「インセプション」(2010年)や「インターステラー」(14年)などの作品で知られるクリストファー・ノーラン監督の最新作「ダンケルク」が、9日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほかで公開される。第二次世界大戦中の仏ダンケルクを舞台に、ドイツ軍に追い詰められた英仏連合軍約40万人の兵士の救出作戦を描いている。陸、海、空、それぞれの時間経過と視点で進む物語は、途中、見事な融合を遂げる。ノーラン監督の手腕に感嘆するとともに、生還することの意義や命の尊さを改めて思い知らされた。
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1940年5月、英仏連合軍40万人の兵士は、ドイツ軍によって仏北端の港町ダンケルクに追い詰められていた。彼らの救出に向かおうにも、遠浅の浜辺に大型艦船が近づくことができない。絶望的な状況を打破したのは、漁船や貨物船など民間の小型船だった。かくして史上最大の撤退作戦「ダイナモ作戦」が展開していく……というストーリー。「ワン・ダイレクション」のハリー・スタイルズさんが英兵士の一人に扮(ふん)しているほか、英海軍中佐をケネス・ブラナーさん、民間船の船長をアカデミー賞俳優マーク・ライランスさん、英戦闘機スピットファイアのパイロットをトム・ハーディさんが演じている。
ダンケルクの防波堤で救出を待つ兵士たち(陸)、救出に向かう民間船の船員(海)、彼らを援護する戦闘機のパイロット(空)とでは、時間が経過する速度の感じ方が違う。その違いを利用した独特の構成に、正直、最初は戸惑ったが、三つの時間が合致したとき、見事な融合に感動した。ブラナーさん演じる中佐が目にした光景に胸が熱くなり、防波堤で救助を待つ兵士や民間船を援護するスピットファイアに声援を送り、そのときどきの光景やせりふに心を動かされた。特に印象深かったのは、一人の老人が若い兵士に掛けた言葉で、戦争の不条理と生き残る意義を痛感させられた。
撮影にはIMAXカメラと65ミリフィルムが使用された。ダンケルクの防波堤は復元され、何千人ものエキストラが撮影に参加。当時のスピットファイア3機も海峡上空を飛んだという。リアリズムを重視するノーラン監督ならではの手法だ。試写室で観賞し、それでも十分引き込まれたが、没入感や臨場感の観点でいうと、可能な限り、IMAXでの観賞をお勧めする。(りんたいこ/フリーライター)
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