狂言師の野村萬斎さんが、豊臣秀吉の暴君ぶりに花で立ち向かった僧侶、池坊専好(いけのぼう・せんこう)を演じた時代劇映画「花戦さ(はないくさ)」(篠原哲雄監督)が全国で公開中だ。今作で、河原で倒れているところを専好に助けられ、のちに画才を発揮する絵師・れんを演じた森川葵さん。れんは、助けられた当初、言葉を発せず、ものも食べず、部屋の片隅にうずくまっていたが、蓮(ハス)の開花とともに何かが目覚め、画才を発揮し、その才能を専好に認められるという映画オリジナルの役どころだ。森川さんに役作りや撮影のエピソード、目指す女優像などについて聞いた。
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1573(天正元)年、京の中心にある六角堂に、花を仏に供えることで世の平和と民の幸せを祈る“花僧”、池坊専好がいた。専好は織田信長(中井貴一さん)の前で生け花を披露するが失態を犯す。その窮地を救ったのは豊臣秀吉(市川猿之助さん)だった。十数年後、天下統一を果たした秀吉は圧政を敷き、自分の意にそぐわぬ者を次々と死に追いやっていた。かねて、花と茶の違いはあるものの、美を探究する者同士、専好と友情を築いてきた茶人の千利休(佐藤浩市さん)も秀吉の逆鱗(げきりん)に触れてしまい……という展開。前田利家役を佐々木蔵之介さんが演じるなど豪華出演陣が話題だ。脚本を、放送中のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の森下佳子さんが担当している。
――今回の森川さんの出演は脚本家・森下佳子さんの強い推薦で抜てきされたということですが、改めてお話があったときの率直な感想を。
これまで脚本家の方から強い推薦という形で選んでいただいたことはあまりなかったので、これまで自分がやってきたことを見ていただいていたんだなってうれしく思ったり、森下さんからおっしゃっていただいたからには、それにしっかりと応えないといけないなとプレッシャーもすごく感じました。
――森下さんから直接何か言葉をいただいたことはありますか。
一度お会いしてお話しさせていただいたとき、「れんは年齢が分からない役ですが、森川さん自身も(年齢が)分からない存在なので、それを生かして、あれ?いくつだったんだろう?というものにしたい」とおっしゃっていました。
――今回の役どころを演じるにあたって気を付けたことは?
せりふがたくさんあるわけではないので、言葉で表現することができない分、ちょっとした目の動き、腕の動きなどで、普段だったらせりふで表す感情を感じていただけるように心がけました。
――以前、「表情のお芝居で勝負するのがすごく楽しみ」とコメントされていましたが、特にどのシーンの表情に苦労しましたか。その場面はどんなふうに気をつけて演じましたか。
れんが花の力を受けたときに、襖に絵を描き始めるんですが、それまで自分の中に抑え込んでいたものがあふれ出てしまって自分でも止められないということが伝えられるように、という気持ちで演じました。
――主演の野村萬斎さんの演技が強烈ですが、現場ではどんな雰囲気でしたか。また、どんな話をしましたか。
専好さんのように、ちょっとのほほんとしているところがあったり、でもお芝居になるとキリッと切り替えて、(作品を)背負ってやっていらっしゃるんだなというのが伝わってきました。本当に他愛のない話ばかりしていました。スマホで話しかけて検索をする機能で遊んでいらっしゃるのを見て、おちゃめで可愛らしいなと思って見ていました。
――今作は時代劇で大ベテランの俳優さんがたくさん出演されています。演技を見て驚いた俳優さんはいらっしゃいますか。また、どんなところに驚きましたか。
皆さん、歴史上実在した人物を演じていますが、それぞれの個性が出ていてそれぞれのお芝居の仕方で表現されていると感じました。萬斎さんが演じる専好さんのおちゃめな姿や動きを横で見ていて、その時代に普通に生きていた人なんだから、縛られずにどんどん動いていいんだと感じました。
今回、私は実在した人物ではなかったので自由に演じさせていただきましたが、この先、歴史上の人物や実在の人物を演じるとき、その人の行動や歴史上の事実などありますが、そこにとらわれ過ぎずにできたらなと思います。
――天才絵師の役柄ですが、絵を描くのは得意ですか? 自分ではどんな絵を描かれますか。
絵を描くのは好きです。ふだんは落書きというか、簡単にペンでサササッと猫や女の子を描いてみたり。でも「花戦さ」を撮っている間は、筆を使って描いてみたりしました。ちょっと慣れておこうと思って。その中で1枚だけ、いま思うとどうしてこれが描けたんだろうと思う絵があって。いつもは描いてもすぐに捨ててしまうんですが、それだけは捨てられなくてとってあります。小松さん(現代アーティストの小松美羽さん=れんが描く劇中絵画の制作を担当)の力をすごく受けていたのかなって気がします。
――今作は森川さんの女優人生のどんな存在になったと思いますか。
時代劇の経験があまりなかったので、自分の中で時代劇に興味が出てきましたし、もっと楽しんでやれそうだなと。以前は時代劇は分からないから無理かもと自分でハードルをかなり高くしていましたが、もしかしたらできるかもしれないと思えるようになった作品です。少しずつでもこれをきっかけに自分が時代劇と近い存在になればと思います。
――同世代の女優、俳優の活躍が目ざましいですが、仲のいい女優さんや俳優さんはいますか?
黒島結菜さんとは遊んだりします。お互い忙しくてなかなか時間がないのではと思っていても、「会いたいね」と話をすると時間が合うんです。
――現在22歳の森川さんですが、理想の女優像を教えてください。
母親役ができる女優さんになりたいです。まだ早いかもしれませんが、またそこから先があると思えるんです。そこまで、学生、社会人、そしてお母さん役、そこからすごく先が長い気がするので、そこに新しく一歩踏み込めたらまた新しい世界が開けていくのかなと。
<プロフィル>
もりかわ・あおい 1995年6月17日生まれ、愛知県出身。2010年、雑誌「Seventeen(セブンティーン)」(集英社)の専属モデルとしてデビュー。12年、短編映画「転校生」で女優デビュー。16年4月からトーク番組「A-Studio」(TBS系)の8代目アシスタントを務める。主な映画、ドラマの出演作に、映画「渇き。」(14年)、ドラマ「ごめんね青春!」(同)、ドラマ「表参道高校合唱部!」(15年)、映画「チョコリエッタ」(同)、映画「おんなのこきらい」(同)、ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(16年)、ドラマ「プリンセスメゾン」(同)、映画「A.I. love you」(同)などがある。
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