昨今、数々の人気マンガやアニメが実写映画化して話題を集めているが、先日、昨年の大ヒットアニメ「君の名は。」のハリウッド実写化が発表された。とかく賛否両論渦巻く実写映画化だが、「君の名は。」の場合は少し異なったようだ。“オタレント”の小新井涼さんが、アニメファンの目線から分析する。
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大ヒット映画「君の名は。」が、ハリウッドで実写映画化することが発表されました。
普段こうした人気アニメの実写化には、「実写版なんて求めてない!」といった拒否反応がつきものなのですが、今回はそうした反対の声が目立たなかったように思います。リアクションとしては、今回はどうやら「反対」よりも「困惑」の方が強いような……。こうした反応の理由は、一体どこにあるのでしょうか。
まずは反対の声が目立たなかった理由ですが、それは「君の名は。」が、アニメファン以外の観客も多かった作品だからだと思います。
実写化に拒否反応を示すのは、作品への思い入れが特に強いアニメファンが大半です。ところが、国民的ヒットを起こした「君の名は。」の観客には、普段アニメを見ない人も大勢いました。そのため、観客全体からみたアニメファンの割合が小さくなり、当然ながら、他の作品と比べると反対の声もあまり目立たなかったのでしょう。
それに加えて今回は、普段アニメを見ない人々が、アニメやマンガの実写化に慣れてきていることも大きかったと思います。
以前はアニメファン以外からも、「またアニメ原作かよ」といったネガティブなリアクションがありましたが、最近はそうした反応も少なくなりました。それは、「ジョジョの奇妙な冒険」や「銀魂」「鋼の錬金術師」など、次々と公開されるアニメ・マンガ原作の映画に人々が慣れて、「人気作は実写化されるもの」というイメージがすっかり定着したからなのかもしれません。
こうして実写化そのものへの反対は目立ちませんでしたが、一方で気になるのは、人々が「困惑」した理由です。
おそらくその一番の原因は、“ハリウッドで”実写化されるという部分だと思います。作品を見るとより分かりますが、「君の名は。」の世界観と、「ハリウッド映画」の持つイメージは、そう簡単に結びつくものではありません。
それは、ハリウッド化が発表された他のアニメ作品と比べてもよく分かります。例えば、「攻殻機動隊(攻殻)」や「ソードアート・オンライン(SAO)」のハリウッド映画(ドラマ)化への反応は、“不安はあるものの、期待値もそれなりに高い”という意見が目立った印象でした。これは両作の持つ世界観、「SF」や「オンラインゲーム」といったイメージが、「ハリウッド」と聞いて浮かぶ実写映像と親和性が高いからでしょう。
SF的な舞台やオンラインゲームのバトルシーンなどは、ハリウッドの最新技術で映像化された姿をある程度予想することができます。一方、「君の名は。」の「口噛(か)み酒」や「組紐」、新宿や糸守町の風景といった、いい意味で“日本くさい”世界観は、邦画ならばともかく、ハリウッドで映像化される姿が全く想像できないのです。
実写化された映像がある程度予想できたならば、「攻殻」や「SAO」のように期待、そして不安も持てたことでしょう。しかし「君の名は。」の持つイメージが、あまりにもハリウッド映画とかけ離れているため、人々は賛成や反対、期待や不安以前に、まず困惑してしまったのだと思います。
とはいえ、今回のハリウッド映画化は、なんだかんだで思ったよりポジティブに受け入れられていくのではないかと、私は思っています。はなから「反対」されてはそうはいきませんが、「反対」ではない「困惑」という反応は、やがて怖いもの見たさに近い「好奇心」にもつながると思うからです。
考えてみてください。ヒロインの三葉の家は神社ではなく教会になるのでしょうか。新宿と糸守町という都会と田舎のコントラストは、ニューヨークとアラスカで表現されるのでしょうか…。少し怖くもありますが、ここまで来ると一周回って「ちょっと見てみたいかも」という気持ちにもなってきませんか。
アニメの実写版というとネガティブな反応がつきものでしたが、ここまで想像のつかない形での実写化ならば、いっそのこと全く新しい作品として、楽しむことができるかもしれません。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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