「モンスターハンター:ワールド」(カプコン)の大ヒットもあって、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の家庭用ゲーム機「PS4」は好調な販売が続く一方で、期待の大きい「PSVR」ではまだヒット作が生まれていないのが実情だ。さらに、携帯ゲーム機「PSVita」の2019年での出荷終了も報じられた。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「ワールドワイド・スタジオ」で、ソフト戦略・開発責任者であるプレジデントを務める吉田修平さんにVRの現状や、PSVitaの終了などについて聞いた。
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――PSVRの状況は。期待は大きいがヒット作はまだない。
PSVRは、ハードの普及という意味では順調に進んでいる。だが“VR元年(16年)”でアナリストやメディアの期待が高かった。その期待のスピードで売れていないのは理解している。一方で制作側の観点から言えば、VRの特性を理解して、気持ち良くプレーさせる経験値は急速な勢いでたまっている。メーカー同士もお互いに吸収し合い、ゲームのクオリティーも上がっている。最初はVRの目新しさだけで遊ばれていたが、慣れるにつれて徐々に本格的なVRゲームが遊びたいという期待も高まっているので、その準備をしている。
――VRの進化は、今一つ外には伝わってないように見えるが。
ユーザーに知られていないという意味では、課題がある。独立系のゲーム会社から良質なゲームが出ているが、タイトルの知名度も低く、なかなか認知されない。VRは映像で見ても今一つで、実際にプレーしてみないと面白さが分からない面がある。
――解消するための手は。
既存のメディアを使って、どう伝えるかだ。一つは、VRを体験している姿を紹介映像に合わせて見せることだ。またユーチューバーやインフルエンサー(影響力のある人)が映像で楽しんでいる姿を見せると、理解度が違う。あとは2年前から変わらないことだが、VRを体験する機会を設けること。さまざまなイベントにVRを持って行き、未体験の人に触ってもらうことだ。
また日本の都市部の話だが、クオリティーの高いVRゲームをアーケードゲームで遊べる環境にある。高額なPCを買わなくても数千円で体験できるのは、日本の利点だと思うし、VRの普及や認知度の広がりでは、日本は進んでいる国だと思っている。
――PSVitaが19年に出荷を終了する。携帯ゲーム機の市場が縮小したのはなぜか。
スマートフォンは、ゲーム好きの有無にかかわらず持っているツールで、常にバッグに入れているのは大きいと思う。とはいえ、スマホが出た当時、スマホゲームはなかなか流行しなかった。流行したのは「アングリーバード」や「パズル&ドラゴンズ」「モンスターストライク」といったスマホのユーザーインターフェース(UI)に適したゲームが生まれたことだ。そしてフリー・トゥー・プレー(基本利用料無料のアイテム課金制)で、初期にお金を払う必要がないのは非常に強いと思う。
携帯ゲーム機の良さは、ゲームに適したユーザーインターフェースで、ボタンやスティックなど、ゲームユーザーが求めるものが備わっていることだ。しかしゲーム機を買わないといけないし、バッテリーの問題もある。さらに(据え置き型ゲーム機と比較して)パフォーマンスの制約がある。そして別途ゲームソフトを買わないといけない。スマホゲームの手軽さと比べるとハンディキャップがあった。
――携帯ゲーム機の弱みが出たと。
ただ先がどうなるかは分からない。スマートフォンでも「フォートナイト」などコア向けのゲームも遊べるようになっていて、それで(ユーザーは)満たされているかもしれないが、実はそうでないのかもしれない。ゲーム業界はいろいろな変化が常にあるので、ユーザーのニーズにマッチできるような形で答えられるかだ。ユーザーが求めているものはそんなに変わらない。どういう体験がどういうデバイスで提供できるか。供給側の問題だと思っている。
――PS4の売り上げもピークに達して「次世代機が出るのでは?」という声もある。制作側から見てPS4の限界は見えたか。
PS4は、非常にパフォーマンスが高く『ゲーム機の制約でこれができなくて困った』というよりは、ソフトをある段階で(商品として)まとめないと作り続けてしまうという“制約”の方が大きい。発売されて5年になるが、今になって初めて新作ゲームを出す開発チームがあったりするし、できることの規模に合わせて作り続けると、開発に4、5年かかることになる。開発側から見たゲーム機の世代交代は『(現行機で技術的に)できることがなくなる』というのがあるが、PS4はそれがなかなか見えない。作り手からすると“失速している”感覚はない。PS4Proの人気も高くて、不足していたりする地域もある。
――ずばりPS4、VR以外の(次世代機の)ソフトは作っていないのか。
全くない。お話しできることも全くない。
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