放課後カルテ
第7話 お前が学校に来ようが来まいがどうでもいい
11月23日(土)放送分
俳優の舘ひろしさんが主演の「連続ドラマW 60 誤判対策室」(全5話)が6日からWOWOWプライムで毎週日曜午後10時に放送される。冤罪(えんざい)の罪滅ぼしの気持ちを抱いている定年目前の刑事・有馬英治役を演じた舘さんと、有馬の同僚で若手弁護士の世良章一役の古川雄輝さんに話を聞いた。
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ドラマは、石川智健さんの小説(講談社)が原作。過去に担当した事件で無実の人間を冤罪に陥れ、罪滅ぼしの気持ちを抱いている定年目前のよれよれの刑事・有馬(舘さん)は、飲み屋で2人組の客が殺人したことをほのめかしているのを耳にする。冤罪を疑った有馬は、死刑が確定している古内博文(康すおんさん)の存在を突き止めて調査をするが、古内の死刑執行のタイムリミットが迫っていた……というストーリー。
「西部警察」や「あぶない刑事」など多くの作品でスターとして輝いてきた舘さんが、無精ひげをはやし、寝癖もあり、酔っ払って、うだつの上がらないよれよれの刑事役を演じていることに驚く人は多いはずだ。だが、舘さんは「最近割と多いテーマだね。結構面白くて……」と笑う。これまでのスター的な役柄と違うことに抵抗はないのかと聞かれても、「ない。熊切和嘉監督が有馬をやるにあたって、『よれた老刑事をやってくれ』と。老眼もね。二日酔いで会社に来るシーンもあるけれど、あれが割と心地良くてね」とうれしそうに語る。「俳優として何ができるか。監督が欲しいと思うお芝居をできることが俳優の喜び」と揺るがない。
新たな挑戦といえば、2008年にアニメ「ゴルゴ13」で声優に挑んだことも当時、話題になった。そのことに触れると「『あぶない刑事』の脚本の柏原寛司、カンちゃんから『やってみない?』と打診があったんです。新しいことには挑戦するようにしています。その勇気だけは持ち続けなといけない」と力を込める。さらに、「『パパとムスメの7日間』(07年、TBS系ドラマ)でも、(娘と体が入れ替わる)変なパパ役だったんですが、やったお陰で若い女性にも支持されるようになりました」と自信をのぞかせる。68歳だが向上心は尽きない。
一方の古川さんは「台本を見たとき『舘さんと一緒だ。どうしよう』(と緊張)でした。でも現場では気さくな方で、記憶に残っているのが、私はコーヒーが好きなんですが、リハーサル後に舘さんがわざわざコーヒーをくださるんです」と明かす。舘さんの気配りはキャストにだけではない。古川さんは「覚えているのは、カメラワークでNGが7、8回出たことがあったんです。ところが舘さんはニコッと笑って『みんな練習しようか』と言って、(現場に)一体感が生まれました。僕も(将来)こうなろうと思いましたね」と振り返る。
そのエピソードを聞いた舘さんは、照れ笑いしながら「僕は人に迷惑をかけたので。『あぶない刑事』でも村川(透)監督が長い尺をワンカットで回して、私のせりふでつっかえて(笑い)。そうなると『人は失敗する』と思えるようになった……」と話した上で、「でも一つ。撮影をしていると、現場の空気は画(え)に出ます。ギスギスしたり、変な空気があるとね。明るくて力強い現場は、そういう画になるから。僕はなるべく現場は明るい雰囲気にしたいと思っています」と話す。
今回のドラマで古川さんが演じる世良は、自信があるがゆえに生意気なキャラクターだ。「それだけに演じるのも難しかった。でもリハーサルをやれる時間があって、役作りにじっくり時間をかけられた」と振り返る。苦労した点は「弁護士役なので、法律用語を言い慣れてないといけない」と語る。
撮影時のエピソードとして、古川さんは「脱ペーパードライバーを目指したことでしょうか。舘さんを助手席に乗せたのですが、左に曲がるときにウインカーを出すのを忘れて……。舘さんに注意されたときは『ヤバイ』と思いました」と明かす。舘さんは「実は野球が下手で。私が卵かけご飯を投げるシーンがあるのですが、(カメラをカバーするため)毛布で囲ってない別のところに(飛んで)行って、カバーをしてないところに当たってしまった」と苦笑いする。
古川さんが「舘さんの演技から盗んだこと」は、「(舞台となる)誤判対策室の空間は、2部屋あって使い方が難しいんです。ちょっとした動きや、空間を分かってないとできないと思う演技がありました。台本にないものを理解しないといけない部分は、今後も使えると思いました」と話す。舘さんは「古川くんは頭が良すぎて、理由が欲しくなっているのかなと思う。僕はそこまで考えてないんです。感性でお芝居をしていて、居づらいと思うと動く。うまく言えないのですが……」と語る。
舘さんに若い俳優へのアドバイスを尋ねると、「古川君は、努力したか自然かは分かりませんが、気負わない、ナチュラル。いつかは凶悪でサイコのような役をすると楽しいと思うので、いつかは挑戦してほしい」と話した上で、「若いことはそれだけで力だし、エネルギーがある。そこから学べることもいっぱいある。僕は『今の若いやつは……』というせりふだけは、言うのをやめようと思ったんです。若い人をリスペクトして、その方が自身にエネルギーをもらえる気がする。だから若い人を見たりするのは好きですね」と話した。
「西部警察」や「あぶない刑事」の演技で一世を風靡(ふうび)した舘さんだけに「今の若い俳優に物足りさを感じたことはないか?」と聞くと、舘さんは「俳優はそれぞれのスタイルがあり、みな同じ芝居をしてもつまらない。だから俳優は面白いんです。『西部警察』も『あぶない刑事』も、当時あのようにはじけた作品がなかっただけ。でもそれは過去のものだからね。思い出は思い出として楽しいけれど、それより今の俳優さんとお芝居をして『ほう! そうくるか』と思う方が面白いですね」とにやりとしていた。
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