俳優の野村周平さん主演の映画「純平、考え直せ」(森岡利行監督)が22日公開された。柳ゆり菜さんは、野村さん演じる新宿・歌舞伎町のチンピラ・坂本純平と偶然出会い、運命的な恋をするヒロイン・加奈を熱演した。どこにでもいる女性会社員という役柄への思い、撮影での思い出、初共演の野村さんについてなどを聞いた。
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直木賞作家、奥田英朗さんの同名小説が原作。純平は、いつか一人前の男になることを夢見ながら、暴力団の雑用に追われる日々を過ごしていた。ある日、対立する組の幹部の命を取ってこいと言われ、気負い立つ純平。退屈を持て余していた会社員の加奈と一夜を共にし、つい“鉄砲玉”になると漏らしてしまう。純平の情熱にあきれながらも、不思議な胸の高鳴りを覚えた加奈は、純平に「鉄砲玉なんかやめて、一緒に逃げようか」と話す。純平が聞く耳を持たなかったため、加奈は決行までの3日間、純平と過ごしながら、SNSに相談する……というストーリー。
――原作を読まれた時の印象はいかがでしたか。
初めて小説を読んでゾクゾクしました。いろんな人が絡み合って、結果を書いていないので、正直どうなるか分からない。『これはどうしてくれるんだ』と思いながら、頭の中でもんもんと考えました。1日で3、4回読み返したんじゃないかな。すごく興味を引かれました。知らない(任侠の)世界が現代のSNSと絡み合って、未来に希望を持てない人たちがどんどん関わり合って、いいバランスが取れた作品だと思いました。
――劇中では髪の毛をバッサリ切っていますが、抵抗はありませんでしたか。
全くなかったですね。元々丸坊主と言われていたんですよ。「丸坊主、やりましょう!」という感じで(オファーを受けた)。それが、いろいろ台本が変わって、私からすると、「ベリーショートでいいんだ」というくらいの気持ちでした。
正直、「髪なんてどうでもいいや」と思っていたんです。ただ、撮影の時に(髪を)切られて、なぜか知らずに、自然と、何も感じていないつもりが、涙が止まらなかった時はありましたね。
――ここまで短くしたことは?
初めてですね。赤ちゃん以来(笑い)。ベリーショートは可愛いな、とは思っていたんですが、100パーセント似合わないと思っていたので、やってみようと思うことはなかったですね。
――撮影にはどのように臨みましたか。
役のことをずっと考えれば考えるほど分からなくなって。正直、加奈という女の子が嫌いになった時がありました。「どうしよう。私この役のこと考えたくない」と焦った時期があって、だめだなと思いました。でもよく考えると、加奈自身も自分をきっと認められなかったし、つまんないやつだと思っていただろうし、そう考えると気持ちが楽になった。一回すごく考えたことを全部忘れて現場に挑んで、その場で思ったことを感じながらやれたと思います。
――加奈を嫌いになった理由は?
本当に普通の女の子だったんですよ。加奈は、普通の日常を暮らしていく中で、自分に退屈で、夢がないことがコンプレックス。正直、普通すぎて(役柄に)興味がそそられなくて、加奈に対して「もっと魅力的な女の子だったら良かったのに……」と思った。普通の女の子を演じたいけれど魅力的な女の子としても演じたいという、矛盾、葛藤があった。
でも、あくまでも、歌舞伎町を歩いていそうな女の子をやりたかったので、あんまり作り込まず、歌舞伎町で1時間くらい座って、退屈そうに歩いている女の子とかを見た。「何を考えているんだろう、何を悩んでいるんだろう」と、ちっちゃい悩みを作っていきましたね。
――加奈の気持ちに共感できたでしょうか。
共感できました! たった3日間で、会ってすぐ(純平に)引かれて、すぐ人生を変えるような恋をするという気持ちが分かるか不安でしたが、加奈を演じていく中で、純平を好きにならざるを得ない関係性というか、本当に運命の出会いだったんだと、私も感じて、ラストに向けて気持ちができていった気がします。
――野村さんとの共演はいかがでしたか。
野村さんは、純平そのものじゃないですけれど、少年の無邪気さと、大人の男の貫き通す姿、男らしいところとかは、そのまま純平の魅力を持った方だなと思いました。たぶん20代の若手の俳優さんで、こんなに純平を魅力的に演じられるのは野村さんしかいなかったなと思っています。現場ですごくすてきな純平でいてくれて、加奈を作りやすかった。
――撮影していないときの野村さんは?
悪ガキですよ(笑い)。でも「結構誰にでもグイグイいっちゃう方なんだろうな」というイメージがあったんですけれど、意外とそうではなかった。何を考えているのか最後までつかみ切れない感じがしましたね。
――撮影エピソードを教えてください。
野村さんとバイクに2人乗りするシーンで、私は初めてバイクに乗ったんですよ。結構緊張していました。でも、野村さんは運転がうまくて、「安全運転で行ってくれるかな」と思っていたら、結構グネグネ(蛇行運転を)やられて、すっごい怖かったのを覚えています。豪快な男性だと思いました(笑い)。
――最後に作品の見どころをお願いします。
たった3日間の運命の恋を描くラブストーリーなんですけれど、20代前半の鬱屈した生活をしている、「誰かと関わりたいけれど怖い」とSNSに逃げている、そういう人たちが、純平を軸に絡み合う。最後には他人の人生に、純平に自分を投影して、熱くなれる。最後には(気持ちが)爆発していく勢いのある作品。生きることへの熱さを思い出させてくれる作品だと思います。
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