆきの2人の子供、真平と灯を演じた藤田健心さんと子役の白鳥玉季ちゃんの演技も秀逸で、中でも藤田さんはほとんど演技経験がないと聞いたが、西川監督の恩師である是枝裕和監督が手がけた「誰も知らない」(2004年)の柳楽優弥さんを彷彿(ほうふつ)とさせるまなざしで、見るものの心を射抜いてくれる。今作の最大の発見は彼と言って過言ではないだろう。
映画は14日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(山岸睦郎/MANTAN)
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