注目映画紹介:「愛しのアイリーン」新井英樹の名作マンガを実写映画化 安田顕が体を張って42歳ダメ男を熱演

映画「愛しのアイリーン」の場面写真 (C)2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ
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映画「愛しのアイリーン」の場面写真 (C)2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ

 俳優の安田顕さん主演の映画「愛しのアイリーン」(吉田恵輔監督)が、14日からTOHOシネマズ シャンテ(東京都千代田区)ほかで公開されている。嫁不足の農村に暮らす42歳の独身男性、岩男とフィリピン女性アイリーンの国際結婚と、2人が直面するさまざまな問題を描いたラブ&バイオレンス作品。不器用でうまく女性とコミュニケーションできず極端な思考と行動に走る岩男を作り上げた安田さんの熱演に注目したい。

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 一世一代の恋に玉砕した岩男(安田さん)は、家を飛び出し、勤務先のパチンコ店を欠勤。300万円を払ってフィリピンの嫁探しツアーに参加する。30人もの現地女性とお見合いを繰り返した後、半ばやけになって決めた結婚相手は、貧しい漁村に生まれたアイリーンだった。岩男がアイリーンと共に2週間ぶりに実家へ戻ると、急死した父・源造の葬儀の最中だった。見ず知らずのフィリピン女性を嫁にもらったことに母・ツル(木野花さん)は激高し、猟銃を持ち出す騒ぎになる。こうして波乱に満ちた岩男とアイリーンの新婚生活が始まるが……。

 「ザ・ワールド・イズ・マイン」や「宮本から君へ」などで知られる新井英樹さんのマンガが原作。アイリーン役はフィリピンオーディションで吉田監督が見いだしたナッツ・シトイさん。伊勢谷友介さん、田中要次さん、福士誠治さん、品川徹さんらも出演している。

 これまで数々の作品で熱狂的ファンを生み出してきた新井作品の中で初の実写映画化。リアリティーにあふれた生々しい人間描写が特徴の新井作品が、どうスクリーンに映し出されるのか……。不安と期待の半々で観賞したが、安田さんの体を張った熱演が見事で、時に滑稽(こっけい)な姿に笑い、時にあまりの痛々しさに目を背けたくなり……と、いつしか映像に引き込まれていた。

 原作の岩男は熊のような大男であり、きゃしゃで端正な顔立ちの安田さんとは外見上のギャップがあるのでは、と感じていたが、陰鬱(いんうつ)でぼそぼそとしゃべり、卑猥(ひわい)なせりふを人目はばからず絶叫するその姿は、生身の岩男だった。アイリーンとツルも汚い言葉でののしり合うなど、主要キャラクターたちは、人の見たくない部分をこれでもかと見せつける。だが、その生々しさがいっそすがすがしくもあり、後半の怒涛(どとう)の展開の末に待つラストシーンを際立たせていた。(河鰭悠太郎/フリーライター)

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