水谷豊&反町隆史:映画「相棒-劇場版4-」互いの「相棒」論や製作秘話、今後のシリーズ展望について語る

映画「相棒-劇場版4-首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断」について語った水谷豊さん(左)と反町隆史さん
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映画「相棒-劇場版4-首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断」について語った水谷豊さん(左)と反町隆史さん

 映画「相棒-劇場版4-首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断」(橋本一監督)が11日に公開された。「相棒」(テレビ朝日系)は、警視庁の窓際部署「特命係」のキャリア警部・杉下右京が天才的頭脳で推理し、相棒と難事件を解決する人気ドラマシリーズ。前作から約3年ぶりとなる劇場版は、特命係が謎の国際的犯罪組織「バーズ」が関わる事件に挑む。杉下右京を演じる水谷豊さんと、その相棒・冠城亘役の反町隆史さんに話を聞いた。

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 ◇元相棒ら人気キャラの出演に「カメラ外ではしゃいでいた」

 ドラマシリーズとは趣の異なるテーマが話題となることが多い「相棒」の劇場版だが、水谷さんは「劇場版は毎回、社会派であり、エンターテインメントでもあるというところで、テレビシリーズでも基本はそうですが、映画になるとそれがより広く深く大きく描かれるわけです」と切り出し、「今回もまたきっと何か来るだろうと、ある意味、楽しみに(台)本を待っていました」と振り返る。

 実際に台本に目を通した際は、「今までの(劇場版)3本も社会派ではあったけど、より社会派であり、よりエンターテインメントだなと感じた」という水谷さんに対し、反町さんは「『相棒』の内容としては難しすぎても簡単すぎてもいけない部分もあると思いますが、ミステリアスなところもありつつ、ひねりもあって最終的な答えが出る。『相棒』ファンの方が期待しているようなところが非常に出ていた」と「相棒」らしさを感じたという。

 歴代の人気キャラクターが出演することも魅力の一つで、今作にも元“相棒”の神戸尊(及川光博さん)、元鑑識の米沢守(六角精児さん)らが登場している。「やはりうれしいもの」と水谷さんは“再会”を喜び、「神戸くんが目の前にいるというのは、右京の中ではものすごくうれしい瞬間。だからカメラが止まっているところではしゃいでいました(笑い)」と笑顔を見せる。

 続けて、「新しい相棒に旧相棒、2人が会うというのは自分に近い人物が会っているわけで、それはなかなかうれしい瞬間です」と右京の心境を代弁するも、「(及川さんとは)ときどき何かあったりすると連絡は取り合っていますが、ただ現場で会うというのは、また何か特別な思いになるもの。一緒にカメラの前に立ちますからね」と感慨深げに語る。

 神戸尊と初対面となった冠城亘だが、反町さんは「テレビでも見ていましたが、接し方や右京さんとの話し方だったり、そのあたりがすごく新鮮というか、間近で見られてすごくよかった」と反町さんは明かし、「冠城亘もドラマの14話で、『会えるのを楽しみにしてたんですけど』と言って映画で会うので、やっぱり(冠城)本人もそんな気持ちだったのではと思います」と思いをはせる。

 ◇互いのアクションシーンを褒め合うムードのよさ

 今作のハイライトとなる盛大なパレードシーンは北九州市でロケを行った。そのパレードシーンについて、水谷さんは「本を読んだときにパレードは果たしてできるんだろうか」と感じたといい、「(撮影場所は)北九州市の小文字通り(こもんじどおり)というところで、封鎖するには商店街の全員がオーケーしないと成立しないのですが、皆さん『相棒』ならということでオーケーだと。これには感激しました」と当時の思いがよみがえったかのように熱い口ぶりで話す。

 反町さんも「感激しましたし、うれしかった」とうなずき、「『相棒』が培ってきたものであり、だからこそ皆さんが協力してくれる気持ちになってくれたのではと思います」と感謝する。すると水谷さんが「『相棒』をやっていてよかったなと思いました。こんなに『相棒』のために集まってくれて、通りを貸してくれてというのは、うれしかった」と言ってほほ笑む。

