ビッグに聞く:第17回 秋本治 「ジャンプ」エースから見た「ビッグコミック」 「こち亀」の今後は?

連載企画「ビッグに聞く」に登場した秋本治さん
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連載企画「ビッグに聞く」に登場した秋本治さん

 今年、創刊50周年を迎えたマンガ誌「ビッグコミック」(小学館)の関係者に、名作の生まれた裏側や同誌について聞く連載企画「ビッグに聞く」。第17回は、「こちら葛飾区亀有公園前派出署(こち亀)」で知られる秋本治さんが登場。「こち亀」はマンガ誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)で長期連載された作品だが、「ジャンプ」と「ビッグコミック」は共に1968年に創刊した“同級生”でもある。「ジャンプ」のエースから見た「ビッグコミック」、気になる「こち亀」の今後の展開などについて聞いた。

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 ◇「ビッグコミック」は最高級乗用車 「ジャンプ」は…

 「ビッグコミック」の創刊当時、秋本さんは高校1年生で、創刊時から同誌を読んでいたという。「僕は自動車好きなので、マンガ誌の出版状況を自動車に例えたいんですよ。子供向けのマンガ誌=軽自動車がいっぱいあるところに、大人向け雑誌としてクラウン(トヨタの高級車)があった。『ビッグコミック』はそれらのさらに上を行く最高級乗用車の(トヨタの)センチュリー。当時、車が100万円しない時代の300万円の高級車です。総革張りのシートで、家にクーラーがない時代にクーラーが付いている車。燃費なんて考えない、大人のスーパーカーです」と話す。

 76年には「ジャンプ」で「こち亀」の連載が始まった。「ビッグコミック」と「ジャンプ」の違いを『ビッグ』がセンチュリーなら、『ジャンプ』はホンダの軽のスポーツ車ですよね。N3(N360)です。軽くて、めちゃくちゃ速い。荷物を載せるんじゃなくて、『若者にスポーツカーの走りを教えたい』とホンダが作ったヤツです」と説明する。

 ◇ゴルゴ似キャラの誕生秘話

 「こち亀」には、星逃田、後流悟十三、ボルボ西郷、左近寺竜之介といった「ビッグコミック」の看板作品「ゴルゴ13」のゴルゴに似たキャラクターが登場する。「もともとはハードボイルドなスナイパーものを描きたかったんです。だから『ゴルゴ13』の大ファンで、つい似せたものを描いちゃった。ジャンプ編集部からは『これはヤバイよ』と言われたけど、『ジャンプなんだからありだろ?』と思っていた。読者の反響がいいんですよ。『楽しかったです』『また描いてください』『似ていますね』とか。だったらもうちょっと踏み込めるかな?と。編集者はビクビクしていた」と笑顔で話す。

 さらに「(『ゴルゴ13』の作者の)さいとう(・たかを)先生にいつかお話しせねばと緊張しておりまして、とあるパーティーでごあいさつしたら『あっそー』って。お読みになっていなかった。安心して、また描くようになった」と明かす。

 「こち亀」と「ゴルゴ13」は同じ長寿マンガとして比較されることもあるが、「たまたま(連載が)長くなっちゃって。比べられるのは本当に嫌です。もうおそれ多いんでね。長いってことでいえば『サザエさん』と比べるのならいいんですよ。だってジャンルが同じだから(笑い)」と感じているという。

 ◇仕事が好き 休みたい気持ちはあまりない

 「こち亀」は2016年、約40年にわたって一度も休載せずに連載に幕を下ろした。また、連載終了後、秋本さんが集英社のマンガ誌で4作の新連載をスタートすることを発表するなど、秋本さんは休まずマンガを描き続けている。「(休みたいという気持ちが)あまりないんです。仕事自体が好きなので。『こち亀』が終わったので、これで(他の作品が)描けるぞ!って、実験のつもりなので、試してみたくなるんです」と創作意欲が尽きることはないようだ。

 「こち亀」は連載を終了したものの、17年9月と18年1月に読み切りが発表されている。今後の展開について聞くと、「依頼があれば、両さん(主人公・両津勘吉)が帰ってくるのかな?」と話す。東京五輪が開催される20年、東京で両さんが大暴れする姿を見てみたい!というファンも多いだろう。秋本さんは「僕はまだ分かりません」と明言はしないが、今後の展開に期待が高まる。

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