映画「デスノート」シリーズの最新作「デスノート Light up the NEW world」(佐藤信介監督)が全国で公開中だ。「デスノート」は、大場つぐみさんが原作、小畑健さんが作画を手がけ、2003~06年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された人気マンガ。今作は06年公開の映画「デスノート」から10年後を舞台に、名前を書かれた者が死ぬ「デスノート」を巡って争奪戦が描かれる。東出昌大さん演じるデスノート対策本部の捜査官・三島、池松壮亮さん演じる名探偵「L」の後継者・竜崎らと三つ巴(どもえ)の戦いを繰り広げるキラ信奉者・紫苑優輝役の菅田将暉さんに、役どころや作品の魅力、俳優としての最近の心境について聞いた。
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原作マンガを「大好きで読んでいました」という菅田さんは、「よく池松くんが『あれは事件だった』と言っていましたけど、まさにその通り」とうなずき、「(前作の映画は)マンガ実写化の走りのようでもありましたし、(キラとLという)天才たちの戦いが、ある種、神話のような出来事で世間をにぎわせた感じ」と当時の印象を振り返る。
そんな大ヒット作の続編について、「(作られるとは)まったく思っていませんでした」と率直な気持ちを語り、続編の情報がテレビで発表された際、「まだ出演するとは決まっていなかったので、(続編の)映画をやるんだと思いました(笑い)」と衝撃を受けたという。
そして、「リメークはまだ分かるけど、当時の10年後を描くというのはすごいと思いました。どうするんだろうって」と驚くとともに興味が湧き、出演オファーを受けた際には「10年の月日を経た今なら、よりリアリティーのあるデスノートの戦いが見られるんじゃないかと思い、(撮影に参加するのが)楽しみでした」と期待感に胸がふくらんだという。
自身が演じた紫苑の第一印象を、菅田さんは「オリジナル(のキャラクター)というのがうれしかった」と笑顔を見せ、「『デスノート』(という作品)のいいところをもらった上で、この規模でオリジナルとして戦おうとするのはすごいチャレンジだなと」と身が引き締まる思いがしたと語る。
続けて、「マンガに映画、さらにスピンオフと『デスノート』はこれまで多くのメディアで展開されてきて、それを自分は見ていた側。それにあのコンビ(大場さんと小畑さん)の別作品も読んでいたのでどうしようかなとも思いましたが、断る理由が一切なかった」ときっぱり。「普通にデスノートに名前を書いてみたかったし、書ける役でしたし、リュークにも会えるし(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに出演理由を明かす。
実際にデスノートを使ってみた感想は、「(素材は)スエードで、(名前を書くのは)やっぱり興奮するものはありました」と目を輝かせるも、「実際には(見た目としては)なんて“静かな”戦いなんだろうと(笑い)。(名前を書くだけなので)罪の意識が薄く、怖いなと思いました」と神妙な表情で語る。
紫苑の人物像については「根底が“ザ・キラ信者”で、能力と行動力があって夢を持てちゃった」と分析し、「ロマンチストでもあり、(紫苑の)野心に関しては共感できる部分があります」と話す。キラのような存在に対して、「世の中的にカリスマや神のような存在がほしいのではと思います。何かにすがりたいし、自分も誰かと同じでいたいというのがあるのでは」と持論を語る。
「デスノート」に登場する人物の中では「一番好きなのはメロ」という菅田さんだが、キラ派かL派でいえば「Lですかね。Lはカッコいい。ただキラもカッコよくて、(夜神)月(らいと)のあの必死さがいい。めちゃくちゃ泥くさくて、あんな必死な人間はいない」と評する。紫苑はキラに憧れているが、菅田さん自身の憧れは「ミュージシャンなどもいますけれど、一番は(お笑いコンビの)『ダウンタウン』さん。憧れというか、それこそ神です!」と力を込める。
三島、竜崎、紫苑という3人の男たちの衣装にはそれぞれ特徴があり、「東出くんがスーツでいて、池松くんが黒くて、自分は白というのは最初から決まっていました」と菅田さんは説明し、Lに白いイメージがあるためか、「紫苑も(自分の行為を)そんなに悪いことではないと思っているところがあって。簡単に捜査本部の人間を狙ったり、クライマックスまで見ていくと分かりますが、あの描き方は現代的なのかなと思います」と分析する。
