シンガー・ソングライターのCharaさんが、デビュー25周年記念ベストアルバム「Naked&Sweet」を16日にリリースした。ヒットシングル「やさしい気持ち」や、女優として出演した映画「スワロウテイル」(1996年公開)の主題歌で、ボーカルを務めた劇中バンド「YEN TOWN BAND」の楽曲「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」、ロックバンド「RADWIMPS」の野田洋次郎さんが作詞・作曲・プロデュースを手がけた「ラブラドール」など、“愛”をテーマに曲を作り続けてきた自身のキャリアを網羅する3枚組み。恋愛、結婚、出産、子育てを経て、今は一男一女の母でもあるCharaさんの人生ストーリーのような内容に仕上がっている。25年間の活動や、モデルとしても活躍する長女、SUMIREさんと高校生の長男との“親子愛”、「Chara」というアーティス名の意外な命名エピソードなどについて本人に聞いた。
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――「Chara」という名前は小学校3年生の9歳のころからあったそうですね。
学校の先生が付けたんですけど、「しゃらっと」というのが語源らしくて。泣き虫といえば泣き虫だったので、ちょっと泣いてしまって、でも次にやるべきことにさらっと切り替えてしゃんとするさま、みたいなところから付けられたみたいです。ホントにいい先生で、何人かでよく先生のおうちに泊りに行ったり、一緒に料理して食べたりとかしてました。
――“愛”をテーマに曲を作り、歌おうと思ったきっかけは?
最初は“愛”って憧れで、「分からないから知りたい」というのが歌い始めたきっかけ。それで言うと、愛というか恋ですね。「恋って思い通りにいかないことがあるんだね」っていうのを初めて知った時に、自然と楽器を演奏して曲ができた……みたいな。19歳の時に失恋して、その時に書いたのが「Violet Blue」というデビューのきっかけにもなった曲で、今回のベスト盤にも入ってます。
――3枚組みベストアルバム「Naked&Sweet」は、全45曲が時系列で並んでいるという点で、自身の人生の歩みにも重なる部分はありますか。
そうですね。実は1枚目(Disc1の曲)は独身のころで、家族や生涯を共にするパートナーみたいなものにすごく憧れていて、結婚も未知のもので。最後の「Tiny Tiny Tiny」は長女のSUMIREを身ごもって8、9カ月のころに歌った“出発”の曲なんです。それでDisc1が終わるという。
Disc2になると、自分の中から違う性別(息子)が出てくるっていう。私、妹はいるんだけど、姉妹だから、母に聞いても男の子の育て方は分からないし、初めての経験で……。1人目はできちゃった結婚でサプライズもあったけど、2人目は「男の子ほしいー」って思ったらできて、“一姫二太郎”がかなったりっていう。Disc2の12曲目「大切をきずくもの」は、息子が生まれた後の遺書的な感じもあって、やっぱり大切なものがあると失(な)くすのが怖いとか、背中合わせに考えやすいし、私もそういう自分の中の弱い部分を曲にしたり……。
(Disc2のころは)お母さんになって結婚もして、音楽的にもクリエーティブ面の自信……自分を信じる力が安定してきてノッてるような時期だったと思います。あとDisc3の1曲目「初恋」は、妹が、今は結婚して2人の子供に恵まれたんですけど、(当時)初めて大失恋をして「お姉ちゃん何もしてあげられない。でも大好きだから、幸せになるといいな」という思いで作った曲。いろいろな思いがありますね。
――今作の初回盤には、94年11月に開催した日本武道館公演の模様を収めたDVDが付属していますが、公演直前に妊娠が発覚し、ステージ上で泣き出してしまったというハプニングもあったそうですね。
(公演の)前の日あたりに妊娠が分かって、本人は「やったー、できたー!イエーイ!」って思ってたけど、お母さんになるっていう自覚をしちゃった日だから、こんなミニスカートとブーツを履いて大丈夫か?とか、いつもより何となく控えめなんです。それも自分で嫌だし、花道があって、イヤモニ(ライブ時にバンドの音や自分の歌声を聴くために耳につけるモニター)が今みたいにないから、(花道にいる自分と)メンバーとの(音の)タイムラグがすごいし、モニターは全然聴こえないし……。何か不安で、「音が気持ち悪い、うわあー!無理―!」みたいになっちゃって(笑い)。それに、妊娠してるのも黙っててって言われていたから、私の性格上「イエーイ!」みたいな雰囲気でやりたいのに、「意味分かんない」っていう感じで。私、花道であぐらかいちゃって、つけまつげもタテになっちゃってるからね(笑い)。
――その時におなかの中にいたのが、現在、大学生でモデルとしても活躍されているSUMIREさんで、その後に生まれた息子さんは今、高校生だそうですね。
SUMIREちゃんは、「Charaさんの、(元夫で俳優の)浅野(忠信)さんの娘ですよね」っていうことじゃなくても、よくスカウトとかもされてたんで。息子は楽器が好きで、昨年に5日連チャン(連続)で弾き語りライブをやった時に、ドラムで出てもらったんですよね。音楽に関しては、彼は小さい時からすごく頼りになっていて、車に乗ってる時によくデモ段階の曲をかけていると、聴かせるっていうわけじゃなくても聴いてるから、そうすると、詞を付けた後の歌を聴いて「アレッ!?これ、デモの時の方がよかったじゃん。なんで変えちゃったの?」とか。「やっぱり?」って(笑い)。
――ご自身の中で“愛”との向き合い方、音楽としての表現に変化は感じていますか。
中期ぐらいからサウンドプロデュースも進んでするようになったり、演奏も自分でやり出したり。言葉の使い方もすごく進化してると思います。やっぱり、子供を育てるってすごく責任があるし、言葉は一度出したら引っ込まないし、子供に聞かれても「ママの作った音楽はこういうことで、こういうこと伝えたい」とか、全部話せると思いますね。それに、それ(子供ができる)までは「無償の愛」みたいなものは体験できてなかったので、子供たちの存在はすごく大きい。
お母さんや親の仕事って、生まれてこんなに手をかけないと死んでしまいそうな人間が、言葉や感情を覚えていったりするから、すごくクリエーティブな仕事だと思うんです。そういう意味では、責任を持ってCharaという音楽のプロの姿を子供に見せていってる感じはあります。でも保守的にならずに、人生を豊かに。いい曲、書きたいですね。
<プロフィル>
1968年1月13日生まれ、埼玉県川口市出身。91年9月にシングル「Heaven」でデビュー。96年公開映画「スワロウテイル」に出演し、ボーカルで参加した劇中バンド「YEN TOWN BAND」の映画主題歌「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」がヒット。97年には、シングル「やさしい気持ち」「タイムマシーン」などを収録したアルバム「Junior Sweet」をリリース。Charaさんが初めてハマッたポップカルチャーは、2歳のころに聴いていた山本リンダさんの歌。「おじちゃんに、おなかの出た赤い上下のパンタロンスーツを買ってもらって、『どうにもとまらない』をやっていたらしいです。かなり激しく、ブンブン歌い踊ってたらしい(笑い)。初めて弾き語りをしたのは小学校1年生の時で、小坂明子さんの『あなた』ですね。耳コピして、カバーさせていただきました」と話した。
(インタビュー・文:水白京)