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うつヌケ:ココリコ田中直樹&原作者・田中圭一が明かすドラマ制作秘話 うつとの関わりも語る

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「Hulu」オリジナル連続ドラマ「うつヌケ」原作者の田中圭一さん(左)と主演を務めるお笑いコンビ「ココリコ」の田中直樹さん

 お笑いコンビ「ココリコ」の田中直樹さん主演の「Hulu」オリジナル連続ドラマ「うつヌケ」が、29日午前0時から配信される。累計発行部数33万部を突破した田中圭一さんの人気マンガが原作。直樹さんは、劇中に登場するうつ病体験者の話を聞く田中圭一役を演じる。奇しくも同じ田中姓の2人に、ドラマへの思いや原作の創作秘話などを聞いた。

 ◇ココリコ田中の「田中圭一役」はイメージ通り? 

 原作は、圭一さん自身のうつ脱出体験をベースに、著名人など18人の“うつ体験”をリポートしたマンガ「うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち」(KADOKAWA)。33万部を超える大ヒット作だ。ドラマは、直樹さん演じる田中圭一と、うつとは無縁のアシスタント・カネコ(大後寿々花さん)の2人が、“うつヌケが原”という気持ちのいい草原で、うつ病体験者たちのエピソードを紹介していく……という内容。全6話。

 原作者の圭一さんは「今、大学(京都精華大学)でマンガを教えているんですが、そこで一緒に席を並べている、おおひなたごうさんの『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』というマンガがすごくヒットして、アニメ化やドラマ化されたんです。それで『ああ、うらやましい』と思っていたら、『うつヌケ』が売れて、ドラマ化となった。肩身の狭い思いが緩和されたかな、というところがあります(笑い)」と、ドラマ化の喜びを冗談めかして語る。

 主演の直樹さんは、うつについて「今までしっかり分かっていなかったですね。どこか自分とは遠いというか、身近ではないと思っていました」と明かす。だが原作を読み、ドラマの撮影に入る中で、気持ちが変化したという。「自分の中にも、誰の中にも、そのタネはあり、ものすごく身近なものなんだぞ、と思いました。撮影に入る前と考え方が大きく変わりましたね。今までの47年の人生の中で、落ち込むこともたくさんあったんですが、それも“うつトンネル”の入り口にいたとも思えますし、ずいぶん印象が変わりました」と語る。

 原作を読み「楽になれた」と直樹さん。「『自分を好きになる』という言葉が出てきますけど、極端な話、それが全てと思えるぐらい、とても大切なことだなと改めて思いました。日々の生活の中では、自分をケアできていなかったり、かまっていられなかったりすることも多いですけど、『自分を好きでいないといけないな』と思いました」と感想を語る。

 自身にうつ経験はないが、ドラマには、さまざまな理由でうつになった人物が毎話、登場する。演じるのは、長いうつとの闘いを経験した『マンガの中の田中圭一さん』という難しい役どころ。直樹さんは「うつ病と診断されたことはない生活だったので、10年間うつと闘ってこられた(圭一さんの)お気持ちを理解できているかといわれると、そうではないと思います」と認めつつ、「うつになるきっかけはさまざま。ドラマでもいろんな状況を抱えている人がやってくる。理解できる部分は寄り添って、分からない部分は、うつとは無縁のカネコと一緒に考えて。相手に合わせてうまく立ち位置を変えていけたらいいなということは、気を付けました」と役について語る。

 そんな直樹さんの演技を、圭一さんは「イメージしていたまま」と絶賛する。「僕の風貌というより、キャラクターとしての田中圭一くんの風貌と直樹さんの風貌が近いので、キャスティングとしてはぴったりだなと思いました。実際に演じている映像を見ても、『そうそう、マンガで描いているキャラが動き出すってこういう感じだよね』と思いましたね。すごく(キャラの特徴を)捉えていただいていると思います」と太鼓判を押す。

 ◇原作者が明かすマンガ「うつヌケ」誕生秘話 
 
 原作で、圭一さんは自らのうつ体験も赤裸々に描いている。「ギャグマンガ家を長くやっていたし、中学・高校時代も『クラスの面白いやつ』みたいなポジション。だから自分にとって、『うつ』というのは無縁のものだと思っていたんです」と圭一さん。だが、謎の体調不良が続くようになり、「いろんな可能性を考えたんです。更年期障害とか、栄養が偏っているのかなとか、発汗が弱いからサウナに通おうかとか……。でも全部やっても無理で、インターネットで調べてみると、うつ病というのを認めない限り、ほかに当てはまる症状が無かったんですよね。そこで初めて『まさか自分がうつに』と思いました」とうつを自覚するまでを語る。

