海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
先週、大盛況のうちに最終回を迎えた連続ドラマ「今日から俺は!!」(日本テレビ系)。賀来賢人さん演じる三橋貴志と、伊藤健太郎さん扮(ふん)する伊藤真司のツッパリコンビをはじめ、登場人物たちのなんともいえない“愛らしさ”が視聴者の心をがっちりつかんだ。その中でも、太賀さんと矢本悠馬さんが演じた紅羽高校の“今井&谷川コンビ”が醸し出す関係性に“ほのぼの”とした人たちは多かったのではないだろうか。
あなたにオススメ
来春朝ドラ「あんぱん」の“二人の妹” 朝ドラヒロインまで手が届くか
太賀さんが演じた今井は、バカ力でけんかはめっぽう強いが、単純ですぐにだまされてしまう紅羽高校の番長。男気があって、三橋に散々ひきょうな手でやられても、ピンチのときには体を張って仲間を守ろうとする熱い男だ。一方、矢本さん扮する谷川は、そんな今井を心から慕い、尊敬する忠誠心の強い子分。同級生ながら常に敬語を使うなど、ただよう“小物感”が見ている人の心をくすぐる。
ドラマ内には三橋&伊藤のほか、開久高校の片桐智司(鈴木伸之さん)&相良猛(磯村勇斗さん)、成蘭女子高校の京子(橋本環奈さん)&明美(若月佑美さん)らコンビで登場するシーンが多いが、今井と谷川は、不器用な夫と、それをかいがいしく見守る妻という“夫婦”のような雰囲気を醸し出していた。
この雰囲気は、実際の太賀さんと矢本さんの関係性に起因している部分が多いのではないだろうか。太賀さんは1993年生まれの25歳、矢本さんは90年生まれの28歳と、年の差はあるが「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系、2016年)、「仰げば尊し」(TBS系、同)、そして映画「ポンチョに夜明けの風はらませて」(廣原暁監督、17年公開)など共演経験は多い。
「ポンチョに夜明けの風はらませて」で2人のインタビューを行った際、矢本さんは「単純に芝居がうまい。太賀が主演の映画で脇を支えられるのはうれしい」と太賀さんを俳優として尊敬していることを明かすと、太賀さんも矢本さんを「とても華がある」と評していた。さらに初めてプライベートで出会ったときには、互いによそよそしかったものの、ある女優さんの写真集を見ていた際に、好みが合ったことにより意気投合。そこからは、プライベートでも、よく飲みに行き、悩み事を相談するほどの仲だと明かしていた。
「今日から俺は!!」のオフィシャルブログでも、太賀さんは矢本さんと共演できたことで、伸び伸びと芝居ができたことや、いとおしさが“爆裂”していたことなど、愛情たっぷりのコメントを発表するなど蜜月関係がうかがえる。
青春ものなどの群像劇では「現場の雰囲気が映像ににじみ出るものだ」と発言をする映画監督や役者は多い。「ポンチョに夜明けの風はらませて」は太賀さん、矢本さん、中村蒼さんの3人が車に乗って旅する作品だが、車内で醸し出される雰囲気に、2人は「確実に仲の良さが映像に出ていた」と証言していた。
「今日から俺は!!」でも、今井と谷川は強い絆で結ばれているが、太賀さんと矢本さんの“仲の良さ”が、2人の関係性に説得力を持たせているのだろう。番長と子分という関係性なのだが、どちらにとっても、なくてはならない大切な存在という雰囲気が画面から伝わってくる。
もちろん2人の関係性だけではなく、太賀さん、矢本さんともに「若手実力派俳優」と評される高い演技力を備えていることは大前提としてある。近年、出演作が途切れることがない2人だが、作品ごとに違う顔を見せる振り幅も魅力だ。
現在公開中の太賀さんの主演映画「母さんがどんなに僕を嫌いでも」(御法川修監督)では、母親からの虐待により深いトラウマを持ちつつも、懸命に母と向き合う青年の心を、繊細な演技で表現。今井とはまるで別人のような表情を見せている。矢本さんもドラマ「賭ケグルイ」(MBS・TBSほか、18年)では、浜辺美波さん演じる蛇喰夢子に執拗(しつよう)に絡んでいく不良少年・木渡潤を熱演。その憎たらしい演技は、大きな反響を呼んだが、同じ不良少年でも、谷川とはまったく違う顔だった。
放送終了後、早くも続編への期待の声が大きくなっている「今日から俺は!!」。太賀さん、矢本さんは共に、19年も待機作が控えており、さらなる活躍が期待されるが、今井&谷川のコンビが、またお茶の間もしくはスクリーンに戻ってくることを切に願いたい。(磯部正和/フリーライター)