高橋光臣:「西郷どん」海江田は「だんだん重々しい、陰のある人物に」 変化の裏に嫉妬や怒り…

NHK大河ドラマ「西郷どん」に海江田武次役で出演している高橋光臣さん (C)NHK
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NHK大河ドラマ「西郷どん」に海江田武次役で出演している高橋光臣さん (C)NHK

 鈴木亮平さん主演のNHKの大河ドラマ「西郷(せご)どん」に海江田武次役で出演している高橋光臣さん。これまで明るくお調子者として振る舞っていた海江田だが、弟や幼なじみの有馬新七(増田修一朗さん)といった近しい人間の死に直面し、「今までの明るさや快活な部分も消えていって、だんだん重々しい、陰のある人物になっていく」と語る。さらに、その“変化”の裏には、子供のころから一緒だった西郷吉之助(鈴木さん)や大久保一蔵(瑛太さん)に対しての「嫉妬」や「怒り」もあると明かす。高橋さんに話を聞いた。

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 ◇西郷との距離感、大久保への嫉妬

 高橋さんが演じる海江田は、11歳で島津斉興(鹿賀丈史さん)の茶坊主として出仕。大人の世界に早くから入り込み、世渡り上手な一面を持つ「精忠組」のお調子者で、江戸に出るのも吉之助よりも早かった。そんな海江田も、弟の有村次左衛門が桜田門外の変で自害し、さらに精忠組の仲間である有馬新七が寺田屋騒動で壮絶な死を迎えたことで心境にも変化が表れる。これまでの明るさは鳴りを潜め、薩摩藩を動かす立場になっていく吉之助や一蔵との距離も感じるようになるという。

 高橋さんは海江田を演じるにあたり「精忠組の中でもムードメーカーとして、若い幼なじみの中でも明るく、とにかく快活な感じで作っていきたかった」といい、中盤以降は「それぞれに役職に付いてくると、そうもいかなくなってくる。今までの軽妙な感じはなくなって来てくるのかなと思っています」と明かす。

 海江田は今後、めきめきと出世し活躍していく西郷に嫉妬し、西郷と対立する島津久光(青木崇高さん)に近づくこともあるという。高橋さんは「吉之助はただの尊皇攘夷、過激派、保守派ではなく、もっと大きなものを見ているので、そこを理解しようとするのはなかなか難しい」と説明。一蔵についても「能力もない弟(久光)に取り入る大久保のしたたかさ。それを導いていく大久保のうまさ、頭の良さ。そういうところは海江田にはなくて、尊敬しつつも嫉妬というか、怒りはあるのかなと思っています」と考えている。

 また高橋さんは、海江田自身は「出世にこだわりはなかったのかな」と推測。「西郷隆盛、大久保利通など、日本の中心になっていく人たちと一緒にいるので、(海江田も)中枢にいる」というが、「一緒に過ごしてきた大久保たちが上のポストに行くのを見ていて、(海江田は)出世したいというよりも、『同じことをしていたのに、こいつらは自分のやりたいことを実現していく』と嫉妬している」と感じている。

 ◇うなぎ捕りのシーンは「楽しいはずなのにすごく悲しいシーン」

 6月17日の第23回では、吉之助の呼びかけで、海江田ら精忠組の仲間が激動の渦中にあることすら忘れて、川でうなぎ捕りをするシーンが描かれた。幼いころのように和気あいあいとうなぎ捕りを楽しみ、間柄も雪解けになったかと思った直後、吉之助は久光に捕らえられた。さらに薩摩藩士が同士打ちする寺田屋騒動が発生し、精忠組の仲間である有馬が壮絶な最期を迎えた。うなぎ捕りのシーンと、その後の展開が光と影のように描かれたことが話題になった。

 高橋さんは「生き死にの表現がある中で、幼なじみの、若い日の楽しかった時間が表現されていたり。(台本を)読んでいて、すごくチャレンジングだな」と感じたといい、「あそこは単純に楽しいんですけど、切なかった」と複雑な思いも吐露する。
 
 撮影では「とにかくこの一瞬を楽しもうと思った」といい、「時代の激動を背負っているにもかかわらず、あれだけ楽しい時間を過ごせるというのは、昔の思い出があったから。普段の大久保、吉之助ではなく、みんな子供に戻って、うなぎを捕っている。今までの精忠組じゃないし、これからの精忠組をどうしていくのかっていう、新たな出発点。楽しいはずなのに、すごく悲しいシーンでしたね」としんみりと語った。

 ◇生麦事件では「礼節をもってとどめ」 海江田の行動「カッコいいなと思います」

 7月1日の第25回では、その後の薩摩藩の行く末に大きな影響を与える事件が発生する。久光の大名行列を横切った英国人を斬りつける、生麦事件だ。ここで海江田は、英国人の商人チャールス・リチャードソンの殺害に関与。奈良原喜左衛門(宮澤寿さん)がリチャードソンを斬りつけ、絶命寸前のリチャードソンを「助かる見込みがない」と判断した海江田が介錯する。この事件をきっかけに、薩摩藩は英国と争う薩英戦争が勃発する。

 生麦事件について、高橋さんは「薩摩の人間のプライドというか。外国に対しても対等に渡り合える、渡り合うつもりなのに、自分たちの殿様が愚弄(ぐろう)されたというのは、それを見逃すわけにはいかないところだと思う。彼らには(英国人に)臆していないという思いは、あっただろうな」と考える。一方で「日本の礼節を乱した外国人に対して、許さないという気持ちもあるけど、(介錯の)直前に武士としての礼節も持ち合わせている」と海江田の複雑な胸中を代弁する。

 「リチャードソンをただ残忍に刺し殺すというのではなくて、最後に対人として関わって、とどめ刺すというようにしたかった。敵対している外国の人に対しても一対一の人間として、最後に礼節をもって刺すようにしました」と明かし、海江田のとった行動に「僕は海江田の行動はカッコいいなと思います」と理解を示していた。

 「西郷どん」は、明治維新150年となる2018年放送の大河ドラマ57作目。薩摩の貧しい下級武士の家に生まれた西郷隆盛(吉之助)の愚直な姿にカリスマ藩主・島津斉彬が目を留め、斉彬の密命を担い、西郷は江戸へ京都へと奔走する。勝海舟、坂本龍馬ら盟友と出会い、革命家へと覚醒。やがて明治維新を成し遂げていく……という内容。NHK総合で毎週日曜午後8時ほかで放送。

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