注目映画紹介:「光」河瀬直美監督と永瀬正敏が再タッグ 人として大切なものを見つめ直す

「光」のワンシーン(C)2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE
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「光」のワンシーン(C)2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE

 17日にフランスで開幕したカンヌ国際映画祭コンペティション部門にノミネートされている河瀬直美監督の最新作「」が、27日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで公開される。前作「あん」(2015年)でタッグを組んだ永瀬正敏さんが弱視のカメラマンに扮(ふん)し、映画の音声ガイドを作成する水崎綾女さん演じる女性とのラブストーリーがつづられていく。主人公やヒロイン、2人を取り巻く人々の言動に何度も背筋が伸びた。

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 視覚障害者のためのバリアフリー映画の音声ガイドを作成する尾崎美佐子(水崎さん)は、モニター上映会で、視力を失いつつあるカメラマン中森雅哉(永瀬さん)から、言葉の過剰さを指摘される。雅哉の不愛想な態度に当初、腹を立てていた美佐子だったが、雅哉の撮った写真に心を動かされ、少しずつ彼との距離を縮めていく……というストーリー。ほかに神野三鈴さん、小市慢太郎さん、藤竜也さんらが出演している。

 劇中、わずかに見える隙間(すきま)にしがみつくように生きていた雅哉が、一瞬、見えなくなったと慌てる場面がある。必死に目を近づけ、そこに文字が見えた時についた深いため息から、光を失うことへの恐怖が伝わり、見えることのありがたみを改めて痛感した。

 盲目の女性が美佐子に「どういう感覚を得てガイドを作りましたか」と問いかける場面では、視覚障害者の無限の想像力を、心底「すごい」と感じた。音声ガイドという特殊な仕事に焦点を当てた作品だが、障害があろうとなかろうと、人としての生き方を問われ、思いやりや共感といった、人として大切なものを見詰め直す機会を与えられた気がした。

 河瀬監督はこれまでカンヌで、「萌の朱雀」(1997年)がカメラ・ドール(新人監督賞)、「殯(もがり)の森」(2007年)がグランプリ(審査員特別大賞)に輝いた。28日の授賞式での受賞も期待大だ。(りんたいこ/フリーライター)

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