任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」のヒットや「eスポーツ」の業界団体統合などさまざまなことがあった2017年のゲーム業界。ゲーム雑誌「ファミ通」を発行する「Gz(ジーズ)ブレイン」の浜村弘一社長に17年を振り返ってもらいながら、今年の展望を聞いた。
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――17年は、任天堂がスマホゲームを本格展開しました。
スマホゲームの「ポケモンGO」は16年7月から展開しています。そこから任天堂のスマホへのIP展開が始まりました。改めて、任天堂のIP(Intellectual Property= 知的財産)が強いという印象を受けました。スマホゲームは1社で一つのヒットがあればすごいのに、二つ、三つと人気になっているのですから、なかなかないことだと思います。
――なぜ任天堂のスマホゲームは世界的に人気なのか。
任天堂のゲームは、世界共通のIPだからです。ゲームの世界では、地域ごとにゲームの内容を調整する「ローカライズ」という考えがあります。任天堂にも聞いたことがあるのですが、ローカライズの概念がないというのです。世界共通で受け入れられるものを作っているので、地域ごとに合わせる必要がないと言っていました。なぜそれを任天堂だけができるかといえば、彼らがずっと「ファミリー」にこだわったからでしょう。他社のように過激なことはしませんし、時流に流されないことをやってきましたからできるのだと思います。
――他社とは違う会社と。
はやり、すたりと関係ないところにいますよね。インターフェースも洗練されているし、遊びのなんたるかを考え抜いています。ワールドワイドでゲーム機を売って、サポートをしているわけですから。日本の会社というより、ワールドワイドの会社ですからね。でも実に日本人らしい人たちが作っているわけです。あとは(任天堂のある)京都という場所も関係しているかもしれません。東京にいるとすぐ流行に引っ張られますが、京都は関係のないところにいるのでしょう。普遍的な価値観でゲームを作っているのが任天堂の強みだと思います。
――「スーパーマリオラン」「ファイアーエムブレム」「どうぶつの森」のうち、気になるのは?」
「どうぶつの森」ですね。任天堂はスマホゲームを展開する時から、IPを広げて自身のゲーム機に“送客”する戦略を打ち出していますから、どうやってニンテンドースイッチに展開するか気になります。
――「どうぶつの森」は課金を抑えていて、ビジネス的に弱いという声もありますね。
他のスマホゲームのように月額5000円、6000円の課金にするとIPがダメになるので、意図的にそうしているのだと思います。低課金でたくさんの人に出してもらうことを目指していますね。低課金を目指して多くの人に課金したい戦略は、故・岩田聡社長の時代から言っていましたからね。
――他のスマホゲームでも、同じ低課金を目指そうとしてもうまくいきません。
任天堂のIPは、ワールドワイドで認知されているからです。日本や韓国で収益化を狙ってローカライズをすると、日本では高課金にしないといけないわけです。でも任天堂は、世界の複数の国で一気に展開するので最初の母数が大きいわけで、世界中で少しずつお金をもらえればいいわけです。さらに世界中で遊んでもらえばゲーム機への良い“送客”になるわけです。他のゲーム会社とは立場が違うと思います。
――スマホゲームといえば「ガチャ」です。家庭用ゲーム機のソフトにも導入されていますが、総じて批判的です。「スターウォーズ バトルフロント2」のガチャにファンが反発し、メーカーが謝ったこともありました。
一つのトレンドですよね。僕はガチャのようなアイテム課金は、家庭用ゲーム機にもどんどん入ってくると思います。利益率が違うので、ゲーム会社にすれば高額な開発をかけたゲームを少しでも遊んでほしいわけです。もっと遊びたい人には追加コンテンツ……という流れもそうですね。追加課金の一つの形としてガチャがあります。今は受け入れられていませんが、課金アイテムにお金を使う人も昔は1割程度でしたが、今は3割以上になっていますからね。「ディズニー ツムツム」などもそうですが、少しずつ基本利用料無料のスマホゲームにお金を使う習慣がついてきているわけです。仕方ないところでしょう。
――しかしガチャは、嫌われています。
なぜガチャが嫌われるのかといえば、悪どいことと、慣れてないからでしょう。(消費者庁から違法性を指摘された)「コンプガチャ」の頃は、特殊なアイテムを手に入れるのに60万円が必要になるなどえげつないやり方をしたからファンは怒ったわけです。今は低課金で幅広いユーザーに広がるようになりました。嫌われないガチャができたら、増えてくると思います。
この流れでいうと気の毒ですが、3DS用ゲームの「スナックワールド」のキーアイテム「ジャラ」や、「どうぶつの森amiiboカード」などは、リアル(現実)のガチャに近いビジネススキームですが、誰も怒りません。ゲームファンが納得するかどうかが重要だと思います。
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