 映画ではアクションシーンも目を引くが、水谷さんは「うちではアクション担当は冠城くんでして(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに話を振ると、「いえいえ」と苦笑いする反町さんに対し、「僕は見ている側ですけど、楽しそうにやってました」と笑顔で追い打ちをかける。

 すると反町さんが、「水谷さんは走るのが速いんです。やっぱり元陸上部というだけあって……」と言うと、思わず水谷さんはほほ笑む。さらに、「僕も普段から走っているのですが、(水谷さんは)すごく走り方がうまくてカッコいい。ちょっと前のめりで走るのですが、(映画で)一緒に走っているとき、ちょっと置いていかれるんじゃないかなっていうぐらい、本当にカッコいい」と反町さんは水谷さんの走るフォームを褒めちぎる。

 一方の水谷さんも反町さんのアクションを「やっぱりいい!」と絶賛し、「(冠城が)普段、冗談ばかり言っているキャラクターで、どんな冗談を言うか分からないところがある(笑い)」と指摘しつつも、「事件になったら真剣になるというあたりは、さすがにここ一番はちゃんとやってくれる相棒。右京がちょっと休んで、『事件を任せる』と言いたくなるようなところもある」と提案するも、「それは丁重にお断りします」と反町さんは笑顔で応じる。

 ◇右京と冠城の出会い=水谷と反町の関係性に通じる

 放送中のドラマでは冠城は警察官となっているが、劇場版はまだ法務省からの出向時代のエピソードが描かれている。「シーズン14が始まるときに初めて会って共演も初めてだったのですが、まさに杉下右京と冠城亘の出会いでもあった」と水谷さんは切り出し、「人というのは必ず時間と距離感は並行して起きることですから、いきなり近付くわけにもいかないという距離感が実はある」と持論を語る。

 続けて、「最初に会った距離感というのも緊張感があっていい面もありますが、だんだんいい関係になる、近付いていくことによって、会話の間であったり相手をちょっと見つめる目であったりが自然に変わるんです」と説明し、「(右京と冠城の関係性が)いい感じになってきているなと思っていましたので、映画もその状態で行けたらいいなとは思っていました」と右京と冠城の間にある雰囲気のよさを表現する。

 真剣な表情で聞いていた反町さんは、「亀山(薫)さん、神戸さん、甲斐(享)と歴代の相棒がいる中で、相棒という言葉で考えるならば、相棒は“男同士”の印象が強く、その中でまた対等な感じがあり、よきパートナー、プラスよきライバルというイメージ」と前置きし、「(冠城が)右京さんのよきパートナー、よき相棒と大それたことは言えないけれど、徐々によきライバル、よきパートナー、よき相棒になればいいかな、と。それが言葉や存在として表さなくても、自然と分かるようなものになっていければ」と理想の相棒として目指すところを語る。

 冠城は自ら望んで特命係へとやって来たが、「右京さんのことを好きなんでしょう。そういう部分では僕もその気持ちは分かります」と冠城が志願した理由を反町さんは分析し、「ただ冠城としては、事件の解き方だったりを間近で見るのはここが最初。ある意味、最初から右京さんみたいな人を知ってしまったがために、そこは運がよかったのか、悪かったのか……」と冠城の今後を思いやると、水谷さんと顔を合わせて笑い合う。

 そんな2人だが、水谷さんは反町さんのことを「ソリ、リーソー、隆史、ソリちゃん、そのときどきですかね」と愛称で呼ぶのに対し、反町さんは敬意を表して「水谷さん」と呼ぶも、時には「先輩」と呼ぶこともあるという。

 水谷さんが相手を愛称で呼ぶ理由を、「なんだろう……気が付いたら、そうなっている」と首をひねっていると、「僕が感じているのは、受け入れてくれているなというところ。難しいですけれど、人間関係において呼び方って大事。そういう部分では最初からそういった形で受け入れてくださっていたので、入りやすくて助かりました」と反町さんが相棒らしく的確なフォローを入れる。

 反町さんが水谷さんを「先輩」と呼ぶことについては、「なんの先輩か分からないけど……」と反町さんが笑うと、水谷さんも先輩と言われることを「悪い気はしないです」と笑顔で返すコンビネーションのよさを見せる。

 ◇気になる「相棒」の未来は…?

