おっさんブーム:「可愛い」が文化に? 「おっさんずラブ」Pが語る背景

俳優の遠藤憲一さんが出演するドラマ「私のおじさん~WATAOJI~」の第2話の1シーン(C)テレビ朝日
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俳優の遠藤憲一さんが出演するドラマ「私のおじさん~WATAOJI~」の第2話の1シーン(C)テレビ朝日

 かつて“おっさん”といえば、「大声で怒る」「威厳がある」「怖い」という“カミナリおやじ”のようなイメージの時代もあったが、近年では「可愛い」「愛らしい」「癒やされる」といった声が聞かれるようになってきた。テレビドラマでも“おじさん俳優”にスポットライトを当てた作品が増加傾向で、1月期も遠藤憲一さんが“妖精”のおじさん役を演じる「私のおじさん~WATAOJI~」(テレビ朝日系)や光石研さん初主演の連ドラ「デザイナー 渋井直人の休日」(テレビ東京)など続々と放送される。昨年ヒットした「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)に続いて「私の~」を手がけるプロデューサーの貴島彩理さん(28)に、“おっさんブーム”の背景を聞いた。

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 ◇「おじさん=癒やされる」という文化?

 近年のテレビドラマでは、12年に、松重豊さんがひたすら食べる人気シリーズ「孤独のグルメ」(テレビ東京)のSeason1がスタート。14年には、北大路欣也さん、泉谷しげるさん、志賀廣太郎さんが活躍する人気ドラマシリーズ「三匹のおっさん」(同局)のパート1がスタートしたほか、どことなく映画「男はつらいよ」の寅さんのような雰囲気を持つ、吉田鋼太郎さん主演のスペシャルドラマ「東京センチメンタル」(同局)が放送。

 16年には、「東京センチメンタル」が連ドラ化され、吉田さんが連ドラ初主演を飾った。また、宮藤官九郎さんの脚本を、俳優の岡田将生さん主演で描いた「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系)が放送され、吉田さん演じる“レンタルおじさん”が登場したほか、単発ドラマ「おっさんずラブ」が放送。

 17年には、遠藤さん、大杉漣さん、田口トモロヲさん、寺島進さん、松重さん、光石研さんが出演した「バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」(テレビ東京)が放送。そして、18年に「バイプレイヤーズ」続編と、連続ドラマ「おっさんずラブ」が放送された。

 「孤独のグルメ」の松重さんがおいしそうに食べている姿や、「バイプレイヤーズ」の出演者たちが見せるおちゃめな姿、「おっさんずラブ」の吉田さん演じる乙女心を隠し持つ黒澤部長などには、SNSでは「可愛い」「愛らしい」などの声も飛んでいた。

 近年の“おっさんブーム”がどこから誕生したかを貴島さんに聞いてみると、「『おっさんずラブ』を放送する前から、『バイプレイヤーズ』のようなドラマや、レンタルおじさんという文化が流行していたように思う。女子高生が使う『可愛い~』という言葉の守備範囲が、昔より広まってきたのかもしれません」と説明。「人々が癒やしを必要としているのかな? というのも最近少し思っていて。その中で『おじさんって癒される』という文化が、日本の中で徐々に形作られたのかもしれない」と分析する。

 ◇現役女子高生・岡田結実が語る“おっさん”の印象は

 今回、貴島さんが手がける「私のおじさん~WATAOJI~」に主演する現役女子高生の岡田結実さん(18)に、“おっさん”の印象を聞くと、「おやじギャグを言うイメージもあれば、すごく余裕のあるおじさまもいたりして、最近はおじさん方に癒やされるというのが印象的です」と話す。友人の間でも話題に上ることがあるといい、「それこそ、遠藤憲一さんを見てみんな可愛いって言いますし、余裕があっていいよねとか話したりしますね」と明かす。

 また、好きな“おじさん俳優”を聞くと、「『おっさんずラブ』に出ていた吉田さん。私だけでなくて、みんな好き。吉田さんのことを『かっこいい』『可愛い』と言うので、逆にすごい定番というか。その定番がすごくぐっとくる!」と熱弁。「市村正親さんとか、すごく余裕があって、全部吸収してくださるような感覚があって、それこそ“おじさま”だとすごい思います」と続ける。

 さらに、NHK・Eテレの「大!天才てれびくん」で共演し、「第二のパパ」と表現する出川哲朗さんについては、「めちゃめちゃ可愛い。いじられキャラがすごく愛らしいというか。私たちが大きくなっても、変わらずその場にいてくださるので、安心します」と話す。

 ◇「おっさんずラブ」成功の理由は?

 貴島さんは、三浦春馬さん主演の「オトナ高校」(テレビ朝日系)で連ドラを初プロデュースし、2作目は「おっさんずラブ」。今作は、連ドラプロデュース3作品目となる。「私のおじさん~WATAOJI~」のタイトルには、「おじさん」という言葉が2回続くが、「『おっさん好きなんですか?』と言われるんですけど、ほんとたまたまで(笑い)」と明かす。

 そんな貴島さんに、映画化も決定するなど大ヒットした「おっさんずラブ」がなぜこれほどまでに人気を集めたかを聞いてみると、「いまだによくわからない(笑い)」と率直な思いを告白。一方で、「おじさんが可愛いという文化があって、たまたま『おっさんずラブ』はそれに乗っからせていただいたのかなと思っていて。たまたま時代というか、SNSとの親和性も高かったりとか、キャストの皆様のお芝居がすごく真っすぐだったとか、 いろいろな奇跡のおかげだと思います。だからって、さまざまな思いや努力が必ずしも視聴者に届くわけではないのですが、あのときはたまたま奇跡的に届いて応援していただけたのだと思う」と分析する。

 しかし、「おっさんずラブ」の成功をいかすことはできるのか、という質問に「いかせないと思う」という貴島さんは、「私にとっては、どれも同じ作品の一つで、愛する作品の一つ。真摯(しんし)に今の作品を今隣にいるキャスト・スタッフと一生懸命作って、多くの人に楽しんでもらえますように!と全力で走るしか、自分にはできないなと思っています」と力を込めていた。

 「私のおじさん~WATAOJI~」は、毎週金曜午後11時15分(※一部地域を除く)放送。

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