撮影の中、最も印象に残っているのはクライマックスのシーンだという。菅田さんは「ああいうシーンをやらせてもらえるのは役者冥利に尽きます」と感慨深げに切り出し、「使う機材や小道具の関係で、(撮影は)できて2回ぐらいと言われていて、結果的には1回で撮れたのですが、タイミングなど緊張感があって、あのときの『よーい!』(という掛け声)はすごい状態でちょっと震えました」と振り返る。
もっともデスノート“らしさ”を感じる部分については、「躍起になって阻止しにくる人間たちをデスノートで殺そうとする瞬間」だと菅田さんはいい、「やっぱり心臓マヒで倒れていく感じとリュークかな」と魅力を語り、新たな死神も描き出すCGについて、「死神との共存というのが、こんなにもナチュラルにあるんだと思いましたし、質感もすごくて感動しました」と絶賛する。
菅田さんは、放送中の連続ドラマ「地味にスゴイ! 校閲ガール」(日本テレビ系)に出演し、2017年にはNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の出演も決まっている。「環境は変わりました」と言い、「今まで出会わなかった人たちとの出会いも増え、今まで立つことのなかったステージに立っているという感覚はあります」と現在の心境を明かす。
ドラマに映画にと出演作が増えているが、「全部やりたいという気持ちとともに、全部やらなきゃ見えないものもある」と仕事への取り組み方を語り、「自分がこれからどうなるのか、どうなりたいのかというのはあるけれど、今決めるのはまだ早いというか。面白そうなものはなんでもやってみるという段階です」と現状を見つめる。そして、「これからはもうちょっと一つずつに時間を割かなきゃなと。プロとして一つ段階を上げたいです」と目標を掲げる。
完成した映像を見て、菅田さんは「冒頭から度肝を抜かれ、日本映画にはあまりないカッコよさがありました」と改めてすごさを実感し、「ああいう画を撮れることは希望だと思います」と絶賛する。さらに特にうれしかったこととして、「10年前の映画は、当時、ウルトラマンや仮面ライダーを見ているような遠い夢のような世界でしたが、今回はそれが現実に落ちてきた感じがした」と表現し、「きれいな流れ星だと思っていたものが隕石(いんせき)として落ちてきたような、そういう怖さがありました」と語る。
作品の大きなテーマとして、「『これで終わらせる』っていうのが一つある」と菅田さんは切り出し、「プロデューサーさんをはじめ皆さんの言葉を聞いて思ったことですが、暗いニュースがたくさんある中、この映画はその顛末(てんまつ)を見せているような気がする」と見どころを解説する。そして、「そういった大きなメッセージみたいなものと、単純にエンターテインメントとしてカッコいい映像、人間ドラマ、どんでん返し。その両方が混在しているのが『デスノート』なのかなと。期待して見に来てほしいです」とメッセージを送った。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
1993年2月21日生まれ、大阪府出身。2008年に第21回「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」の最終選考に残ったのをきっかけに芸能界入りし、09年に特撮ドラマ「仮面ライダーW」に史上最年少で主演に抜てきされる。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」や連続ドラマ「民王」(テレビ朝日系)などに立て続けに出演し、13年に主演映画「共喰い」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。14年、「そこのみにて光輝く」では日本映画批評家大賞助演男優賞など国内の映画賞を数々受賞。最近の主な映画出演作に「闇金ウシジマくんPart2」「海月姫」(ともに14年)、「暗殺教室」「明烏 あけがらす」(ともに15年)などがある。今年は「ピンクとグレー」「ディストラクション・ベイビーズ」「セトウツミ」「何者」などに出演。2017年には出演した映画「キセキ -あの日のソビト-」「銀魂」などの公開を控える。
(取材・文:遠藤政樹)
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