「プレイステーション」シリーズを展開してきたソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の子会社で、スマートフォンなどのスマートデバイス向けにゲームを配信しているのがフォワードワークスだ。2016年4月に設立され、ここ2年半で「みんなのGOLF」や「アークザラッド」「ワイルドアームズ」など、プレイステーションシリーズのヒットを支えた名作の流れをくむスマホゲームを次々と配信している。事業戦略責任者で、エグゼクティブディレクターの川口智基さんに話を聞いた。
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2019年に携帯ゲーム機「PSVita」の出荷が終了することと、同機の次世代機の開発計画がないことが明らかになった。「PSVitaの低迷の代わりに、フォワードワークスが設立されたのか」と尋ねると、川口さんは笑いながら「いいえ。フォワードワークスに限らず、ソニーグループでは『PSモバイル』のようにプレイステーションブランドとスマホをつなげていく取り組みはしていました。いかにプレイステーションブランドのエンターテインメントを広げていくか、アプローチの一つなのです」と説明する。
かつてSIEでアジア戦略を担当し、自社の製品以外でゲームを遊ぶ人々を日本以上に見たという川口さんは「プレイステーションブランドのエンターテインメントをスマホでも提供できればと思いました。IP(コンテンツ)を遊んでくれる人も増えるし、相乗効果が生み出せると考えて、スマホアプリでやってみようとなりました。やるからには、別会社でやったほうが良いので、フォワードワークスが設立されたわけです」と話す。
不思議なことが一つある。なぜ「ソニー」という世界的なブランドを社名からわざわざ外したのか。川口さんは「ソニーはグループ会社があって、事業領域の名前を冠しています。それに従えば『ソニー・モバイルゲームアプリ』といった感じになると思います。しかし、我々はプレイステーションブランドのゲームを出していますが、一方で新規のコンテンツも展開しています。『ソラとウミのアイダ』はスマホゲームだけでなく、マンガや小説でも展開し、今度はアニメも放送します。そうなると社名が現状にマッチしないのです。もちろんソニーグループで、SIEの子会社というのは積極的には触れています」と話す。フォワードワークスの由来は、サッカーのフォワードから来ていて、「最前線で点を取りに行く」という意味が込められている。
オリジナル作もあるが、フォワードワークスの柱は、プレイステーションブランドのスマホゲーム化だ。川口さんは「プレイステーションで生まれ育ったIPは、貴重な財産なのできちんと育てたい。ですが『アークザラッド』や『ワイルドアームズ』は、時間がたってしまったので、かつて遊んでくれた人たちの生活環境が変わっている。当時のファンに遊んでもらうには、気軽に遊べる形だと思ったので、フォワードワークスを作るときに『やろう』となったのです」と説明する。
川口さんは「これまで5タイトルをリリースしました。約15カ月なので3カ月にゲームを1本出している形になりますが、そう考えると速いペースでリリースできているのが分かってもらえると思います。ゲームもバリエーションが豊かです」と胸を張る。
スマホゲームとPS4の連動は考えていないのか。川口さんは「現段階では、意思を持って連動していません。連動させると、既に(PS4などの)コンシューマー機を持っているユーザーが有利になってしまい、それが“障壁”になる可能性があります」と説明する。一方で「コンシューマー機とスマホがボーダレスで遊ぶゲームもあります。今後はさまざまな可能性があってSIEとは議論もしています」と含みを持たせている。
フォワードワークスがスマホゲームの参入を発表した2016年は、既に「スマホゲームは飽和状態」と言われていた時期だが、迷いはなかったのか。川口さんは「言われました。ですが新しいゲームの体験があれば、拡大の余地はあると思っていました。当時は『楽観的』と思われましたが、『みんゴル』のアプリが500万ダウンロードし、初めて『みんなのGOLF』シリーズを遊んだという方もたくさんいた。狙い通りですし、まだ拡大の余地はあると思っています」と言い切る。
だが今のスマホゲームは「モンスターストライク」や「Fate/Grand Order」など数年以上サービスを継続しているタイトルが依然として強く、一方でスマホの高性能化に伴い「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ=PUBG)」などこれまでなかったFPS(一人称視点のシューティングゲーム)が流行になりつつある。
川口さんは「もちろん(流行は)意識はしています。ですが、それぞれのパブリッシャーのタイトル、強みがあるわけです。我々は(プレイステーションブランドという)我々の強みを生かしたい。『流行に乗っかろう』という考えはありません」と力を込めた。
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