 今作には五輪を彷彿(ほうふつ)とさせるような世界スポーツ競技大会という存在があるが、2020年に東京五輪を控えて、今後の「相棒」の展開について……。「本当に予測がつかない」と水谷さんはしみじみ言い、「当初からそうですけど、そのときに何がいいんだろう、どうしたらいいんだろうということの積み重ね。いつも何かいい意味で追い詰められている状態で、そのときにできるいいことを続けているんです」と明かす。

 続けて、「(外からは)すごく綿密に語っているように見えるでしょうが、プロデューサーも脚本家も監督はじめ現場の我々も、『将来こうしよう』というのは語り合わないんです」と言い、「ですからオリンピックで見たい競技は決めてますけれど、『相棒』のことは何も決めていません(笑い)」と水谷さんはちゃめっ気たっぷりに語る。

 映画の見どころについて、反町さんは「どうやって決着をつけるのか、右京さんがどういうふうに解決するのかというところはぜひ見てほしい」と言うと、水谷さんは「劇場版は社会的なテーマと、それがどうエンターテインメントになるのかという両方そろってというところがありますが、今回も見事に両方の世界が描かれていると、(台)本を読んだときに思いました」と自信をのぞかせる。

 さらに、「日本人であることの再認識というか、日本で実際に起きたことであり、そういう人たちがいて、今の日本になっている。そこにはいろんな思いをした人がいたんだろうなということを想像させられましたから、(映画の物語が)終わってもやはり終わらないテーマなのでは……」と思いをはせる。

 互いの役の見せ場としては、水谷さんは「右京はどちらかというと“静”のイメージがあるからこそ、“動”が目立つのだと思う。そのバランスだと思いますけど、今回は確かにあれだけ動かないと解決できないものでもあり、動きました」とアクティブな右京に注目してほしいと話す。

 一方、反町さんは「(冠城は)基本ちょっと女性好きでなかなか真剣にならないですけれど、真剣になったときはちゃんとやるので、そのあたりのメリハリを見てほしい」とアピール。すると水谷さんが「あの社美彌子(仲間由紀恵さん)にあんな軽口をたたけるのは冠城くんしかいませんから(笑い)。ああいうのを横で見ていると面白いです」と楽しそうに語った。11日から全国で公開中。

 <水谷豊さんプロフィル>

 1952年7月14日生まれ、北海道出身。68年にドラマ「バンパイヤ」(フジテレビ系)で初主演して以降、「傷だらけの天使」「熱中時代」(共に日本テレビ系)など多くの話題作に出演。76年公開の映画「青春の殺人者」ではキネマ旬報主演男優賞を当時、最年少で受賞。2013年には映画「少年H」でモスクワ国際映画祭で特別作品賞を受賞。17年は初の映画監督作品で主演作「TAP THE LAST SHOW」(6月17日)の公開を控える。

 <反町隆史さんプロフィル>

 1973年12月19日生まれ、埼玉県出身。モデルを経て94年に俳優デビュー。ドラマ「ビーチボーイズ」「GTO」(共にフジテレビ系)で脚光を浴び、自身が歌う主題歌もヒットを記録。その後、数多くのドラマで主演を飾り、2013年にはNHK大河ドラマ「八重の桜」に出演。主な映画出演作に「男たちの大和/YAMATO」(05年)、「座頭市 THE LAST」「交渉人THE MOVIE」(10年)、「カノジョは嘘を愛しすぎてる」(13年)などがある。

 (取材・文・撮影:遠藤政樹)

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