のちに“アインシュタイン並みの天才”とたたえられることになる一人のインド人数学者の波乱の半生を描いた「奇蹟がくれた数式」(マシュー・ブラウン監督)が22日に公開される。第1次世界大戦下、英国とインドの数学者が数式を通じて出会い、やがて大きな発見を形にしていく……。その過程で育まれる国籍を超えた友情を描いた感動作だ。
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1914年、英ケンブリッジ大学トリニティーカレッジで教授を務めるハーディ(ジェレミー・アイアンズさん)の元に、インドから1通の手紙が届く。そこには、数式にまつわる驚くべき発見が記されていた。ハーディは早速、差出人のラマヌジャン(デヴ・パテルさん)を大学に招聘(しょうへい)するが、身分が低く、独学で数学を学んだというラマヌジャンを、ほかの教授たちが受け入れるはずがなかった。それでも、研究熱心なラマヌジャンは直感で次々と新しい公式を生み出していく。そんな彼にハーディは、“証明”の必要性を説き続けるが……というストーリー。
「無限級数」や「連分数」といわれても、その意味はさっぱり分からないが、ともかくこのラマヌジャンという人物は、数学界に多大な貢献をもたらした人らしい。その頭脳は「アインシュタイン並みの天才」といわれ、彼の研究はブラックホールの解析にも役立っているという。映画の舞台となった1914年当時、インドは英国の植民地で、インド人が英国に渡ることは禁じられていた。それでも自分の力を試したくて海を渡ったラマヌジャン。美しい大学や部屋にある紙の上等さに感激する一方で、ベジタリアンの彼にとって、英国での生活は不自由なことばかりだった。その中で研究に没頭していく様子が、今作では明らかにされていく。もちろんその背後には、彼を招聘し支えた英国の数学者G・H・ハーディの存在もある。
学生時代、いろんな数式を必死になって覚えたが、それらを生み出した人のことなど、これまで思いも及ばなかった。しかし、その人たちは間違いなくいた。そのことに、この作品は気づかせてくれた。また、インド人の数学的能力の高さがしばしば話題になるが、ラマヌジャンのような人を生んだ国なら、それも当然だと確信した。なお、ケンブジリッジ大学の最高峰トリニティーカレッジが撮影に使われており、「ニュートンのリンゴの木」がある中庭なども見ることができる。ラマヌジャンがノートにしたためた数式がとても美しく見えたことを最後に言い添えておく。22日から角川シネマ有楽町(東京都千代田区)ほか全国で公開。
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(1978年)と「恋におちて」(84年)。
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