 それから約10年間、うつの苦しみと闘った。「いつ終わるのか分からないまま過ごしました。それで、ちょっとしたきっかけで抜け出した後に、こんなにしんどい思いをするんだったら、抜け出した者として、今、苦しんでいる人たちを助けてあげる義務があるんじゃないかと思ったんです。自分が抜け出たきっかけが、たまたまコンビニで出会った、うつ病に関する1冊の本だったので、自分も『苦しんでいる人たちがたまたま見つける1冊の本を出す義務がある』と思って描き始めました」とマンガ化の背景を明かす。

 一方、うつ病の経験は無いが、「落ち込むことはたくさんあった」と語る直樹さん。苦しい時期はどのように苦しみに対処しているのか。「今はもう、現実を受け止めるというか、ダメな自分を受け入れるということでもあります。いちいち落ち込んでいられない。うまくいかないことって、めちゃくちゃやってくるじゃないですか、悪いことも含めて、人生で。その中で生きているから、『そういうもんなんだな』と楽に思うようにしています」と語る。

 そんな直樹さんも、若い頃は「売れるのかな、この先どうなるのかな、と悩んでつぶれそうになったりした時期もあった」という。「そういう時に周りの人が助けてくれて、今、考えるとすごくありがたい」と周囲へ感謝し、「今は、できるかどうか分かりませんが、自分のことを好きになって、だめな自分も含めて全て受け入れれば、少しは楽に生きられるのかな、と思うようになりました」と穏やかな表情を浮かべる。

 ◇原作は「長く続けたからこそ出てきたもの」 マンガ家としてのプロ意識も…

 原作は33万部を超える大ヒットになった。圭一さんは「前から、マンガ家というのは30万部の本を出すと、作品じゃなくて作者にファンがついてくれると知っていて。だから30万部超えが目標だったんですが、自分の実力では10万部がいいとこだな、と分かっていたんです。30年以上マンガ家をやってきてずっと目標でしたが、達成できなかった」と明かす。今回30万部超えのヒット作を生み出したことは、一緒に仕事をした連載の編集者、単行本の編集者ら「いいスタッフといい仕事をした結果」と謙虚に語る。

 圭一さんといえば、マンガ家とサラリーマンなど「二足の草鞋(わらじ)」を続ける異色マンガ家としても有名だ。学生時代にデビューし、マンガ家を続けながら就職。時には「マンガの仕事が途切れたこともあった」が、就職している強みで経済的に困るようなことは無かったという。

 サラリーマン経験はマンガにもいい影響を与えた。「営業職をしていたので、取材マンガに抵抗が無かったんです。マンガ家さんって、人と会うことやしゃべることが苦手な方も多いんですが、僕は仕事でやっていましたから。人生、無駄なことは無いなと思いました」としみじみ語る。

 原作の「うつヌケ」は、そういった経験が実を結んだ結果でもある。「普通のマンガ家には危険過ぎること、トリッキーなこともたくさんやってきました。あくまでマンガ界ではセンターではなく、脇道を歩いてきた者なので、『うつヌケ』のようなセンター寄りの、広く一般の人が読んで役に立つマンガを自分が描くとは、昔は思ってもいませんでしたね。こういうこともあるんだな、と。もちろん、うつになったから『うつヌケ』を描こうと思ったんですが、これは長く続けたからこそ出てきたもの。デビューしてから数年では描けなかったものなので、脇道ばかりだったとしても、長く続けることは大事だなと思いました」と圭一さんは笑顔を見せる。

 圭一さんは、手塚治虫調のタッチで知られているが、作品によってはさまざまなタッチを使い分けるなど、読者を楽しませるために工夫を凝らす。その情熱はどこからくるのか。「デビューがギャグマンガなので、読者が笑うかどうかが全てなんです」という。「お金をもらってマンガを売る、ということは、読者からすれば、お金を払った分に見合う何かをもらわなきゃいけない。ギャグマンガの場合は、絶対に予想を裏切るような笑いやオチを考えるし、取材マンガでは、インタビューしたことをだらだら描くのではなく、その中にあるドラマを紡ぎ出す。『お金を出して買って読んでよかった』という読み応えを提供しなければいけないと思っています」と創作の核にある思いを語る。

 ◇原作者とココリコ田中が語るドラマの魅力

 最後に、2人にドラマへの思いを改めて聞いてみた。圭一さんは「原作のうつヌケを読んだ方でも、今回の6話は新たに取材をしたエピソードなので楽しめると思います」と自信を見せ、「改めて、うつって、いろんな入り口と出口があるんだなと感じましたし、そこを楽しんでいただけたらと思います」と見どころを語る。

 「誰の中にでもうつのタネってあると思う。それを気付かせてくれるドラマだと思います」と直樹さん。「そこに気付いているだけで、人生が大きく変わるのではという気がするんです。このドラマを見て自分自身のことを好きになってほしいし、そう思えるドラマだと思います」と明るい表情でドラマの魅力を語った。

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